@komaryo1121

氷が小さく軋み、冷たく溶ける。

鈍く重い光の中に、ポスターが冷たさと量を競う。


構造を無視され切られた、レモンを搾る指に

震えと小さな毛穴、剃り残された細く短い毛に付く果汁の水滴を見つける。

細い薬指に銀が白く光る。


それぞれに合わない周波数が、空気を弾けさせ、

笑いは軽く机を叩きながら天井に消える。


鮮やかだった黄は、水分が抜け、クリーム色に変わり、

酸味だけを残して、白く光沢感のある皿の縁に佇む。


木目にかかる時計は、役目を忘れ、静かに進んでいる。


レモンの溶けだした、透き通るような酸っぱさと冷たさを

一気に飲み干すと、喉の奥から、知らない酸味と不快な生温かさがせり上がった。

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