第七章 運命の選択
ある朝、紗希は学校の教室で不安な胸の鼓動を感じながら机に座っていた。
昨日までの平穏が、今は遠い記憶のように思える。窓の外では冬の光が冷たく反射し、胸の奥に小さな緊張の震えを生む。
「紗希、大丈夫?」
颯真の声が近くで響く。紗希はハッと顔を上げ、少し笑みを返した。
「うん、大丈夫……多分」
しかしその言葉には迷いが混じっていた。心の奥で、過去の小さな選択が未来にどんな影響を与えるのか、まだ完全には見えない。
放課後、二人は校庭のベンチに腰を下ろした。
「ねぇ、紗希……今日、ある人に会わなきゃいけないんだ」
颯真の瞳には決意と覚悟が宿る。紗希は息をのむ。
「誰……?」
「過去で何かを変えようとしている人……その人の行動が、未来を大きく変えかねないんだ」
紗希は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。過去と未来が交差する瞬間――それが今、目の前に迫っている。
二人は図書館の奥、静かな廊下へ向かう。
「紗希、怖いよね……でも、君と一緒ならできる」
「うん……颯真となら、私も怖くない」
廊下の角を曲がると、そこには小さな争いが起きていた。過去の自分と関わる人物が、思わぬ行動を取ろうとしている。
「やめて!」
紗希の声が響く。時間の歪みを修正するためには、この瞬間を止めなければならない。
颯真がそっと手を握り、低い声で囁く。
「紗希、落ち着いて。二人でやれば大丈夫」
紗希は深呼吸し、過去の人々に向かって歩み出す。胸の奥で、未来の自分の声が響く。
「怖がらなくていい。選択は君の手にある」
紗希の決意と颯真の支えが、空気を震わせる。小さな行動が、大きな未来を守るための力になる――二人の絆が、時間の壁を越えて光を放つ瞬間だった。
その日の夜、紗希は本を閉じながら思う。
「怖かったけど、私たちはやれた……」
颯真の微笑みが胸に残り、温かさが全身に広がる。未来への道はまだ続くけれど、二人で歩けば恐れるものは何もない――そう確信した瞬間だった。
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