第9話 別れます

 あの後、楓のクラスを教えてもらった。

 副部長と楓は、同じクラスなのだそうだ。

 コンコン

 「古田さん、いますか?」

 「……っ、幸知!?」

 「残念だけど、楓には、佳子ちゃんっていう彼女

  がいるんだよね〜!」

 「ちょ、亮太……!」

 うん、知ってる。

 浮気した彼女が菊池さんなことも。

 ほんとは小5の時から付き合ってることも。

 菊池さんとは幼稚園からの幼馴染なことも。

 陰で友達に私の愚痴を言ってることも。

 ぜーんぶ……ぜーんぶ…。

 「別れます。」

 「え、幸知?」

 「別れます。」

 「嘘、だよね?

  幸知は俺のこと大好きだもんね?」

 「そんな事思ってるの菊池さんだけだと思うな。

  あ、菊池さんにも嫌われちゃうね、今から。」

 「お前っ、いい加減に……」

 「そうやって逃げるんだ?」

 ほんとそう。

 ずっと逃げてばっかり。

 こいつは、逃げてばっか……。

 「は?

  俺は一回も逃げたことなんてねぇよ!」

 また逃げて………最低。

 「ずーっと、逃げてる。

  そうやって、またか弱い女子にヒーローぶっ

  てたんでしょ?

  すぐに突き放して……。

  言い訳はいくらでもできるもんね?

  菊池さんっていう都合のいい女子を一人でも置

  いておけば、自分は安心だもんね?

  ……自分の問題から逃げんなよ、浮気野郎!」

 「っっ………幸知!!」

 「っ何回言っても分かんないの!?

  別れます!!」

 階段の踊り場に出ると、急に力が抜けて、しゃがみ込む。

 辛い、悲しい、苦しいよ。

 でも………、

 「ちゃんと向き合えたよ、

  副部長………。」

 私の意識はそこで途絶えた。

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