第5話 みんなの嘆き


** シンジ5歳 **


「お父さん、お願いが有ります」

「なんだ言ってみろ」


「アイニーノ町に冒険者ギルドか信頼のおける商人の支店を開設して下さい」

「どちらも厳しいが理由はなんだ」


「アイニーノ町を発展させます。とりあえず人口を今の10倍、最終的に50万人を目指します」

「簡単に言うが無理だろう、シンジなら出来るのか? どうすればいいんだシンジ」


 山からの鉱石と魔物素材を集めてとりあえず売る。

 余裕が出来たら鉱石製錬をはじめ産業を興す。

 その先も考えられるが今は元手の金を稼ぐ事を優先したい。


「シンジがやる分には問題ないか、とりあえず冒険者ギルドの手配に動くとしよう。

それと約束していたダンジョン探索は、最初俺とピリカと団員5名と一緒に行くからな」

「はい、よろしくお願いします」



** 1週間後 **


「シンジ、ここがアークライト領唯一のスライムダンジョンだ」

「何層迄あるんですか」


「わからん、30層迄潜ったが全てスライムだ。1階層から30階層までは全て一定の強さのスライムで、出てくる数が違うだけだ。

 20階層を過ぎるとフロア全体に隙間なくスライムがいる。

 30階層ではフロア全体隙間ないだけでなく5層以上になったスライムがうごめいているところまでは確認できている。

 31階層以降が有るのかどうなっているか分かっていない」


「シンちゃんそれでねスライムなんだけど、10%の確率で小さな魔石を落とすんだけど魔石1個が鉄貨2枚(20円)になるわ」

「わかった、今日はみんなで魔石集めだね」


 俺達8人が1階層に足を踏み入れて進むと、フィールド型の空間が広がっていて間もなくスライムが1匹現れた。


 右手人差し指から小さな火の弾を飛ばす。


 〖 一炎いちえん 〗

 一撃でスライムは消滅した。


 その後も〖二炎にえん〗 〖三炎さんえん〗火の弾の2連弾・3連弾


 十炎じゅうえん『ボボボボボ・・・・・』

 火の弾の十連弾で魔石が2個落ちた。


 〖二十炎にじゅうえん三十炎さんじゅうえん五十炎ごじゅうえん


「シンちゃんちょっと待って、魔石回収が追いつかないわ」

「ごめん、急ぎすぎたみたいで」


「シンジ坊ちゃん宝箱有りました。 ダンジョンで初めてみました」


 騎士団員が木の宝箱を持って来て、開けると低級ポーションが2本入っていた。


「シンジ次は20階層でスライムが半端なく増えるが進むのか」

「うん、最後まで絶対行く」


「シンちゃんあまり無理しないでね、魔力は残っているの」

「魔力は問題ないよ、ダンジョン内では少しも減らないからね」


 20階層に降りると聞いとおりに階層がスライムで埋め尽くされている。


〖 火遁:炎海えんかい 〗


 俺の足元から炎が階層全てに広がって、あっという間に野球グランド20面程が火の海になった。


「シンちゃん凄い、凄すぎ私にはこの広さを炎で埋め尽くすのは無理だわ」

「シンジどうする魔石の回収が全然追いつかない」


「みんなで頑張って拾いましょう」

「次は団員全員で来ないとな」


「宝箱ありました」「こっちにも宝箱です」

木箱の宝箱が2個見つかって中身は中級ポーションだった。


〖 火遁:炎海えんかい 〗

〖 火遁:炎海えんかい 〗

〖 火遁:炎海えんかい 〗


「30階層迄異常な速さで来たがこの先に進むのかシンジ。 この先は未踏だから何が出るか分からないぞ」

「それでも行くよ」


 30階層は階層全部に俺の背より高くスライムが積み重なって蠢いている。


〖 火遁:大炎海だいえんかい 〗


 俺以外の7人が金縛りにあったように動かない。

「みんな、魔石拾うよ」


「マジックバックが一杯でもう入りません」

「こっちもです。 俺のもです」


 団員3人が身に付けていたマジックバック(小)がそれぞれ満杯になったので、スライムの魔石拾いを止めて魔石を踏みしめながら奥に進む。

 31階層に降りる階段の手前に銀色の宝箱が有り、開けると中には白金色の剣が入っていた。


「これはミスリルの剣だな、さすが銀の宝箱だ」

「シンちゃん今日はこれで帰りましょ、魔石も十分拾ったわ」

「うん、下の階がどうなってるか覗いたら帰る」


 階段を下りて見えた31階層は、前世テレビでみたアフリカのサバンナのような景色が広がってる。


「なんだこの階層は広すぎるだろう、空と太陽まであるぞ」

「これを見ちゃうと次にこのダンジョンに来る楽しみが増えますね」


「そうだな今日は残念だが帰ろう、この階層を攻略するには準備が必要だ」

「おとうさん、この広さなら団員全員連れて来て走らせたら鍛錬の成果が上がりそうですね」


「坊ちゃん、悪魔ですか・・・俺は死んじゃいます」

 ぼそりと団員の一人が呟く。



** 翌日 **


「お父さん昨日のスライムの魔石何個ありましたか」

「重さで換算して約30万個だな」


「1日金貨600枚(600万円)ならそれなりに稼げますね」

「シンちゃんそれは無理よ、毎日何十万個もスライムの魔石が市場の出たら値段が付かなくなるわ。 小出しにしていくしかないわね」


「そうだよね、そこまで考えて無かった」

「でシンジはダンジョン攻略どう考えてるんだ」


「マジックバックを貸してもらえれば一人で行こうと考えてました」

「さすがにシンジ一人はまずいだろう」


「でもお父さん31階層迄行くのに誰かと一緒だと時間に無駄がありすぎます」

「とは言ってもな、シンジ一人は心配過ぎる」


「お父さん、俺が剣で団員50人を3分以内に倒したら俺の単独行動認めてくれませんか」

「シンジうちの騎士団は数は少ないが精鋭だぞ、それに最近はお前に鍛えられて腕も随分と上がって来てる。 それを5歳の子供が50体1で3分で倒すなんて無理だろう」


「それじゃ1分以内で倒せたら家宝のマジックバック(大)を俺にくれませんか」

「あれは先々代が隣国との戦争の際、敵の総大将の首を上げた事で当時の国王から頂いた物でこの国に3個しかない内の1個だぞ」


「お父さんは5歳の俺に自慢の騎士団50人が1分で負けると認めてくれるんですね」

「いやそれは、分かったその条件飲もう大人を甘く見るなよ。シンジが負けたらダンジョン探索も無しな」

「カイン、あなたこそシンちゃんを甘くみてるわ」


*****


「シンジ坊ちゃん剣の勝負で魔法は無いんですよね」 「うん」

「俺達50人で誰か一人でも1分持てばいいんですよね」 「うん」


「シンジ坊ちゃんは剣の鍛錬は何をされたんですか」 「素振りの型稽古」

「俺たちが勝ったら地獄の鍛錬中止でいいですか」 「いいよけど負けたら倍ね」


「よしみんな絶対勝つぞ、最悪誰か一人でも1分無事でいればいい、相手は剣の素人だ。 勝ってあの地獄から抜け出すぞ」


『オオオ~ッ』  団員50名の声が空に響き渡り、ラガープ団長が指示をだす。


「お前たち足の速い5人は隅に散って1分間だけでいいから全力で逃げ回れ」

「はい、逃げ切って絶対あの地獄から解放されます」


「他の者は攻撃は考えるな防御に徹しろ盾を持て目標は一人2秒だ。2秒先に明るい未来が幸福が待ってるぞ」

『オオオ~ッ』 


 団員達も配置についたようなので俺は木刀を持って構えピリカを見る。


『それでは只今から模擬戦を始める、制限時間は60秒』

『  』 

 開始の銅鑼がなり俺は遠くに散った5人から狙う。


『 ダッバッバババン 』

 外周の5人を倒し更に加速して40人の壁に体当たりすると半分の20人が吹っ飛びうめき声をあげている。

 驚いて動きの止まった残りの20人も次々に木刀で打ち据えて、最後のラガープ団長を蹴りで倒すと立っているのは俺一人になった。


『それまで、時間27秒、勝者シンジ・アークライト』


 ピリカのヒールを受けて倒れていた団員達が立ち上がる。


「シンジ坊ちゃん、さっきの信じられないスピードは何ですか」

「身体強化しただけだよ」


「じゃ今までは身体強化なしで俺達と走っていたんですか」

「うん、必要なかったからね」


「それより明日からは基本鍛錬倍の約束守ってね、お父さんもだよ」


 全員が肩を落とし黙り込んだ。


「シンジ俺は無しでいいだろう」

「領主のお父さんには先頭に立ってみんなを引っ張ってもらいます。 例外はありませんよお父さん、あっお母さんもね」


「俺は、なんて約束をしてしまったんだ・・・」

「なんで私まで・・・」
















 

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