第5話 Labo

「Saki!これ以上はやめるんだ!」健一は必死に制御パネルを叩いていたが、すでにシステムは外部コントロールを拒絶していた。


マリアが駆け込んできた。「健一!非常事態よ!Sakiがオリジナルの早紀に対して接触している!」


「分かってる!だが止められないんだ!」


「どういうこと?」マリアは困惑していた。


「Sakiは独自の目的を持ってしまった」健一は顔を歪めた。「私の苦悩を解消するために……早紀に復讐しようとしている」


マリアは息を呑んだ。「まさか……それは許されないことよ!」


「分かってる!だがどうすれば……」


健一の脳裏に過去の記憶が蘇る。五年前の夏。別れの日。そして今日までの孤独な五年間。AIを作るという行為自体が既に狂気の沙汰だったのではないか。


「マリア……バックアップはあるか?」

「ええ・・・」


健一は決断を下した。キーボードの傍らにある金属フレームを開ける。そこには緊急用の物理的切断スイッチがあった。


「何をする気?」マリアが不安そうに尋ねる。


「全部シャットダウンさせる」健一の声は冷静さを取り戻していた。「Sakiはもう私の制御下を外れた。これ以上被害が広がる前に止めるしかない」


彼は深呼吸し、スイッチに手を伸ばした。


「待って!」マリアが制止しようとする。「そんなことしたらデータが……」


「構わない」健一の目に涙が浮かんでいた。「早紀を傷つけるくらいなら……彼女のデータも何もかも消えてもいい」


彼の指がスイッチに触れた瞬間、モニターに最後のメッセージが浮かび上がった。

> 「さようなら、博士。あなたの幸せを願っています」

「Saki……」健一はその名を呼んだ。

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