弟たちとは真逆の綺麗めファッションが宝人くんの好みらしい。

中性的な顔立ちにとても似合っていて、これは好きだ、大好きだ!


「えっと……山田さん?」


ぽーっと見惚れていたら、宝人くんが困ったように眉を下げて笑っている。

おっと、お客さまを放置なんていけない。


「あがって。こっちがリビングだよ」


案内したのは何の変哲もないリビング。大きなソファーとテーブルがあり、キッチンと繋がっている。

入った瞬間に足を止めた宝人くんは、壁を指差した。


「あの……あれは……?」

「あれはお父さんの教え子なんだ~」


そこには引き伸ばした写真が飾られている。


「見間違いじゃなければ、あの人ってボクシングの有名な……」

「そう! うちの両親はボクシングジムを経営しているの。弟たちもみんなやってるんだよー」

「……」


宝人くんは目を丸くしている。

そんなに驚くことかな?

まあ、特殊な職業かもしれない。


「山田さんは、やらないよね?」

「やらないよ。肉体的に痛いことは嫌いだもん」

「良かった……」


安心したように息を吐いている。

女の子だからって心配してくれてるのかな?


宝人くんって優しいんだな。


「約束どおりお昼ご飯を用意したんだ。お口に合うか分からないけど」


「姉さんの食事は美味いから、残すやつなんていない」とニ歌が話に割り込んでくる。


「もう! それは食べ慣れてるからそう思うだけだよ! 美味しくなかったら残していいから……」

「いえ、完食します、何があっても」


きっぱりと言い切るなんて、食べ物を大事にするいい人だ。

ますます惚れてまうやろ!


「「いただきます」」


用意したのは煮込みハンバーグをメインに5品のおかずと、デザートはアップルパイを焼いた。作りすぎた気もするけど、男子が4人もいるんだから心配ないはず。


順調に料理が減っていく中、弟たちはマシンガンのように質問攻めをしていた。


「姉さんのどこが好きなんですか?」

「宝人さんのお家ってどの辺?」

「二人はもうデートしたの?」

「SNSとかやってる?」

「よかったら連絡先交換しません?」


思いついたことから片っ端に聞いているみたい。

それに宝人くんは言葉を選びながら答えていく。

ちゃんと一つ一つ返していて偉いと思う。


「クリスマスはどうするの?」と三矢が口にして、私は息を呑んだ。


宝人くんは「クリスマス……」と呟き、ちらりとこちらを見た。

顔色を窺うようなその視線にゾクゾクする。


「……やっぱり、クリスマスは家族で過ごしたいよね? 俺はそれを優先して欲しいかな」


宝人くんは感情を隠すように曖昧に笑った。


この回答には弟たちが感動したようで、「今年はご馳走なしかと思った」「やっぱり姉ちゃんがいないと」などと言い出す。

そして、三矢が名案を思いついたように言った。


「じゃあ、宝人さんもうちのクリパにくればいいじゃん」


「え?」と宝人くんの頬が引くついた。


「いや、そんな迷惑なことは……」

「全然迷惑じゃないってー。なあ、ねーちゃん?」

「うん、みんな一緒って楽しそう」


その日に振られるみたいだけどね……。

それが最後の思い出になるのかな。


「父さんのジムの人たちも来るし、家族水入らずじゃないから気軽に来てください」と四緒が付け加えると、宝人くんは「はい……」と答えていた。

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