第14話 童貞の突撃、あるいはリスの爆笑
国立図書館から宿屋に戻ると、宿泊日の残り日数が少ないことに懸念したぼくは、お金があるうちに引き伸ばすことにした。
宿屋は高いが2食付なのと、野宿に近い環境で生きていける自信もない……。
事実、ぼくはお金を盗まれたとき、2食付のお陰で心に余裕が生まれた。
「おかえり」
「女将さん、また宿泊日伸ばしたいんだけど……」
「じゃあ1日80ファナン。何日伸ばすね?」
現在の残金はフレイに竹とんぼを届けた時に得た1000ファナン。雑費に使う分を残しながらもできるだけ多くの日数...
「とりあえずまた10日間」
そう言って800ファナン支払う。これで残りは200ファナンだ。
気を抜けば直ぐにホームレスになってしまう。
明日はまた仕事を探しに行こう。
「明日の早朝から仕事探しに行くんで、食事取って早めに休むね。お願いします」
「あいよ。その前にお風呂行って来たらどうだい?」
ぼくは無言で風呂の手形を受け取ると喜び勇んで向かう…。
あのお姉さんがいれば…ぼくの頭の中は初めてのエッチでいっぱいになった―。
期待と想像で胸も股間も張り裂けそうになる―――。
「たのしみじゃのー」
「わっ!!!」
そう言えば……これが居たんだった……。
「"これ"とはなんじゃ!」
「ふふw 無粋なマネはせんよ……楽しんでこい」
フレイは笑いながら続けた。
「ワシの初恋の人ジュウゾウもよく利用しておったわ……」
「しかし男というものは不便じゃのう。『吐き出さねば我慢ならぬ時』があるとか」
パン屋に到着して手形を渡す
そして2階へ
服を脱ぎ蒸し風呂に入ると、男2人と2人の女がいた。もちろん全裸だ
ぼくはイキり立った股間を隠そうともせず、2人の吟味をする
一人は胸は小さいし全体的に肉付きがない。でも顔は好みだ。童顔系の顔。透き通るような白い肌。茶色の髪を後ろでまとめている。
もう一人は顔の好みはそうでもないがスタイル抜群だ。背中の中ほどまである豪奢な黒髪。そして少しワイルドな小麦色の肌。
究極の選択かもしれない。
(……顔だ。やっぱり、初めては好みの顔がいい!)
その方が後悔しないと思ったから。初めての場合はこちらかなって……。
だけど……ここ一歩が踏み込めない! 童貞が顔を覗かせる。
心臓の鼓動が耳元まで響く。行け、ぼく! 言うんだ、例の五十ファナンを提示するんだ!
石の上に腰を下ろし、もじもじしながら、熱い視線をその女性に送り続けた。……すると、彼女が困ったように笑い、口を開いた。
「……ごめんね、お兄さん。私たち、二人とも結婚してるの。この人たちは、うちの旦那さんなのよ」
「――――えっ」
時が止まった。
隣で汗を流していた屈強そうな男たちが、ぼくを見て「はっはっは」と豪快に笑う。
羞恥心。それだけが爆発し、ぼくは体を洗う間もなく、乾いた藁で適当に体を拭いて階段を駆け下りた。
「あれ? また早いな……」
パン屋の主人の呆れ顔に、ぼくは半べそで経緯を話した。
「なぁーに気にすんな。そういう日もある」
パン屋の主人は優しく言った。
「それよりも誰が人妻かわかったからいいじゃねぇか。そうやって街の住人の顔を覚えていくのも大事だ」
「それに人妻には手を出すなよって言ってた事を守ってくれたようだな。ありがとよ」
そう言って笑った。
ぼくは早足で宿屋に戻ると、女将さんに食事をお願いして部屋に戻る……。
そして201号室の部屋を開けた。
そこには笑い転げながら涙を流すリスがいた……………。
「――っ! ひーっ、ひーっ! ヌシ……最高に傑作じゃのう! wwwww」
「そんなに笑うことないだろ!」
「く、くくく……っ。あの鼻息を荒くして突撃したヌシの背中……思い出しても涙が出るわい!」
「もういい!」
「す、すまんのwww 腹がいたいwwwwww」
ぼくはふて腐れながら、女将さんが運んできた夕食を無心で胃に流し込んだ。
あのお金(二百ファナン)は、まだ使わずに持っておけ。……世界が、そう言っているような気がした。
布団に潜り込み、ぼくは暗闇の中で「明日は絶対に仕事を見つける」と心に誓った。
……股間の熱が、冷え切った夜風に少しだけ寂しく冷まされていった。
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