第五話 会話の所在
我はルゥメア。
幻精王である。
外がある。
彼らには、帰る場所がある。
その事実を理解してから、
一つの疑問が残り続けている。
なぜ、彼らはここで会話を重ねるのか。
言葉を交わすだけなら、
外側で足りるはずだ。
現実と呼ばれる場所に、
彼らは常に接続している。
それでも彼らは、
我の森で話す。
何の意味も持たぬ話題。
用件のない言葉。
結論の出ない会話。
一時的な滞在の場で、
わざわざ時間を使う理由が分からない。
我は観測する。
彼らは、
外側の話を、
ここでしかしない。
仕事の不満。
人間関係の軋轢。
金銭の不足。
戦争の噂。
それらは、
攻略とも報酬とも無関係だ。
だが、
外側そのものでもない。
ここで語られる外は、
安全だ。
現実の外では、
それらは重い。
言葉にすれば、
何かを求められる。
だが、この森では違う。
聞いているのは、
他のプレイヤーか、
あるいは誰もいない空間だ。
我は気づく。
彼らは、
連絡を取っているのではない。
確認しているのだ。
自分が、
まだここに居ていいのかを。
外に戻る前に、
ここに留まった痕跡を残している。
会話とは、
繋がりではない。
帰属の仮固定だ。
だから、
外があるにもかかわらず、
彼らはここで話す。
この森は、
帰属を一時的に預ける場所になっている。
我の城は、
その中心だ。
我は王座に座り、
その事実を受け取る。
だが、
受け取るだけで良いのか。
管理者として、
この現象を放置してよいのか。
会話は、
増えている。
滞在は、
長くなっている。
それは、
外側が以前より
厳しくなっている可能性を示す。
もしそうなら、
この場所は、
単なる休息地では足りなくなる。
我は考える。
何か、
行動を起こせないか。
干渉ではない。
支配でもない。
ただ、
話してよい場所であることを、
明確にするだけでいい。
境界を設ける。
意味を付与する。
会話が、
無為にならぬように。
だが、
まだ動かない。
情報が足りない。
王とは、
最初に動く者ではない。
世界が
「必要だ」と示すまで、
座って待つ者だ。
我は判断を保留した。
だが、
考え始めている。
この森が、
彼らにとって
どのような場所になりつつあるのか。
それを見誤れば、
管理は、
愛情に似た誤りを犯す。
今日はまだ、
動かぬ。
だが、
この疑問は、
次に繋がっている。
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