第18話 信じるから

 学校登校日。

 離れたくないと泣きわめく両親を落ち着かせながら、見慣れた寮へ向かう。

 「おはよう!」とみんなに挨拶したのも束の間、気づけばタイムオーバー。

 部活時間がやってきた。

 隣のコートを使うサッカー部に入部した、二階堂くんを待ちながら、脳内で考えた台本をめくりまくる。

 「よ!

  幸知!」

 「その呼び方やめて、

  今日はお願いがあって来たの。」

 「はいはい、

  そのお願いっちゅーのはなんなん?」

 別れたばっかりの時と似た会話をしながら、二階堂くんに近づく。

 「実は、すいのんと副部長が……。

     はるっちが………………。」

 事情を説明すると、二階堂くんは分かってくれたかのようにこくこくと頷く。

 「あなたを、信じるから。

  私を、助けて。」

 彼は、うーんと悩んだ後、いつもの作り笑いに戻り、私を汚いもの扱いするような目で見てきた。

 ころころ変わる彼の表情が、とても怖い。

 「そんな、副部長?とかはるっち?とかじゃなく

  て、俺を選びなよ。」

 「え?」

 足がガクガク震える。

 助けを求めただけなのに、どうすればいいのか聞いただけなのに、何でまたー……こんなことになるの?

 二階堂くんに掴まれている腕が痛くて、怖くて、悲しくて、泣きそうになる。

 ……ううん。

 最近、副部長に会ってから私、泣きすぎだ。

 それは全部、副部長に頼りすぎだったから。

 私はキッと睨んで、手を振りほどこうとする。

 するとバランスを崩した私を彼が抱きとめようとしてきて………。

 嫌だ!

 「栗島!」

 結果的に、なぜか、倒れていない私。

 横を見ると………。

 私のヒーローが、ニカッといつもの微笑みで抱きとめてくれた。

 ああ、本当に、この人は、なんて、なんて、眩しいんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る