第8話 逃げるのは恥じゃない。

 「大丈夫か?」

 私の手を優しく握ってくれた副部長。

 辛い、悲しい、苦しいよ。

 どれだけ涙をこぼせば、神様は私を助けてくれるんだろう。

 「大丈夫…じゃっ、ない、ですっ……。

  何で、何でっ、ずっと信じてきたのにぃっ、小6

  の頃から、私のっ、ヒーローで、大好きぃ、だ

  ったのにー………!」

 何で、何で、私は、こんなにバカなんだろう。

 彼がモテること、学年が違うこと、あまり会えてなかったこと、何で、何で、他の人よりっ、違うって、考えなかったんだろぉ………!

 「こんな目に遭わないといけないのは、私がっ、

  バカだからだぁ〜……!」

 「違う」

 「私が彼と出会わなかったらこんなことにならな

  かったかもしれないのに……!」

 「違う」

 「逃げちゃダメって、分かってたのにぃ〜…!」

 「違う!!」

 ドキッ

 違くない。

 違くないよぉ。

 浮気されて、まだ好きで、自分のせい〜って泣きわめいてるんだから。

 もう、嫌だぁ………。

 「逃げてもいいんだ。

  ダメなのは、逃げたままにすることだ。

  逃げて、自分や、相手の何が悪かったのか、よ

  く考えるんだ。

  点数が悪くても……、その間違いに気づけたら

  100点だ。」 

 頭を撫でてそう言ってくれる彼に、ドキドキしてる。

 何で、そんな優しいことを言ってくれるんだろう。

 彼の嫌なところなんて一つも見つからない。

 可愛らしくニカッと笑うところ、ダメなときはしっかり叱ってくれるところ、欲しいときに欲しい言葉をくれるところ。

 あぁ……好きだな。

 うん、好き。

 心変わりが早いかもしれないけど、彼のおかげで、私は、楓と向き合うことが出来た。

 「私、ちゃんと楓と向き合います。

  だから………ありがとうって。」

 私はできる限りニコッと笑って、言った。

 彼の顔が少し赤色に染まった気がしたけど、気のせいか。

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