第18話

瑠璃から相談を受けることが増えた。


最初は、

友達のグループの話だった。

居づらい、

否定される、

一緒にいるのがしんどい。


俺は、

無理に我慢しなくていいんじゃないか、

環境を変えるのも一つだと思う、

そう言った。


次は、

男友達とのことだった。

突き放される言葉、

きつい言い方。


俺は、

言葉が強いだけで、

本気で傷つけたいわけじゃない、

そう説明した。


縁を切れと言われても、

全部を信じなくていい、

逃げ場はある、

俺はここにいる、

そう言った。


由美の件もあった。

嫌いだという感情、

それを誰かに言われたことで、

関係が歪んでいく。


俺は、

無理に続けなくていい、

自分を守る選択をしていい、

そう言った。


三つとも、

違う相談だった。

でも俺の中では、

同じだった。


聞いて、

否定せず、

一緒に考える。


それが、

正しいと思っていた。

少し間を置いて、別の相談もあった。

男友達との関係が、急にぎくしゃくし始めたという話。


その友達は言葉が強いだけだ。

思ってもいないことを、思っているみたいな言い方でぶつけてくる。

不器用で、優しさの出し方を知らないだけだ。


俺はそう伝えた。


「言葉通りに受け取らなくていい。

あいつは、瑠璃のこと考えて言ってるだけだ」


縁を切るとか、嫌いになるとか、

そういう極端な話じゃないはずだ、と。


「俺は切らないから」


その言葉が、彼女を少し安心させたように見えた。


さらにはもう一つ。

友達同士の噂と、誤解と、感情が絡まって、

誰が何を思っているのか分からなくなった話。


俺は、そのたびに思った。


――俺は、優しい人間だ。

――だからこそ、全部受け止めてしまう。


それが正しいかどうかなんて、考えなかった。


ただ、瑠璃が少し楽になるなら、それでよかった。


その時はまだ、

この距離が、いつか壊れるなんて思ってもいなかったから。

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