第8話 果たして...
あれから毎日、LINEとメッセージツールでのやり取りは続いていました。
しかし、麻里の期待とは裏腹に、決定的な進展はありません。広大のLINEの返信は相変わらずゆっくりで、既読がついてから数時間放置されることもしばしば。
麻里
やっぱり……付き合えないのかな。多田さん、私のことどう思ってるんだろう…
不安が募る麻里を繋ぎ止めているのは、仕事中の広大からの何気ない誘いでした。
広大
飯嶋さん、ちょっと詰まっちゃって……ラウンジで一緒に仕事してくれないですか?
そう言われるたびに、麻里は「喜んで!」と尻尾を振るようにラウンジへ向かいます。そこで至近距離で教え、笑い合う時間は最高に幸せ。でも、一歩外に出れば、また「同僚」の距離感に戻ってしまう。
季節は足早に過ぎ、街にはイルミネーションが灯り始めました。カレンダーが12月に突入しようとする頃、麻里の心は焦りでいっぱいになります。
麻里
もうすぐ、クリスマス……。……片っ端から片思いなのかな。それとも、多田さんは慎重なだけ?
世間が浮き足立つこの時期、独身の、しかも「好きな人がいる」身としては、当日をどう過ごすかは死活問題です。
麻里
(プラスルちゃん……どうしよう。私から誘ってもいいのかな? でも、こないだ八千代に来てもらったばかりだし、図々しいって思われないかな……)
スマホの画面を見つめては溜息をつく麻里。広大のゆっくりとした返信ペースに合わせようと必死に自制していますが、心の中では「クリスマス、一緒にいたい!」という叫びが爆発寸前でした。
12月に突入しようとするある週末。麻里のスマホに、心臓が跳ね上がるような通知が届きました。
ただこうだい※LINE
今日も暇です。。
ただこうだい
ららぽーとでも行きませんか?
麻里
……っ!! 行きます!! 行くに決まってます!!!
麻里は絶叫しながらベッドを跳ね起き、クローゼットへ突進。しかし、「もっと彼に可愛いと思われたい!」という衝動に突き動かされ、そのまま近場のイオンへ直行。広大との冬の街歩きにぴったりな勝負服をマッハで揃え、いざ南船橋へ向かいました。
巨大な「ららぽーとTOKYO-BAY」の入り口で待っていた広大は、無難ながらも長身が映える、清潔感のある冬の装いでした。
広大
飯嶋さん!いきなり誘ってすみません
麻里
いや! 全然!!(むしろ神のお告げかと思った!)
舞い上がる気持ちを必死に抑えて笑顔を作る麻里。二人の間には、八千代でのデートを経て、少しだけ距離が縮まったような、心地よい緊張感が漂っています。
広大
お昼、まだですか?
麻里
はい! ……あの、もしよければ、洋食屋さんでも食べませんか?
広大
いいですね、行きましょう
クリスマスの装飾が華やかな館内を歩き、二人は落ち着いた雰囲気の洋食店へ。
麻里
(これって、もうデートだよね?)
向かい合ってメニューを選ぶ時間。広大が「何にしようかな……」と悩む姿を眺めながら、麻里はまたもや「鼻の穴が見える距離」の妄想と現実の狭間でギュンギュンしていました。
広大
…あ、このオムライス美味しそう
麻里
私もそれにします!
些細な「お揃い」にさえ運命を感じてしまう12月の午後。
果たして、この広大なショッピングモールでの時間が、二人の関係をクリスマスに向けてどう加速させていくのか――。
洋食屋さんでお腹を満たした後、二人は特に何かを買うわけでもなく、ららぽーとの中をゆっくりと歩き始めました。
広大
俺……別に買いたいもの、特になかったんですけど。……どこに行けばいいか思いつかなくて、ここしか
少し決まり悪そうに頭をかく広大。その「特に用はないけれど、麻里を誘った」という事実に、麻里の心拍数は一気に跳ね上がります。
麻里
あ、私もです! ……じゃあ、あとでデザートでも食べに行きましょうよ
広大
あ、はい。……そういえば、今日あったかいですよね。散歩でもしませんか?
麻里
いいですね!
館内の喧騒を離れ、二人は外の空気を感じながら歩き出しました。12月とは思えない穏やかで暖かい日差し。
しばらく歩くと、静かな公園が見えてきました。
麻里
(多田さんと散歩……これ、完全にデートだよね。仕事の話じゃない、ただの男の子と女の子としての時間……)
広大の183センチの長身が、青空に映えていっそう眩しく見えます。無難な冬服ですら、麻里の目にはモデルの私服のように輝いて見えていました。
公園の広場に向かう道中、二人の距離は自然と近づいていきます。
麻里
(また……あの時みたい。大学の頃にドキドキした、あの感覚……)
かつての苦い思い出がよぎりますが、今、隣で穏やかに歩いている広大の存在が、それを優しく塗り替えていくようでした。
麻里
(今日は、多田さんをずっと見てられる。……もしここで、何か起きたら……)
静かな公園へ向かう足取り。麻里の心の中では、すでに期待と不安が入り混じった、熱い「ギュンギュン」が止まらなくなっていました。
冬の柔らかな日差しが差し込む公園。二人は並んで木製のベンチに腰を下ろしました。
沈黙が流れる中、麻里の心臓はドラムを叩いているかのように激しく、全身が熱くなっていくのが分かります。
あまりの緊張に、麻里は俯いたまま固まってしまいました。それを見た広大が、心配そうに顔を覗き込んできます。
広大
飯嶋さん? ……具合、なんか悪いんですか?
広大の優しい声が、至近距離で響きます。麻里は顔を真っ赤にしながら、絞り出すように答えました。
麻里
違います!! ……緊張しちゃって……
広大
緊張?
広大は不思議そうに目を丸くしました。麻里はもう、自分の気持ちを止めることができませんでした。ここで言わなきゃ、一生後悔する。そう思った瞬間、言葉が溢れ出しました。
麻里
多田さんが好きだから、、
広大
.........え。
広大の動きが、ピタリと止まりました。
風の音さえ消えたような静寂。183センチの大きな体が、麻里の告白を真っ向から受け止めて、硬直しています。
麻里は自分の心臓の音が広大に聞こえてしまうのではないかと思うほど、激しく、熱い「ギュンギュン」を感じながら、彼の返信を――いや、彼の言葉を待っていました。
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