第2話 メッセージを通して...
麻里
(チーム長やOJTに聞くんじゃなくて、私に……。これって、少しは頼りにされてるって思ってもいいのかな?)
飯嶋麻里
あ、うちのチームでよく使う運用ツールでして!
多田広大
運用って、何するんですか
飯嶋麻里
うち、後々、男性は夜勤として運用監視業務を行うんですよ。17〜10時ですね
広大からの返信は、少し意外そうなものだった
多田広大
そんなに拘束されるんですか……。終わったら美味しいもの食べに行かないとですね……
「美味しいもの」という広大の言葉に、麻里の心が少し和らぐ。
飯嶋麻里
そうですよね、テレワークでもいいのかな
すると、広大から少しプライベートなエピソードが返ってきた。
多田広大
夜勤でテレワーク……電話対応とかありますか? 友達と夜電話してたらうるさいと隣人にクレーム入ったことあって
麻里は画面の前で、思わず「へぇ〜」と声を漏らした。広大が友達と夜遅くまで電話をするタイプであること、そして隣人とそんなトラブルがあったこと。
麻里
(多田さんの日常が、少しだけ見れた気がする、、)
業務ツールを使った文字だけのやり取り。けれど、そこには確かな温度感があった。麻里は「変な人と思われたかも」という不安をすっかり忘れ、広大とのチャットを心から楽しんでいた。
出社日
ある出社日のこと。
スタッフの勤怠管理ツールを確認していた麻里は、「定時退社day未設定リスト」の中に広大の名前を見つけた。
麻里
(あ、多田さん、まだ設定してないんだ。中途入社だとこういう細かいツールの使い分け、最初は分からないよね)
麻里は席を立ち、広大のもとへ向かった。
麻里
多田さん!
広大
あ、はい
作業の手を止めて見上げてくる広大に、麻里は少し得意げに、でも優しく声をかける。
麻里
定時退社dayの設定のやり方……教わってないですよね
広大
はい、まだで、、
麻里は広大の横に立ち、画面を指差しながら操作を教えた。昨日チャットで話していた時よりもずっと近い距離に、少しだけドキドキしながらも手際よく進めていく。
麻里
一応誰かに報告した方がいいのかな、、
麻里は少し考えてから、近くのデスクに座っているチーム長をチラッと見た。
麻里
チーム長かにはまあ……今の会話聞こえてるから、ここのチャットスペースにちょろっと完了報告入れるくらいでいいかもですね
近くで二人のやり取りを微笑ましく聞いていたチーム長は、麻里の言葉に気づくと、キーボードを叩く手を止めて、笑いながら「分かった、分かった」というように頭を下げた。
広大
了解です!
広大は麻里の指示通りに報告を打ち込み始めた。
麻里は、自分が教えたことを素直に「了解です!」と受け入れてくれる広大の姿を見て、頼りにされている実感を噛み締めていた。
次のテレワークの日。
麻里が自分の業務をこなしていると、再び広大から個別のチャットが届いた。
多田広大
鈴木さんに個別にプログラミングレビューしてるのですが反応なくて……全体spaceで依頼した方がいいですかね?(=゚ω゚)
語尾の顔文字は可愛らしいが、内容は切実だった。麻里はそれを見て、思わず眉をひそめた。
麻里
え、こんなことまで、、
実は、鈴木達人には前科があった。広大が入社する前、麻里や木村がレビューを依頼した際も、彼はそれを無視し続けていたのだ。
麻里
(後輩の面倒を見る立場なのに、多田さんまで無視するなんて……!)
以前、麻里のプログラミングレビューを
鈴木にした時も
飯嶋麻里
@鈴木達人さん
プログラミングができたのでレビューお願い致します。
しかし。
その投稿から数時間が経過し、お昼を過ぎ、夕方になっても、鈴木からの反応は一切なかった
麻里
(丸一日無視?信じられない)
画面の向こうで困っているであろう広大の顔が浮かぶ。麻里は、自分も無視された経験があるからこそ、新しく入ったばかりの広大がどれだけ不安で、やりづらい思いをしているかが痛いほど分かった。
鈴木のの徹底した無視に対し、麻里は広大にアドバイスを送った。
飯嶋麻里
絶対全体チャットにするべきですよ!
多田広大
鈴木さん、お忙しいんですかね、、
広大のどこまでも謙虚で優しい言葉に、麻里は心の中でツッコミを入れる。
飯嶋麻里
(忙しい?一日無視する理由にならなくない?)
麻里は、鈴木の年齢や経歴についても触れてみることにした。
飯嶋麻里
鈴木さんは専門卒で22だったかもです。新卒2年目ですね
すると、広大から意外すぎる反応が返ってきた。
多田広大
若若!!四年目くらいで大人っぽかったのに!!
画面を見て、麻里は思わずフリーズした。
麻里の頭の中で、二人の姿が浮かぶ。
• 多田広大: 1998年生まれ。183センチの長身、ジャニーズ系の華やかなイケメン。
• 鈴木達人:2002年生まれ。165センチ(推定)。中学生のような幼い顔立ち。
どう見ても広大の方が大人っぽく、落ち着いて見えるはずなのに、広大は年下の鈴木を「大人っぽい」と評価している。
麻里
(多田さん、あんなにかっこいいのに……謙虚すぎるっていうか、ちょっと天然なの?w)
広大の意外な視点と、どこか抜けているような真っ直ぐさに、麻里は可笑しさと「やっぱり可愛い人だな」という感情が入り混じっていた。
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