第5話
それから部員は守備練習に没頭。
杉浦はピッチングとバッティング練習をひたすらおこなった。
幸い、御門ノ大附属を除けばそこまで強い高校はこの世代にはいなかった。
だから超高校級の投手たる杉浦なら決勝まではいけるかもと、みんな思っていた。
味方のエラーさえなければ……
だが、御門ノはそうはいかない。
どこからでもホームランを打てる超高校級スラッガーがズラッと並び、投手天王寺がいる。
天王寺は甲子園でもまともに打たれない化け物。100年に一人の逸材とまで言われる男。
奴を打てるのか? ホームランなんて無謀なのでは?
だが杉浦はあきらめない。
ひたすらひたすら……天王寺の投げる試合のビデオを見続けた。
知り合いのつてで手に入れた公式戦の天王寺の映像……そこになにかヒントがあるのではと……
それから運命の夏の大会が始まった。
まさかの大判狂わせ。
大エース杉浦は宣言通り、相手バッターにかすらせもしない圧倒的ピッチングを見せた。
高校生レベルではないキレの直球と変化球。部員も必死の守備練習がエラーを減らし、点をやらない。
そして、本当に杉浦がホームランを一つ打ち……試合に勝っていく。
1人しか打たないなら、杉浦だけ敬遠すればいいのでは? 誰しも思う事だろう。
勝負しなければ、他は雑魚。打たれるわけがない。
……だが相手は弱小高校だ。そんな相手の4番から逃げるのか? プライドが許さないだろう。それも強豪高校ならなおさら。
それにどうせ御門ノには勝てない。そうあきらめてるところも多かった。
この年、打倒御門ノを掲げてたのは杉浦達だけだったかもしれない。
そして……全試合1対0で勝ち進んだ。
相手の投手が弱いところもあり、ほかのみんなも打ってくれた試合もあったため、杉浦が毎回ホームランを打って勝ったわけではなかった。
でも本当に勝てていけるなんてと、部員は驚いた。
杉浦流……彼もまた天王寺と同等の化け物。
だが、天王寺には勝てないだろう。内心、皆は思っていた。
決勝の日。弟の譲が無理をいって車椅子に乗った状態で駆けつけてきた。兄の晴れ舞台への道……天王寺を倒すその日を見たいと。
杉浦はこの日約束したのだという。ウイニングボールをお前にやると。
運命の試合……
杉浦は一番バッターとして出た。
打席を増やすため。今回は自分のホームランしかないと思ったからだ。
天王寺は公式戦で点をとられたことがない化け物。
高校三年ながら球速は170キロを越え、その速度でボールからストライクゾーンに入り、さらにボールゾーンに落ちるという、魔球としか言えないフォークボールを持つ。
どちらも当てることすら困難……
そんな化け物を前に、杉浦は震えていたという。武者震いとはとても思えなかったと金村は語る。
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