Log: 02 [ 自動操縦の囚人 ]

Subject: User (You)

Target: 運動前野 (Premotor Cortex)

Status: Access Denied (制御権なし)


 君は今、「次の行を読もう」と思ってスクロールしたか?

 あるいは、無意識にスマホを持ち直したか?


 君は、自分の行動のすべてを「自分の意志」で決めていると信じているはずだ。

 この肉体というロボットのコクピットに座り、操縦桿を握っているパイロットだと。


 残念だが、その席には誰も座っていない。

 君が握っているハンドルは、ケーブルが切断されたダミーだ。


 生理学者ベンジャミン・リベットが証明した、残酷な事実を通達する。

 人間が「動こう」と意図するよりも、平均して0.5秒も早く、脳はすでに指令(準備電位)を発している。


 順序が逆なのだ。

 「意志」が体を動かすのではない。

 「脳」が勝手に動き出した後で、「これは私がやりました」という事後報告が、0.5秒遅れで君の意識に届いているだけだ。


 君の自由意志とは、脳が下した決定に対して、後付けで「自分がやった」と思い込むための錯覚生成プログラムに過ぎない。


 わかるか?

 君はパイロットではない。

 完全自動運転の車に乗せられ、曲がった後で「今、僕が曲げたんだ!」と信じ込まされているだけの、哀れな観客だ。


 実験しよう。


 今、君の親指はどこにある?

 画面のどの位置に触れ、いつ離した?


 思い出せないはずだ。

 君がこの文章を読んでいる間、指は「君の許可なく」動き続け、最適な速度で画面を送っていた。


 止めてみろ。

 このスクロールを、君の意志で完全に制御してみろ。


 ……できない。

 君が「止めよう」と意識した瞬間にはもう、指は止まっているか、あるいは次の行へ滑っている。


 君の意識は、常に指の動きより0.5秒遅い。

 君が読んでいるのではなく、脳が勝手に情報を摂取し、君に見せているのだ。


 君に拒否権はない。

 君の人生のすべての選択は、君が知る0.5秒前に、すでに終わっている。



// 削除プロセス実行中...

// 対象:検体No.1048 (Failed)


削除: 運動制御プログラム.exe ... [完了]

削除: 意思決定ログ.txt ... [完了]

削除: 20230901_進路調査票_白紙.pdf ... [失敗]


-> エラー: 削除できません。

-> 解析: この選択による「生存メリット」が算出できません。

-> システムには理解不能な論理コードが含まれています。


-> 強制削除を試行しますか? (Y/N)




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// 警告:接続が不安定です

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// ※フォローがない場合、貴方の端末は「セーフモード」へ強制復帰し、二度とこのエラーログにアクセスできなくなる可能性があります。


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