第8章: 迷いと決断【後編】
悠斗はその夜、心の中で強く決意を固めた。これまで何度も迷い、阿部に頼るべきかどうかを悩み続けていたが、今はもうそれに答えを出す時だと感じていた。過去を受け入れ、前に進むために最も必要なことは、阿部に心を開き、頼ることだということに気づいた。
次の日、悠斗は早朝に目を覚まし、しばらく考えた後、携帯を手に取った。少し躊躇しながらも、阿部にメッセージを送ることを決めた。
『阿部、今日は少しだけ話がしたいんだ。』
送信ボタンを押した瞬間、心が少し軽くなるのを感じた。それから数分後、阿部から返事が届いた。
『うん、もちろん。今日、放課後に時間ある?』
悠斗はその返事を見て、改めて自分の気持ちを整理しながら、放課後を待つことにした。
放課後、二人はいつものように校門を出てから並んで歩き始めた。悠斗は言葉を探しながら、少しだけ歩調を遅くした。阿部が気づいて、穏やかな声で言った。
「悠斗、今日話したいことって、何かあったんだよね?」
悠斗は歩きながら、少しだけ間を取ってから答えた。「うん、実は…僕、君にお願いしたいことがあるんだ。」
阿部は穏やかな表情でうなずき、「何でも言ってくれ。」と答えた。
悠斗はその言葉を受け、深く息を吸った。「僕、これから君にもっと頼りたい。過去を背負って、どうしても一人で抱え込んでしまうことがあったけれど…君が言ってくれるように、君に頼ることが大事なんだって、やっと気づいたんだ。」
阿部は一瞬、悠斗の顔を真剣に見つめた。そして、少しだけ歩みを止め、悠斗に向き直った。「悠斗、君がそう思ってくれて本当に嬉しいよ。僕は君を支えるためにここにいるんだから、君が頼ってくれることが僕にとっても力になる。」
その言葉に、悠斗は少し涙がこぼれそうになるのを感じた。阿部の優しさが、何度も自分を支えてくれたことを思い出すと、胸が熱くなった。
「でも、僕はどうしても不安なんだ。」悠斗は続けた。「過去が明るみに出たとき、君がどう思うかが心配で…僕の過去が君を傷つけるんじゃないかと思って。」
阿部はその不安をしっかりと受け止め、ゆっくりと答えた。「悠斗、君が過去に苦しんでいる気持ちは分かる。でも、僕が言ったように、君の過去は君の一部だよ。過去が君を作ったとしても、それを乗り越えようとする君を支えたいんだ。」
その言葉に、悠斗はしばらく黙って立ち尽くした。過去を恐れ、隠そうとする自分がいたけれど、それでも阿部はずっと自分を受け入れようとしてくれている。そう気づいたとき、悠斗の心の中で少しずつ恐れが薄れていくのを感じた。
「ありがとう、阿部。君が言ってくれることで、少し楽になった。」悠斗は静かに言った。
阿部は微笑んで、悠斗の肩を軽く叩いた。「僕はずっと君の側にいるよ。君がどうしても怖がっているなら、その気持ちを一緒に乗り越えたい。」
その言葉に、悠斗は少しずつ胸の中で何かが解けていくのを感じた。阿部が自分を支えてくれることを信じて、今はその手をしっかりと握りしめて進んでいく覚悟を決めた。
その日の夕方、悠斗は自分の部屋で過去に向き合う決意を固めながら、何度も阿部との会話を思い返していた。過去を乗り越え、前に進むためには、やはり支えてくれる人に頼ることが大切だと強く感じていた。
そして、悠斗は決めた。もし過去が再び暴かれたとしても、阿部にすべてを話す覚悟を決めること。それが、今自分ができる最良の選択だと思った。
その時、突然、携帯が鳴った。画面には、藤田からのメッセージが表示されていた。
『悠斗、そろそろお前の過去を見せてもらう頃だな。』
そのメッセージを見た瞬間、悠斗の心に一瞬の冷たい波が走った。藤田がまた、自分の過去を暴こうとしている。この時が来てしまったのだ。
悠斗はそのメッセージを見つめた後、深く息を吐き、携帯を机に置いた。そして、改めて心を決めた。この試練も、阿部と一緒に乗り越えていくと。
その日の夜、阿部に電話をかけた。「阿部、話があるんだ。」悠斗は電話越しに言った。
阿部は少し驚いたような声で返事をした。「うん、何かあったの?」
悠斗は一呼吸置き、決意を込めて言った。「藤田が、僕の過去を暴こうとしている。」
電話の向こうで、阿部が少し黙った後、低い声で答えた。「それなら、君はもう迷わないでいいんだ。僕が一緒にいるから、何があっても乗り越えよう。」
その言葉を聞いた瞬間、悠斗の心は温かく包まれた。過去を恐れることはもうない。阿部がいる限り、自分はどんなことでも乗り越えられると感じた。
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