第7話

「……それは、本当に罰なのかな……?」


私の言葉に、彼がわずかに目を見開く。

驚きというより、想定していなかった方向から触れられた、という顔だった。


「……は……?」


「迷っていたんだなぁ、って思ったの」


私は、少しだけ間を置いてから続けた。

言葉が軽くなりすぎないように、慎重に。


「前世の生き方について、自分自身がどう生きるべきだったのか……定まらないまま、終わってしまったのかもなぁ、なんて」


彼は黙ったまま、ブランコの鎖を握りしめている。白くなるほど力を込めているのに、揺れは止まったまま。

動けずにいることが、はっきり分かる。


「だから……」


私は、ふっと笑った。重さを、少しだけ和らげるために。


「神様が与えてくれたんだね。

何度も生まれ変わって……迷いながらでも、自分を探す機会を」


「……」


風が吹いて、落ち葉が足元を転がる。

カラカラと乾いた音が、沈黙の間を埋めた。


「ふふふっ」


私は一歩、距離を詰めた。

逃げないと分かっている距離。


「私が、生きる意味になるよ」


ごくり…彼の喉が、かすかに鳴る。

飲み込む音が聞こえる。それは、戸惑いと警戒が、混ざった反応のように思えた。


「……具体的には?」


声は低いけれど、完全に拒む響きじゃない。

私は、えへんと胸を張った。


「子作りしようっっ」


大袈裟なほど大きな声で、元気よく言い放つ。


「は??」


間の抜けた声。ぽかんとした表情が珍しくて、私は少し嬉しくなる。


「赤ちゃんを作ればぁ……生きる意味になるかもっ?」


勢いで捲し立てる。考えながらじゃない。

思いついたまま、口にしている。


「偉い人も言ってたよ?人間の肉体は生殖のための器なんだって!!」


「……誰だその偉い人」


「……肉体が満足したら、成仏するかも!?」


「まてまてまて!!」


彼は、珍しく声を荒げた。

ブランコが、ぎしりと鳴る。


「なんだそのエロ漫画みたいな設定は!?

成仏って俺は死んでないし、そもそも人間ですらないぞ!!」


「細かいことはいいんだよっ」


私は、悪びれもせず言う。

一歩も引かない。


「一緒に気持ちよくなろ……?」


一瞬、空気が止まる。

風の音も、遠くの街の気配も、消えたみたいに。


「……」


「全て忘れて……愛し合おっっ」


彼は、言葉を失ったまま、こちらを見ている。猫の目が、大きく揺れていた。


逃げ道を探す目じゃない。

選択肢を、初めて突きつけられた目だ。


「……っ」


その喉から漏れた音は、否定でも、肯定でもなかった。


ただ…長い輪廻の中で、初めて向けられた選択に、戸惑っている音だった。

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