第1章 転生しました

第4話 異世界人生スタート

『ドゴーン・ザー・ドゴーン・ザー・ドゴーン・ザー…』

未だ目は見えないし身体も思ったように動かないが耳だけは聞こえるようだ。


 気が付いてから母親の心臓の音と、流れる血液の音が俺に安らぎと眠気を与えてくれる。

 生まれたらすぐ鍛錬を始める予定だったが、ここで意識が覚醒したなら今からできないだろうか。


 精神統一をしながら魔力探ると小さな魔力溜まりが直ぐに見つかり、魔力循環を始めると寝落ちした。

 駄目だこの身体は眠気には逆らえないようになっているようだ。


 俺は20分起きて20分寝るをずっと繰り返していた。

 チャンスだ! 母親のお腹の中にいるうちに魔力枯渇を繰り返して魔力を増やせば生まれた時点で大きなアドバンテージになると思いながら又寝落ちした。


「カイン来て」

「お腹の赤ん坊が動いたからって毎回毎回呼ぶんじゃないよ」


「違うの魔力がお腹から溢れてくるからみてて、・・・・ホラ出た」

「ごめんピリカ俺はピリカ程魔力を感じる事はできないよ」


 俺は1日に30回以上魔力枯渇させて寝るを繰り返して3か月が過ぎた。

 魔力枯渇による魔力を増やす訓練は順調でかなり増えた。


****


「カイン私のお腹に注目してほら出るよ」

「これは・・これがシンジの魔力なのか、俺でも感じるぞ」


「凄いでしょう。先日この子の名前が決まってから放出される魔力が更に増えてもう私を超えているわ」

「ピリカ、親ばかにも程があるだろう、お前を超えるなら宮廷魔法師も超える魔力量だぞ」


「鈍感なカインが感じられる程の魔力量よ、シンちゃんは大魔法使いになるわ」

「まさか魔王とかじゃないよな」 

『バシーン』


 頬を赤く腫らしたカインが部屋を出た翌日俺は異世界に生まれた。



 ザンズボーン王国辺境伯で大剣豪カインザーム・アークライトを父に、次男シンジ・アークライトとして異世界にデビューした。

 母は元冒険者で冒険者時代はという二つ名で呼ばれていたようだ。

 長男のフェルンは俺の3歳上で剣と指導者の才能がある。


 異世界デビューした俺だったがピリカのお腹の中にいるときと殆ど同じことを繰り返している。

 魔力枯渇は1日30回生まれてから10回の3分の1になった分魔力操作の精度が上がった。


 ピリカがおしめを変えながら赤ん坊の俺に話しかけてくる。

「シンちゃんは大きくなったら何になりたいの貴族?」

「ブーブー」


「あら貴族は嫌なの、なら宮廷魔法師?」

「ブーブー」


「もしかして冒険者?」

「ダーダー」


「カイン大至急来てしんちゃんが凄いの」

「今度はなんだよバカ親が・」 『パシーン』


 カインの頬は毎回いい音を響かせる。


** シンジ1歳 **


 今日は教会で洗礼を受ける日だ。 この世界では1歳になると教会で女神の祝福を受け一つから二つスキルを授かるようだ。

 3年前の兄フェルンは剣士と指導者だったので俺にはそれ以上のギフトが有るのではと期待が大きい。


「では次、シンジ・アークライト様前に」

 神官が祭壇で俺の手を取り透明な大きな玉の上に乗せた。

 大きな玉が輝き間もなくすると光が収まると神官がカインを呼んだ。


「カインザーム様珍しいことにこの子にギフトは有りません。 スキルは授かりませんでした」

「そんなバカな事が有るか、もう一度調べてみてくれ」

「間違いではございません。 魔力も御座いませんし、神は嘘を尽きません」

「・・・・」


 帰りの馬車で肩を落としたカインにピリカが話しかける。


「何落ち込んでるのカイン、シンちゃんはギフトが無くても凄いのよ、なんせ私たちの子供だもの」

「スキルも魔力もないんだぞ、勉学に秀でているのか」


「スキルは分からないけど魔力は抑えてるだけよ、ねえシンちゃん」

「うん」


「しんちゃんは魔法は使えるの」

「わかんない、やってみゆ」


 軽く指先に小さな火を出した。


「でたー」

「凄い1歳で教えもしない魔法を使うとは魔王か」

『パシーン』



** シンジ3歳 **


「お父さんお願いがあります」

「なんだ、言ってみろ」

「大剣豪であるお父さんの剣の型を見せて欲しいんですが」


{真向斬り} 

{右袈裟斬り}

{左袈裟斬り}

{右逆袈裟斬り}

{左逆袈裟斬り}

{右一文字斬り}

{左一文字斬り}

{突き}


「これが基本の型だ」

「力強く美しくて、お父さんがとてもかっこいいです」


「大そんなに恰好良かったか、シンジ何か欲しい物はあるか」

「毎日外を走って、素振りをしたいのですが」


「騎士団の演習場ならいいぞ」

「有難うございます明日から走ります」


 屋敷に隣接する演習場で翌日から俺の肉体の鍛錬が始まった。



** カインザーム執務室 **

 

 騎士団長のラガープがカインザームを訪れた。

「カインザーム様、坊ちゃんの件でお話が」

「息子がどうした、フェルンかシンジか」


「シンジ坊ちゃんの方ですが、異常すぎます」

「ラガープ確かにシンジは出来はいいが異常とはどういう事だ」


 ラガープはシンジが演習場を走るというので団員を2名つけて見守らせた。

最初は3歳の幼児にしてはしっかり走るなと思っていると、団員が身体強化を使ってもついていけなかったと話した。


「しかもですよ、1週1㎞ある外周を何週したと思いますか」

「そう熱くなるな、で、何周したんだ」


「100周ですよ100周、3歳の子が100㎞を2時間ですよ、鍛え上げられた団員達より速く長い距離を走るんですよ信じられますか。 

 間違いなく騎士団長の私より速いです」


「そうか、ある程度の予感は有ったがそこまで凄いのか、有難うラガープ教えてくれて、それとシンジの事は全て内緒だ団員達にも伝えておけ」

「ハッ、かしこまりました」


 その日の夜カインとピリカに呼ばれた。


「シンジ親子の中で隠し事は無いよな」

カインが俺に問いかけて来た。


「隠すつもりは有りませんでしたが、伝えてない事が有ります。 ごめんなさい」

「それはなんだ?」


 俺は前世の記憶が有る事。

 前世では全てに負ける弱虫だった事。

 新たな生では強くなりたいと願ったが何もスキルを授からなかった事。

 仙人の場所で強くなる為に修行した事。

 ピリカのお腹の中からこの世界での鍛錬を始めた事。

 カインとピリカの子供に生まれて幸せな事。

 将来はセイとモモの3人で冒険者になって世界を巡る事。


 俺の話を黙って聞いていたカインが口を開いた。


「なるほど前世の記憶を持って生まれる子はいると聞いたことが有るが、仙人とはなんだ? それとセイとモモは何者だ」


「仙人のオズノ様は元人間で、修行により人間の限界を遥かに超えた存在で、神様のような方です。

 センとモモはオズノ様の元で一緒に修行した魂の兄弟です」


「シンちゃんはすると使徒様という事かしら」

「そんなに偉くありません」


『俺はカインとピリカの息子、です』


****


 翌日から俺は騎士団50名と魔法師団10名の特別教官となって団員達と一緒に鍛錬する事になる。


「お父さんアークライト家は辺境伯にしては規模が小さいのですか」

「違うと言いたいが、そうだな国内の男爵家よりはるかに貧乏かもな」


 サンズボーン王国の北の守護神として辺境伯としてアイニーの町3,000人の領主をしているが、領地はこのアイニーの町だけで寄子の貴族もない。


 アイニーの町は夏でも頂の雪が消えない山々に囲まれた盆地というより直径30㎞のクレーターのような真ん中に町が有り、山々が天然の城壁になっている。


 わずかに南の方角に山脈の切れ目があり1本道で隣町へ続き、更に400㎞先の王都への街道となっていた。


 産業は農業がメインだが自給自足に近く、国への税金は東側の山の麓に広がる森に魔物が生息しているので、魔物討伐で得た魔石や部位等が当てがわれていた。


「お父さんダンジョンは無いの」

「一つ有るがスライムだけのダンジョンでほとんど金にならないぞ」


「今度、魔物狩りかダンジョンに挑戦してもいい?」

「5歳になったら許可しよう」

「わかった約束ね、それまでに強く成っておくよ」



**2年後演習場**


「そのまま全力で走る。 緩めたら駄目だよ残り50㎞ハイ全力を維持」

「無理です死んでしまいます」


「大丈夫死んだら今より強く成れるから」

「鬼~子鬼が~ヒィ~」


「我慢だよ、絶対我慢、溺れる迄我慢、あと20分で1時間それまで我慢」

「〇▽◇が溺れました~」


「団長、人工呼吸お願い」

「〇▽◇自力で回復しました」

「団長の人口呼吸は要りません絶対に」


 騎士団も魔法師団も泣きながらも鍛錬の成果が表れ始めていた。


 

 



 

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