第5話 究極の決断

卵ひとつで、ここまで悩むか、普通。

腹が減っているからだ、と言い訳する。

腹が減ると、判断が鈍る。だから食べる。満たす。終わる。

講義も、無駄遣いの後悔も、冷蔵庫の前で立っている時間も。

全部まとめて、終わらせたい。

だから食べる。

食べるから、生きる。

空腹になると、世界はすぐに大げさになる。

「生きるとは、食べることだ!」

考えが、そこで爆発する。

卵とは宇宙。卵を支配するものは宇宙の未来を制す。

だがいいのか。卵を食べれば宇宙はなくなるのだ。

違う、頭をガクガクとふりまわす。

正気に戻れ。

いま考えるべきは、卵のことだ。

食べるか、食べないか。それだけでいい。

卵は白く、黙っている。

何も言わない。

急かさない。

それが、少しだけもどかしい。

「卵。どうしてほしいの?」

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