第六章 未来との対話

ある雨の日、紗希は図書館の窓際に座り、静かに本を開いた。

外の雨音がリズムを刻み、心の中の不安を増幅させる。ページをめくる指先がわずかに震える。


「どうして、私はここにいるんだろう……」

小さく呟くと、胸の奥に重い沈黙が落ちる。過去と未来の狭間に立つ孤独感が、紗希の胸を締め付けた。


そのとき、図書館の静けさを破るように、目の前に光が差し込んだ。

「紗希……」


振り向くと、そこに立っていたのは――未来の自分だった。

目元は紗希と同じだが、どこか落ち着きと覚悟を帯びている。


「未来……?」

紗希の声は震え、胸が高鳴る。


未来の自分はゆっくりと頷き、静かに語りかけた。

「紗希、私は君を助けに来た。過去での小さな選択が、未来を変えるの。怖くても、逃げちゃだめ」


「でも、どうすれば……」

紗希は涙を浮かべ、震える手で本を握りしめる。未来の自分はそっとその手を取った。


「まず、颯真を信じなさい。彼と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる」


紗希は胸が熱くなるのを感じた。未来の自分がここにいる意味、そして颯真と過ごす今の時間の大切さを、初めてはっきり理解する。


「わかった……私、頑張る」

「うん、君ならできる」

未来の自分は微笑み、淡く光るように消えていった。


紗希は深呼吸をし、窓の外を見つめる。雨はまだ降り続けているが、心の中には光が差していた。

「逃げない……颯真と一緒に、未来を守る」


その夜、紗希は夢の中で颯真と再び出会った。

「紗希、大丈夫?」

「うん……怖いけど、もう一人じゃない」

二人の手が重なり、温かさが全身に広がる。時間の隔たりを越えて、二人の絆が確かに結ばれた瞬間だった。


目を覚ました紗希は決意を新たにする。

「どんな過去でも、未来でも、私は颯真と共に歩む」


そして翌日、紗希と颯真は行動を始める。過去の誤解やズレを修正しながら、少しずつ時間の糸を正しい方向に導いていく――二人の絆と勇気が、未来を形作る光となるように。

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