第3話 修行の仕上げ

 前世だけでなくここでも俺は落ちこぼれていた。



**火炎修行**


「この修行は炎の道を200ⅿ歩くだけの修行じゃ」

「歩くだけってオズノ様、俺には焼死する自分しか見えませんが」


「修行鍛錬というものはそういうものだ」

 確かに水の中も地中も普通では考えられない事をやって来た。 なら俺でも出来るようになるのか。


 モモ・セイ・俺の順番で炎の道に挑戦していく。


  オズノ様は簡単に炎の道と言ったが道じゃない。 目の前に有るのは幅も高さも20ⅿは有る炎の壁?塊?わずかな隙間もない炎が200ⅿ続いている。


『オン ソラソバティエイ ソワカ』

 モモは真言を唱えながら炎の中に歩みを進めていく。


 モモは炎を操り炎の壁に200ⅿのトンネルを作り自らの体を白い龍に変えて進んで行き炎の道を渡り終えた。


「お見事!! モモ今までよく頑張ったのう、ここでのモモの鍛錬は終了じゃ、今後は己自身で考えながら鍛錬に励むがよい」


「有難うございます。 オズノ様」


『ゴギャギギ……』

〈 ナマサマンダバ サラナン トラダリセイ マカロシヤナキャナセサルバダタアギャタネン クロソワカ 〉


 俺がモモを羨ましく思っているとセイも真言を唱えながら炎の中へ入って行く。

 

 セイの姿は大きな身体は、金属のような筋肉をまとい更に大きくなり、いつもやさし気な表情は鬼の形相で、大股でゆっくり炎の中を歩いていく。


 外から見てるとセイは燃えながら歩いているように見えるが、炎の道を渡り切ったセイは炎に焼かれる鬼にそのものだった。

 『 ガッ 』 セイの気合が響くと、炎は霧散しいつものやさしい表情のセイが立っていた。


「見事じゃセイ!! 今までよく頑張ったのう、ここでの鍛錬はモモと同じで終了じゃ、今後は己自身で考えながら鍛錬に励むがよい」


 セイとモモが卒業? 羨ましい? 俺はどうなる? なんか頭の中がグシャグシャだ。


「次はシンジじゃ、乱れた心ではこの道は渡れんぞ」

「オズノ様、無理です、加護のない俺には絶対に渡り切る事が出来ません」


「シンジお主はここへ何しに来たのじゃ、前世の自分の殻を破りに自分で望んで来たんだろう。

 それでよいのかシンジ」


 確かにそうだ、ダメ人間を卒業するために土下座をしてここに来た。


 オズノ様は無言で炎の中に入って静かに歩いて進んでいく。

 外から見るとオズノ様自身は焼かれているようだけどいや少し違う。 炎と同化しているのか、間もなく激しく燃える炎の道をオズノ様は静かに渡りきった。


「儂は加護を持っておらんぞシンジ、それでも渡り切ったぞ」

「それはオズノ様だからで、俺には無理です」


「シンジその言葉を前世で何度使い、何度諦あきらめた」

 オズノ様の言葉は雷のように俺の心に鳴り響いた。



『オン ギャクギャク エンノウバソク オランキャ ソワカ』


 精神統一をして真言を唱えながら炎の壁に歩いて進む俺に、炎は容赦なく襲い掛かって来る。

 いける不思議と熱くない、ただ俺身体が焼ける匂いがするだけだ。


 『ギャーーー』慌てて炎の中から飛び出した俺にモモが水をかけ、治癒の術で大火傷を癒してくれた。


「ありがとうモモおかげで助かったよ」

「大丈夫シンジ、応援してるから頑張ってね」

「ギャウゴギ」(ガンバレシンジ)


「モモお前とセイはおのれの修行をしろ、シンジの事は儂が見ておるから大丈夫だ」

 セイとモモが見えなくなるとオズノ様が俺に、


「なあシンジよ、モモは炎と真逆の性質である水をうまく使い、セイは炎にすら負けない強靭な肉体を作り上げ炎の道を渡り切った。

 シンジはどうやって渡るつもりじゃ」


「ハイ、【心頭滅却すれば火もまた涼し】と申しますように精神統一して渡り切ろうと思ってますが」

「よい心がけじゃ、儂が目指すところもそこじゃ。 そしてお主も先ほどの精神統一出来てたであろう、熱さは感じたか」


「熱さは不思議と感じませんでしたが」

「そうじゃろう儂でも焼かれるからな、シンジお主は今までどうやって水の中で呼吸し、土砂に強烈に圧迫されながら今生きておるか考えろ、既にお主は前世では超人のレベルであろう。

 モモもセイも己の術で潜り抜けたがシンジはどうする、超人シンジ考えるのじゃなぜなぜ身体が燃えるのかを」


 それから俺は考えたけど分からないのでとにかく試した。俺が使える水遁の術で全身を水で覆い挑戦してみるが俺程度の術では20ⅿも進めない。

 セイの様に身体強化で挑んでみても同じく炎の道序盤で焼かれてしまう。


 このままでは駄目だ、悩み続けた俺は魂力も使いながら身体強化を最大限にして水中に潜り水の操作を繰り返し自分自身が満足する成果を出せるようになった。


 火炎修行を初めて間もなく2年、セイとモモにはずいぶん遅れを取ったが今回は行けるはず。


『オズノ様お願いします』


 目の前に依然と同じように200ⅿの炎の道が現れた。

 水遁の術で身体強化された俺を覆い炎の道を歩き始めると、前回焼かれた20ⅿは問題なく通過した。

 

 まだ余裕だいける、50ⅿ過ぎて身体に纏った水が物凄い勢いで水蒸気となっていくが問題ない。 強化された身体にまだ熱は伝わってこない。


 100ⅿに差し掛かったところで、オズノ様に強引に炎の中から引きずり出された。

俺の前身は焼けただれ既に皮膚と呼べる場所は何処にも残っていなかった。


 治癒の術で全身の火傷は治ったが俺は立ち直れなかった。

 あんなに努力したのに、結果は変わらなかった。 

 人生何十回目の挫折だろう、涙が止まらなかった。


 草むらに倒れ込んで泣く俺に誰も声すらかけてくれない。ただ、涙で霞んだ緑の葉が揺れているだけだ。

 見ると揺れてる葉っぱに同化色で気づくのが遅れたが虫が這っていた。


 『あの時の炎の中を歩くオズノ様と葉っぱの上を這う虫が一緒だ』


 もしかしたら自分自身で炎と同化できれば熱くないのか、でもそんなこと出来るのか?

 いや出来る地中で同じことをやってる。魔力を土砂と同化させて土砂を操作した。


「オズノ様、もう一度鍛錬してから挑戦したいのですが」

「ここでの時間は無限じゃ納得するまで鍛錬に励むがよい」



 一人になった俺は枯れ木を集めて火をつけると直ぐに燃え上がった。

 燃え上がる炎を見つめ炎に魔力を流してみると、まさか思った以上に簡単に出来た。

 魔力を放出して魔力操作するより、炎をとおしてからの魔力操作の方が簡単なくらいだ。 親和性という奴か。


 今までの魔力操作はこう動けと意識していたが、まるで自分の手を動かすように意識しなくても思ったとおりに炎を操る事が出来た。

 更に身体全体から魔力を放出しながら炎をイメージするだけでイフリートのような炎人間になった。


『ノウマク サンマンダバサラダン センダマカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン』


 不動明王の真言が俺の魂に刻まれた。

 

 

「オズノ様起きておられますか」

「どうしたシンジ悩みの相談か」

「見ていただきたい物がありまして」


 夜中にオズノ様を連れて火炎修行の場所にいく。


「オズノ様火炎修行の成果を見ていただきたいのですが」

「ほう何か掴んだようじゃの、よかろうみせてみろ」


 縦横20ⅿ長さ200ⅿの赤く燃え上がる炎の道が立ち上がった。

 俺は先ほど授かった真言を唱えると、炎の道は3倍の大きさになり、色も青と白になった。


 ゆっくりと青い炎の中を歩いていくと、炎たちがじゃれるように俺に纏わりついてくるが熱くない。 逆に愉快な気分になる。

 200ⅿの道を笑顔で渡りきるとオズノ様が待っていて、


「見事じゃシンジ不動様の加護を得たか、おみそれした」


更に、セイとモモも見ていたようで手を上げて喜んでくれた。


** 翌日 **


「シンジそろそろ転生しても良いのではないか?お主はまだまだ未熟者だが転生先でも修行鍛錬は出来るはずじゃ、此処(仙人界)での修行は終わりじゃ」


「そうですよね当初違う星に転生しても直ぐ死なないように力を付ける事が目標でしたから、確かに頃合いですかね、セイやモモと別れるのはつらいですが仕方無いですね」


 俺はセイとモモに10年間の感謝と別れを告げた。驚いたことにモモの別れの涙は予想していたがセイが声を出して泣いたのだ。

 そのせいかどうか分らないけど俺も涙が溢れて来て、結局しばらく3人で抱き合いながら声を出して泣いた。


「ギャギャギャーゴゲゴ」(俺もシンジと一緒に行く死んでもいく)

「オズノ様私もシンジと一緒に行きたい」


「無理じゃシンジはお前たちと違う定めの人間じゃあきらめろ」

「ギャゴーギギガゲ」(シンジと俺は一緒にいる運命だ)

「私も運命を感じます。 オズノ様なんとかしてください」


 オズノ様は渋い顔をしながら、首にかけていた大きな数珠を手に取って目を閉じた。 しばらくすると、


「一緒には行けぬが同じところに行くことは出来そうじゃ、それで我慢しろセイ、モモ」

「ギャオ」

「ハイ」


「オズノ様、ほんとにありがとうございました。 御恩は一生死んでも忘れません」

「セイ、モモ先に行って待ってるから」


次の瞬間俺の意識は飛んだ。そして気が付くと


 辺りを見ると真っ青な空間に人型の白いもやが見える。


「お前はこれから違う星に転生する。地球と同じような星で空気があり、3つの大陸に山や川があり、ダンジョンも有る、人間がおり、野生動物がおり、魔物等がおる」


「お前の記憶するラノベに出てくる異世界とよく似た星だ。では、転生させるぞいいか?」


「ハイ、お願いします」


いよいよ俺の転生物語が始まる。










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