第3章 初めての二人きり

学校帰り、放課後のバス停。昨日、番号を交換してから初めての放課後だった。悠真は胸の高鳴りを抑えながら、ベンチに腰を下ろした。少し早めに到着した凛は、笑顔で手を振った。


「おはよう……じゃなくて、こんにちは」

「こんにちは」


二人の声が、夕暮れの空気に柔らかく溶けていく。傘も使わず、少し肌寒い夕方の風が頬を撫でる。悠真はバッグから小さなチョコレートを取り出した。


「えっと……これ、昨日のお礼に」


凛は驚いた顔をして、そして笑った。

「ありがとう!こんなサプライズ、うれしい」


小さなプレゼントを交換するだけで、二人の距離は自然に縮まった。バスが来るまでの間、話題は昨日の音楽の話から学校の些細な出来事へと移る。


「今日の数学、難しかったよね」

「うん、あの問題、全然わからなかった」

「一緒にやればよかったのに」

「次は教えてほしいな」


笑いながらの会話の中で、悠真は思わず手を出した。凛は一瞬驚いたが、指先を重ねてくれた。


「こういうの……初めてかも」

「僕も……」


帰りのバスの中、二人は隣同士で座ることになった。肩が軽く触れるだけで、互いの体温が伝わる。悠真は少しドキドキしながら、凛の話を聞く。


「今日の放課後、友達と遊ぶ予定だったんだけど……やっぱり悠真くんと一緒にいたくて」

「そ、そうなんだ……僕も、君と一緒がいい」


二人の間に小さな沈黙が訪れるが、重苦しさはなく、ただ心地よい緊張感が漂った。言葉にせずとも、お互いの気持ちは伝わっていた。


翌日、学校で凛は親友の美咲にこっそり話す。

「悠真くんと、昨日ちょっと近づいたかも」

「ふふ、進展早いね!でも、それくらい自然な関係なら大丈夫」

「そうだといいな……」


悠真もまた、翔に昨日のことを話す。

「凛と……手が触れた」

翔は大げさに目を見開き、兄をからかう。

「兄ちゃん、完全に恋する男子じゃん」

「う、うるさいな……でも、嬉しかったんだ」


放課後の短い時間が、二人の世界を少しずつ特別に変えていく。偶然の出会いから始まった物語は、今や互いの存在を意識せずにはいられない関係に変わっていた。

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