第4話
「……は?」
杉浦は父から聞かされた話に、開いた口がふさがらなかった。
「父さん今なんて?」
「譲は助からない……あと、良くて一年の命だと……言われた」
泣きじゃくる母。涙をこらえながら話した父。そして……嘘だと信じたかった杉浦。
弟が死ぬ。
信じたくない。信じられない。
だって今、普通に話せてるじゃないか。ご飯も食べれてるじゃないか。テレビも見れてるじゃないか。
あれこれ理由をつけて、杉浦は信じようとはしなかった。
だが、毎日お見舞いに行くことで……日に日に弱る弟に気づいてしまう。
弟は長くないと……
どうすればいい。自分になにか出来ないか?
必死に弟の力になろうと色々と考えた。
すると譲は……ポツリと言葉を漏らす。
「にいにが甲子園で投げてる姿が見たい」
譲は、杉浦が一番野球の上手い高校生だと信じていた。譲も元気な時は野球をしていた。その頃から、彼にとって兄の杉浦は理想だった。投手としても打者としても一流。
昔からの友だちとやりたいからと、中学高校と強いところにもいかなかったが、譲はどんなところに入ってもレギュラーをとれると信じてた。
そんな中、テレビで兄の同級生の天王寺ばかり話題になってるのが許せなかった。
兄の方がすごいんだ。天王寺なんかに負けてない。
試合で当たれば兄が勝つ。兄が甲子園に出ればもっと活躍するんだと。
そんな弟の思いに答えるべく……杉浦は本気で甲子園を目指す事にした。
肩が壊れる? 将来を棒に振るう?
プロ? 大学?
……今となってはどうでもいい。
弟が死ぬまでに、弟の夢を叶えてやりたい。
それが兄として、自分が出来ることだ。
それから杉浦は……全てをかけて、甲子園を目指す事とした。
仲間の部員に頭を下げて。
部長の金村はそのときの事をよく覚えてるそう。
練習時間を増やして、甲子園に行くために協力してほしいと、杉浦は土下座したという。
そして部員達には必死に守備練習をしてほしいと。
杉浦は今までまともに打たれて負けた事はなかった。球を落とすなどの守備のミス、エラーがきっかけだった。
エラーさえなくなれば……自分は一点も敵にはやらないからと……
確かに一点もやらなければ……負けはしないかもだが、こちらも一点もとれなければ勝つことも出来ない。
投手は杉浦一人だけ。それではいつかバテて打たれる……勝つことなんてできない。
そんな疑問を言うと、杉浦は言ったと言う。
「オレが0点で抑えて、ホームラン打って勝つ。それで天王寺を……御門ノを倒す」
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