第4話


「えっと……」


 なんて説明をしたらいいのか……まきのからすればもうひとりの自分がおれの部屋にいたわけで……しかも、直前にふっと消えてしまった。

 幻だよ、で誤魔化されてはくれないだろうな。


 ――それに、まきのはおれのパソコン画面をじっと見ている。

 世界滅亡のスイッチが押されました――だ。


 カウントダウンこそ始まっていないものの、無期限ってわけではないだろう。


 神のことだ、おれに動きがなければ尻を蹴るくらいのことはしそうだ。



 神は、おれのHDDの中にあるゲームを吸収した。これが別のゲーマーだったなら、数が絞れたと思うのだが、この中には数千のゲームが詰め込まれている。

 最古から最新まで……果たして神はどれを選ぶんだ?


 さらに言えばひとつの大作をなぞるのか、複数のゲームをプレイするのかも分からない。ルールブックがないのだ、今のところノーヒントだぜ……!


 同人ゲームにしたって不親切だろ。



「楽、説明」


「それどころじゃないんだよ……今日は帰れ。こっちだってまだ整理ができてな、」


「楽? パニックなら叩いてあげよっか?」


 ぱぁん!! とビンタをされた。

 でも、痛みはなかった。ただ頭が冷静になっただけだ。


 ……じっと、まきのが見つめてくる。

 誤魔化せそうにないな……。


 仕方ない。まきのに全てを説明することにした。




 真剣に聞いてくれたまきのが、返事をしてくれた。


「――分かった、協力する」


「いいのか? なにをするのかも分からないんだぞ? お前の苦手なホラーゲームなのかもしれないし……」


「いいよ、どうせ全部苦手だし」


 かもしれないけどさ。


 ホラーゲームが目の前に出てきたら……おれだって怖いんだぞ?

 あれは画面越しだからこそできるゲームだ。


「世界滅亡が迫ってるんでしょ? だったら勝たないといけないじゃない。負けたらどうせ全部なくなっちゃうんだし……そんなの、嫌じゃん」


 ぎゅっと、おれの袖を掴むまきの。


 巻き込んだのはこっちなのに、まきのはおれに、「見捨てないで」と言っているような気がした。……お前は、幸せそうに水の中を泳いでくれたらそれでよかったんだけどな……。



「分かった……協力してくれ、まきの」





 翌日、朝のニュース番組でそれっぽい事件が報道されていた。


 昨日の神の仕業なのか分からないが……ニュースにはこうあった。


 ――全国の動物園から猿が逃げ出しました。



 テレビに映る、住宅地を駆け抜ける猿たちは、どこで拾ったのか、その手には虫網や木刀、フラフープなどを持っていた。………………まさか。


「これ、早速、神のゲームが始まってんのか……!?」


「そうなの? なんのゲームなの?」


 隣で朝食を食べているまきの(いつものことだ)が言った。知らないのも無理はないかな……古いゲームだ。なんだかんだで二十年以上は経っているわけだし。


 ――神が、現実世界にゲーム要素をぶち込んできた。


 その結果が、このニュースなのだ。



 スマホが震える。

 起動したが、画面は暗転のまま――そこにはファーストステージ、と表示されていた。


 水面のように揺れる画面。神の仕業であることの証明だ。


 やっぱり、いくつかのタイトルを使うつもりなのか……そして、今回、ファーストステージに選ばれたのが、これか……。


「猿のゲーム?」


「ああ。ゲームだとそう難しいわけじゃないんだが……現実でやるとなると、ムズイと思うぞ、これ……」


 少なくとも、運動音痴のおれにはできないだろう。

 相手は猿だが、しかし普通の猿なわけがない。賢いはずだ。

 数で押されたらひとたまりもない。


 ……それに、なぜか網があっちにある。

 奪ってからがスタートでも言うつもりかよ!?


 神にしては不親切なゲームである。

 いいや、リアルタイムでゲームを改変してるやつに公平性があるわけもなかった。



『では、遊ぼう、相沢楽人。自称最強ゲーマーの強さを見せてほしいね』



「どんなゲームだろうと、ゲームであるなら抜け道があるはずなんだ――ルールがあるなら隙間がある!! ああ、バグでもなんでも使えばいい……こっちは知識と経験もあるんだ、絶対にクリアできる――ッ、してやるからなあ!!」



 そして、始まる。


 神が仕掛けた、最難関のゲームだ。





 … 読切/おわり

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ゲーマー オブ オーバー 渡貫とゐち @josho

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