第2話 芽吹きの世界を知る
その小さな枠の中には、子どもたちの未来が揺らめく光として映し出されています。けれど、カゲロウはすぐに眉をひそめました。
そこに映っていたのはカチコチに凍り付いた一筋の細い「レール」のようだったからです。
それは、寄り道もつまずくことも許されない、誰かが決めた「正解」という名の足跡でした。
「これは……本当の明日ではない。みんなが恐れている『影の形』」
カゲロウは、指の枠を静かに下ろしました。
みんなが「あの子みたいになりたい」「失敗したくない」と強く願いすぎるあまり、未来が重たく固まり、たった一本の狭い道に閉じ込められていたのです。
「本当の明日を観測するには、もっと広い世界を見なければならない」
カゲロウの心に一つの名が浮かびました。『芽吹きの世界』――。
それは太陽に向かって無数の芽が枝を伸ばすように、可能性が無限に広がる場所。 虚世界が、記憶の重みで時間の底へと深く沈んでいく場所なら、『芽吹きの世界』は、まだ誰の足跡もついていない空の果てに浮かぶ光の庭。
そこでは無数の「明日」が、生まれたてのしずくのように光り、風に揺れているのです。
けれど、その世界を見るには、沈んだ太陽が再び顔を出し、夜と朝がとけあう、ほんの一瞬だけの「夜明け」を待たねばなりません。
そして、大地を離れ、星に手が届くほど空に近い「一番高い場所」へ行かねばなりません。
幾重にも重なり合う「もしも」の枝を観測することは、カゲロウにとっても、かつてないほど難しい挑戦になるでしょう。
「夜明けを待とう。そして、空に一番近いあの場所へ向かおう」 カゲロウはもう一度、不安に揺れる子どもたちを振り返りました。
その瞳には、静かな決意が宿っています。
「君たちの本当の明日を探してくるよ。誰にも決められていない、君たちだけの光を」
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