第3話

「弟さんとの約束?」

「ええ。杉浦には弟がいたんですよ」


 兄弟との約束。それでそれだけのやる気をだしたのかと少し感心する竹之内。


 金村はキョロキョロと周りを見渡す。


「あんま杉浦には話すなって言われてるんだけど……あいつの野球人生、雑誌に載せてもらえるとなると……」

「なにか、話してくれるんですか!」

「ええ」



――――――――――――――――――――



 ――10年前。


 杉浦と金村の虹色学園はいつものように一回戦負けをきっし、後は最後の夏の大会を残すのみだった。


 虹色学園野球部は先輩が卒業したことにより部員もギリギリだった。未経験でも歓迎しないと試合にも出れないほどに。


 そんな中、杉浦のみは超高校級の選手だった。中学の時はそれほどの選手ではなかったのだが、高校からぐんと伸びたのだ。


 四番でエース。聞こえはいいが所詮一回戦で負ける学校の選手。

 だが試合で当たった学校は杉浦の名前を覚えて帰った。


 150キロ後半の直球に多才な変化球。そして試合では特大のホームランを打つような打者でもあったから。


 しかし味方のエラーなどでいつも敗北していた。


 せめて最後の夏くらいは……一回戦くらいは勝ちたいものだと杉浦は思っていた。


 そんな時、弟と春の甲子園決勝を見ていた。

 御門ノのエース天王寺……彼は決勝の大舞台で完全試合をやってのけた。


 甲子園を一年の夏、春。二年の夏、春。全て優勝し四連覇。防御率も0、00。一点すらとられていない。

 まさに化け物。次元が違う高校生。


「……運がないもんだ。こんな化け物と同じ地区じゃ甲子園になんていけないからな。いや、そもそも二回戦行くのが目標のオレたちからしたら関係ないか」


 兄の情けないぼやきに弟の譲は反応。


「何情けない事言ってんだよ! 来年こそは甲子園行ってよにいに!」

「いやいや無理無理。オレ一人で試合に勝てるような選手ってわけでもない。その上天王寺になんて勝てるわけない。やるだけ無駄。地道に大学で推薦もらえるくらい頑張ればいいんだよ」

「おれは! 甲子園で投げるにいにが見たい!」

「そうは言うけど、無理なものは無理だって。100%無理なこと頑張ってもさ、時間の無駄。無理して肩なんか壊したらそれこそバカみたい」


 杉浦は本棚に置いてある漫画を取る。

 

「この漫画の主人公みたいにさ、優勝するために投げまくるとかアホらしいじゃんか」


 杉浦が読みだした野球漫画。

 それは学校や仲間のために、甲子園を目指すために無理して投げ、主人公は肩を壊してしまうものだった。


「カッコいいとは思うけど、将来棒にはふるえないって。野球選手になれないにしても、大学の推薦とかもなくなっちまう」

「いいよもう! にいにの意気地な……ゴホゴホ!」

「譲!」


 杉浦はベットに置かれてる、ナースコールのボタンを押す。


 ……そう。ここは自宅ではなく、病院だったのだ。


 弟の譲は……病におかされていた。


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