第39話

「勇凛くん、ベッドに座って」


 勇凛くんは緊張した面持ちで頷いた。

 勇凛くんが座った後、私はバスタオルを外した。

 勇凛くんの目が釘付けになっている。

 流石に恥ずかしい。


「あんまり見られるとちょっと……。そんなスタイルもよくないし」

「いえ……すごく綺麗です」


 その言葉に顔が熱くなった。


 勇凛くんも服を脱いだ。

 想像よりも引き締まった体をしていた。

 息を吞むほど美しいと思ってしまった。

 男の子なのに。


 私が触れていいのか──


 勇凛くんは俯いた。


「……すみません、どうすれば七海さんを満たせるかわからないです」

「そんな深く考えないでいいよ」


 私は勇凛くんにそっとキスをした。

 そして、勇凛くんを抱きしめた。

 温かくて滑らかな感触が心地よかった。


 勇凛くんも私を抱きしめてくれた。

 少し震えている。


 またキスをする。

 今度は深く──


 だんだんと強張っていた勇凛くんの力が抜けていく。

 二人の体温が上がってゆく。


 私は自分より勇凛くんを満たしたかった。

 勇凛くんが初めてだから尚更。

 丁寧にしたかった。


「すみません……リードできなくて」

「別にどっちでもいいんだよ」


 勇凛くんの肌に唇を落とす。

 勇凛くんの様子を見ながら、私は確かめていた。

 にこんな積極的な自分は初めて。


「どう?」

「すごくいいです……」


 だんだんと踏み込んでいく。

 だんだんと呼吸が乱れてくる。


「勇凛くんいいかな」

「はい……」


 私はゆっくりと、勇凛くんを自分の中に沈めた。

 その瞬間、全身に快楽が駆け巡った。

 私は何もされてないのに。


 たぶん、必要なのはテクニックとかじゃない。

 相手を大切に想う心だったのかもしれない。


「勇凛くん……どう?」


 いつも見下ろされる私が、今は勇凛くんを見下ろしている。


「七海さん温かいです」


 その瞬間、上下が逆転した。


「すみません、ちょっと抑えられないです」

「うん……いいよ」


 勇凛君の頬を撫でた。


 衝動のまま私たちは求めあう。

 深く繋がる。

 辛かった気持ちがこの瞬間全部吹き飛んだ。


「七海」


 初めて勇凛くんに名前をそのまま呼ばれた。


「好きだよ」


 胸が震えた。


「私も」


 その瞬間、何もかも結びついた気がした。


「勇凛」


 私も“くん”をやめた。


 ***


 終わったあと、二人でベッドに横たわっていた。

 ただ見つめ合っていた。


「七海さん……ありがとうございます」


 また七海“さん ”に戻っていた。


「私も嬉しかった」


 恥ずかしくなって布団に潜った。


「俺、頑張ります」


 勇凛君が私の手を握った。


「うん。私も」


 絶対負けない。

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