第28話 弱者の生存戦略、あるいは剣聖の条件
まだまだ準備不足かもしれない。
でも…フレイが指摘してくれた通り、ぼくには泥臭くするしか方法がないんだ。
そう思いながら今日もウィルフレッドの下に行ってみる。
「…おはよう」
「………………………」
どうやら寝てるようだ。起きるまで待つ―――。
そして2時間ほど待ってるとアクションが返ってきた。
ウィルフレッドは寝そべりながら言う。
「…おい! いつまでそうやってるつもりだ!」
「おはよう」
ウィルフレッドは体を起こし、頭を掻きながら言う。
「落ち着いて眠れやしねえ。いい加減…しつこすぎるぞ。オレじゃなきゃとっくの昔に殺されててもおかしくない」
「それだけ重要視してるんだってば」
ウィルフレッドはまるでマリオを殺害するかのような一層鋭い眼光で言う。
「今日で最後にしろ。次に来れば容赦はしない」
しかしマリオは動じない。
「…何度でも来るよ。どの道ぼくに残された道はウィルフレッドを仲間にするしかないんだ」
ウィルフレッドは呆れたように肩をすくめた
「……チッ! こういうところがアイツそっくりだ」
「それってロジャー・ブラウンさんのこと?」
「あん? なぜ知ってる?」
「一昨日、ハンスさんに会っていろいろと聞いたんだ。ハンスさんの恋人だとか」
ウィルフレッドは額に手を当てた。
「ハンス…余計なことを……」
「その時にロジャーさんが亡くなったあとトレジャーハンターをヤメたこととか」
「もしかしてなんだけど、それが原因なの?」
ウィルフレッドはもうたくさんだ!と言わんばかりに話し始める。
「いい加減しつこいから話してやる。もうこれで最後にしろ! いいな?…確かにロジャーが死んだのが理由だ」
「ロジャーは貴族の息子として何一つ不自由なく育った」
「甘ちゃんで世間知らずで、不器用で…だが……夢の大きさだけは誰にも負けないやつだった」
「今のお前と同じように、突然オレの噂を聞きつけてきて世界の秘宝を手に入れるために仲間になってほしいと言われた」
「直ぐに死ぬぞ。何度も何度も警告した。そして断った。そう…今のお前のようにな」
「それに貴族の息子として学問は学んでいたようだが冒険者としてのスキルなど皆無だった」
「自殺行為だ。誰もがそう思った」
「だが…ロジャーは歯を食いしばってついてきた。クロスボウを手にレンジャーとしてのスキルを磨きながらな」
「レンジャー。ぼくと同じだ」
ウィルフレッドは静かに目を閉じ、そして苦悶の表情に変わっていった。
「人ってのは不器用でも努力でここまでなるのかと思えるくらい冒険者レベルも上がっていった」
「そしていつしかレンジャーとしては冒険者ギルドでも最高位と称賛されるまでになった」
「オレはロジャーを認めた。いや…この国の誰もがな」
「………それが落とし穴だった。人ってのは自信をつけると驕りが出る」
「奴はある日…低レベルダンジョンに隠し財宝があるとメモを残し一人で行ってしまった」
「オレたちは必死に奴の後を追った。だが…発見したときには既に変わり果てた姿だった」
マリオは真相を知り問いかける。
「ウィルフレッド…もしかしてなんだけどロジャーの名前を名乗ってたのは彼のことを忘れないため?」
「戒めだ」
「戒め?」
ウィルフレッドは握りこぶしを作り、力いっぱい握っている拳を見つめながら言う。力が入りすぎて拳が小刻みに震えている。
「守ってやれなかった…アイツを殺したのは……オレだ………」
「今でも寝ても覚めても…あの時こうしてればとか。驕りが出るのなんざ分かっていただろう?とか」
ぼくは話を聞きながら、過去の自分に投影させていた……。
自分はAPEXのゲームで負けたとき…いつも他人のせいにしてた………………。
カバーが遅い!だとか味方が弱いから!だとか……単に自分が味方を見れてなくて孤立してたり自分が弱かっただけなのに!
ホントに過去の自分が情けなくて涙が出てきた。真に強い男ってのは、こんなことでも自分を責めるんだと。
「わかっただろ? 帰ってくれ。そしてもう二度と顔を出すな。いいな?」
「…ぼくは死なないよ」
「あん? 今の話聞いてたのか? ロジャーですら死んだんだぞ」
「ぼくも…そして【負けっぱなし】のイリスも自分がとことん弱いことを知ってるから………」
「絶対にウィルフレッドの傍を離れない。ウィルフレッドは必ず守ってくれる」
一瞬の静寂の後、ウィルフレッドは天を仰いで豪快に笑い飛ばした。
「ふふw………あっはっはっはwww」
「これは一本取られたぜw 仲間になってくださいとは星の数ほど言われた」
「その時に自分のアピール含めてな。自分はこんなスキルを持ってるだとか魔法を使えるだとか……」
「自分がとことん弱いってwww 弱さを自覚してる奴は初めてだwww」
「じゃあ…仲間になってくれるのかな?」
「条件がある」
「条件? それはなに?」
「イリスの話はオレも聞いたことがある。オーガ討伐のことだ」
ウィルフレッドは真剣な表情で続けた。
「お前たち2人でオーガ討伐をやり遂げてみろ。成し遂げたら仲間になってやる」
マリオはあまりの無理難題に戸惑う。
「そ、そんな!」
ウィルフレッドは首を振りながら譲らない姿勢を取る。
「できないとは言わせねえ。どの道オーガ討伐くらい2人でできなければ…そのうち死ぬ。オレの足を引っ張るだけだ」
「それにイリスという奴もいつかは乗り越えないといけない壁だ」
ひとしきり考えてマリオは前を向く。
「…わかった。やってみるよ」
ウィルフレッドは、ほう?というような表情を浮かべた。まるでまた一歩マリオを見直したかのように……。
「その時には声をかけろ。見届けてやる」
ウィルフレッドから出された条件は到底自分たちが達成できない試練だった
大変なことになったなぁ…とりあえず帰ってフレイとイリスに相談してみよう。
マリオは足どり重く宿屋に戻るのだった。
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