第7話 女神モイラー

 目の前のモイラー様は美しい、とても美しい、これが理想の女神さまと言っても間違いないと断言できるほど、荘厳で美しい。

 ただし言動は悪魔のようだ。


「この鍛錬の目的は物理攻撃に対する耐性を得る事と、剣術のマスターですわ。

 合格条件は、攻撃を受けても怪我をしないで、気を失わない事、あとは血反吐をはかない事くらいですわ」


 なぜかモイラー様は容姿が変わっただけでなく話し方も変わっている?

 


「モイラー様の攻撃を受けた時点で俺は死ぬんじゃないでしょうか」

「大丈夫ですわ、シンジさんが死なないように手加減は当然いたしますもの」


 モイラー様の姿が高速の動きでぶれて見えた瞬間、すでに俺の両足は折れていてまともに逃げる事も出来ない俺の腹部に高速の蹴りがめり込んだ。


『ウグッ』

 俺の口から見た事もないような色の液体が流れ出る。


「シンジさん身体強化しても良くてよ、そうじゃないと死んでしまいますわよ」

「・・・・」

 声が出せない、呼吸が出来ない、意識が遠くなる。


「口で呼吸できないくらい問題ないはずですわ、エイ」

 モイラー様が軽い掛け声で刃引きした剣を振ると頭蓋骨をたたき割られた。


「少し危ないかしら」

 モイラー様から俺に風が吹くと俺は傷一つない身体になって立ち上がる。


 ずっと攻撃を受けて瀕死になって蘇生されるの繰り返しだ。


「シンジさんこの訓練の意味ご存じですよね。 もう一度確認のため言いますわね。

 剣は私の攻撃を受けて反撃可能なら遠慮はいらないので私に攻撃してください。

 そして私のパンチや蹴りは、肉体を強化して相手の攻撃を弾くか、耐えて素早く次の攻撃に備えるのよ、わかってますわよね」

「はい」


「では参りますわよ、エイ、エイ、エーイ」

 軽い、掛け声は気が抜ける程軽いのに。


『バキ、バキ、ドゴーン、グェ』

 重い、受けるダメージは崖から落ちるより遥かに重い。


「少しだけ進歩しましたわねシンジさん、さあご飯にしますわよ」

 どこが進歩したのか自分ではわからない。


「セイとモモは剣に進んでますわ」

「二人とも物理耐性の鍛錬は合格したんですか」


「そうですわ、セイさんは直ぐ合格しましたし、モモさんはどうしても体力的に不利ですから少し苦労しましたが、今は剣でセイさんを追い越しそうですわ」


「どうして俺だけ駄目なんでしょう、モイラー様何かアドバイスいただけませんか」

「セイさんモモさんはそんな事一度も聞きませんでしたが、けど、お教えしますわ自分の持っているものを全部使い切ることですわね」


「有難うございます。 考えてみます」

「そうですわ、よく考えてみる事も必要ですわ」


 物理耐性は今のところどんなに攻撃される部位を強化してもダメージをもらってしまう、相手の攻撃力が高くて俺の防御力が低い、防御力をあげればいいんだけど現状では無理だ。


 どうやったらプラスマイナス0以上になるかだ、攻撃は最大の防御は相手の言葉だし、そうだカウンターを使えばどうだろう。


 相手から攻撃を受ける部位の内側から魔力弾を出すして威力を相殺したら行けそうな気がする。

 魔力弾を全身どこでも出せるようにすればいいんだ。

 直ぐに練習だ、魔力操作の一環だからすぐ出来るはず。


 セイとモモに負けてられないからな、とりあえず相手の攻撃を相殺させる方向でやってみるか、剣はそれが出来てからだな。



***********



「エイエイエイ、」『キン、キン、キーン』


「見事ですシンジさん、合格ですわ」

「モイラー様有難うございました」


「剣での魔力や闘気を使ってのフェイントもみごとでしたわ。

 これで、ギリギリあの二人に追いつきましたわね」


「セイとモモも術の開発に苦労しているんですね、それは何とか行ける気がします。

モイラー様次の鍛錬よろしくお願いいたします」


「分かった、では行くぞバカシンジ」

「あっ婆さんになった、若い方が良かったのに」


「婆さんではないモイラーだ、女神だ、分かったかカス・バカ」

「申し訳ございませんでしたモイラー様、でもなんで二つの容姿を使われるのですか」


「身体を使うのは若い方で魔法を使うときは年季の入った身体のほうが効率がいいんじゃ分かったかバカシンジ」

「なるほど」

 言葉使いが変わるのは何故かも聞きたかったが聞けなかった。


 モイラー様に付いていった先の部屋にセイとモモがいた。

「セイ・モモ会いたかったよ」

「シンジ小っちゃくなったね」

「ギャウガー」 (シンジ顔が良くなってる)


 3人で抱き合って喜びながら微妙な違和感を感じた。


 俺がモイラー様の処に来て間もなく5年今年で10歳だが、セイもモモもオズノ様の処で別れた時より若くなって角が無くなったのは何故だと聞いたら、シンジの方こそ若くなって顔も変わってるのは何故だと聞き返されたので、


「まいっか、3人とも魂はあの時のままだし」

「そうだよモモはモモ、シンジはシンジ」

「ギャイギャイ」(セイはセイだよ)


「3人とも魔法の技を確認しあってお互いが出来るようになったらこの修行も終わりじゃ。

 セイとモモは技の発想に苦労しているようじゃが、それだけは他はカスだけどシンジが得意だから一緒にやると良いぞ」


「ハイ」「お願いねシンジ師匠」「ギャギギガ」


モモにクラスター爆弾をモデルに追尾する魔法を教える。

俺が火球を1個飛ばして壁に当たる直前に20個に分かれた火球が壁にぶち当たり燃え上がる。

「ほう、相手を油断させて一網打尽にするような魔法じゃな面白い」


モモがやってみると

水球が飛んで行って壁にあたる直前に数百の氷の礫が壁一面に突き刺さった。

「カスシンジの10倍凄いな」


セイにはレールガンをイメージした魔法を提案した。

「筒をイメージして圧縮して堅くした岩を加速させるんだけどこんな風に」

マッハ7で硬石が飛んで行って壁に大穴をあけた。


「なかなかの威力じゃのドラゴンでも一撃で倒せるじゃろな」


 セイが俺の真似してやると、人の胴体程ある弾丸を作り出して打ち出した。

『ドシュン』

 打ち出された鋼鉄の弾丸は推定マッハ10で飛び壁にぶち当たる。

『ズゴーン、ズーンドドーン、ドゴゴゴゴーン』


 俺だって魔力をもっと込めればその程度と思っていると、


「馬鹿者壊れないダンジョンが壊れたじゃろが、合格だ3人とも合格卒業じゃ」

「有難うお婆さん」

「ギャギャギャギーン」

「モイラー様ありがとうございました」


「それとオズノ殿から預かったものがあるこれじゃ」


 モイラー様は刀と瓢箪を取り出してセイには斬馬刀・モモには忍者刀が二振り・俺には日本刀をくれた。

 瓢箪ひょうたんはアイテムボックスと同じような物で、外に出しているより体の中がいいとモイラー様が3人の身体に仕込んでくれた。 さすが女神様。


「出し入れするときの言葉を決めるのじゃシンジ」

「それじゃ入れるときはヒョウで出すときタンで」


「今まで5年、短い間じゃったがよく頑張った儂からは卒業記念に服をやろう、3人とも着ている物が小さくて見えているからな。

 小さいのが見えてるシンジはどんな服がいいんじゃ」


「俺はこれから大きくなるんだから構わないで。 着る物だったら近い将来冒険者をやるからバトルスーツがいいな」

「よかろう」


 モイラー様からの風を受けると俺には黒、モモは濃い赤、セイは濃い青の革製のバトルスーツが3人に着せられた。

「その服は身長が伸びても合わせて大きくなるし、お前たちの動きも邪魔せんし物理耐性も高いぞ」


「セイかなりかっこいいな、ターミネーターのT-800みたいだ」

「ギャグガギゴー」(そんなに俺イケてるか)


「最後にこいつも一緒に連れて行ってくれないか一人っ子でさみしがり屋じゃ」

 大きな白虎だ。


「名前は未だ無いからつけてやってくれ」

 セイとモモが同時に俺をみる。


「それじゃ白いからハクで」

 ドクンと俺の魂がハクに入った。


「きゃ~かわいい」

 モモがハクに抱きついて撫でまわしている。


「ハク良い名と魂じゃのう、ハクはダンジョンマスターのスキルもある。

シンジこのダンジョンをハクとお前の好みに作り替えて街づくりに役立てるがいいぞ」


「モイラー様、婆さんなんて言って申し訳ございませんでした。

アイニーの町にいつかモイラー様の教会をたてますので、出来たら遊びに来てください」


「ホッホッホッホッ楽しみにしておるよ、それでは妾からもう一つ。

3人に貸してるシンジの千里眼、モモの魔眼、セイの鬼眼は返さなくてよいぞ」


「さすが世界一美しい婆さんだありがとうございます」

「ギャーゲガガ」

「女神様ありがとうございます」


「それではモイラー様5年間有難うございました。この御恩は一生忘れません」

「4人で良い国を造るのだぞ元気でな、人間界が飽きたら儂らの世界に来い」

??

 俺達4人がダンジョンから出ると、このダンジョンの31階層は消えた。


******


「ただいま~兄弟4人で今帰りました」


「お帰りシンちゃん、あら大きいこの子がセイ君ね、綺麗なあなたはモモちゃんでしょう娘が欲しかったの、・・・でこの聖獣様も?」

「ハクっていうんだよ、さっき俺たちの兄弟になったんだ」


「シンちゃんと兄弟ならハクちゃんも今日から私の子供ね、でも屋敷に入るには少し大きいかもね、小さくなれたりするハクちゃんは」


 驚いた事にハクは少し大きめの猫くらいになった。


「すぐ歓迎会の準備するからみんな中に入って、ハクちゃんは私が抱っこしていくね」



 

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