切 符
N
第1話 歳末感謝 1話完結
※ この作品は友人から直接聞いた話しです。
安アパートの狭いリビング。
無理くり入れた4人がけのダイニングテーブル。
私の前に座る 古き友人にお茶をだす。
懐かしい友人。
だが疑問もある。
この友とは それ程親密な間柄では無い。
まぁ折角訪ねて来てくれたのだ ちゃんともてなそう。
こうして面と向かって話すのも初めてだ。
気持ちが悪い とも なんか怖い とも思わない。
不思議な感覚。
私はその友人に聞いた。
「あのさ……どんな所なの?」
友人は「まぁ 質問してくるだろうな!」と言う感じで微笑んだ。
「う〜ん ………」
◆ 友人の話し。
気がつくと俺は四角い部屋にいた。
木製の長い椅子が並んでいた。
協会でよく見る椅子だ。
部屋の両サイドと中央は 人が通る分空いている。
入口の扉も木製で俺の後方にひとつ。
出口の扉は前方にひとつだけ。
この部屋には俺の他に数名いる。
年配の男性 女性。
俺と同世代とみられる男性 女性。
みな それぞれ少し距離をおいて座っている。
分かりやすく言うと バラバラに座っている。
俺は何の疑問も持たず とにかくただ座っていた。
どれぐらいの時が経ったか 出口の扉から1人の男性が出て来た。
黒いスーツに黒ネクタイ。
キチンと整った髪。
黒縁のメガネをかけていた。
公務員か?
メガネの男性が 座っている俺達を見回し。
「◯◯さん!◯◯ △△△さん!」
まるで病院で名前を呼ばれる感じ………。
呼ばれた年配の男性は 軽く手をあげ。
メガネの男性に連れられ 出口の扉に入って行った。
年配の男性は戻って来なかった。
また時間が経った。
今度は女性が呼ばれ 出口の扉へと入って行った。
女性も戻って来なかった。
その後 数人の人が呼ばれ。出口の扉に入って行った。
「▢▢▢さん!▢▢▢ ◯◯さん!」
俺だ!
俺も軽く手をあげ メガネの男性の元へと行く。
「こちらへ………」
と言って俺を出口の扉へと誘った。
中に入る。
暗闇だった。
灯りも無い。
目を凝らし 先に入った人達を探すが 見当たらない。
扉が閉まる。
完全に闇。
不思議だ!
俺とメガネの男性の回りだけ ほんのり明るくなった。
メガネの男性は俺に切符を見せた。
電車に乗る時に購入する切符。
現代の切符よりも多少厚みがある。
見た事は無いが。昭和の頃の切符はこんな感じなのかな?と何故か思った。
メガネの男性が事務的な口調で話しはじめた。
「この切符は死後 一度だけ戻る事が出来ます……もし会いたい方がいるのでしたら お一人だけですが戻ってお会いする事が出来ますが……使用なされますか?」
俺は驚きもせず メガネの男性に質問した。
「時間とかあるんですか?」
メガネの男性は切符の厚みを確認した。
「結構ありますね……1時間ぐらいだと思います」
俺は今更会いたい人などいない。
親?妹?友人?元カノ?
会ってどうする?
突然霊なんて現れたら 怖がられないか?
友人に会ってどうする?
大量にあるアダルトDVDを処分してくれと頼むのか?
元カノに会ってどうする?
今の彼氏とイチャイチャしている姿を見るのか?
死んでからも傷つくのは流石にイヤだろ?
俺は使用しません!と言おうとした時。
何故か お前の顔が浮かんだ。
たいしてお前とは親しくない筈なのに 不思議だ!
折角なので会って見るか!と思い 今 目の前にいる。
この古き友人は3ヶ月前に病で亡くなった。
知ったのは2か月前。
共通の知り合いからだ。
しかも他愛も無い雑談から知った。
当然 葬儀にも出席していない。
顔も亡くなった事を聞いてから思い出した程だ。
こうして霊として現れても 怖いとも何とも思わない。
ウワッ!久しぶり!俺の事覚えてる?
と言う感じだ。
古き友人の死後の話しは 面白かった。興味が湧く。
初めて聞く内容だ。
「三途の川は?」
俺は聞いた。
「俺は行ってないし 見てもいない……気がついたら四角い部屋にいたな……」
俺は古き友人に言った。
「ケーキあるんだが食うか?」
何故か前日。コンビニでショートケーキを買った。
あまりケーキなど見向きもしないのに……不思議だ。
「いいね ケーキ好きなんだ 何のケーキ?」
「イチゴのショート」
「賞味期限 大丈夫か?」
「昨日買ったんだぜ 平気だろ?」
ワンパックに2つ入ったショートケーキを冷蔵庫から出す。
封を開けて小ぶりのフォークをのせて 皿に盛る。
古き友人は美味そうにショートケーキを見た。
俺もケーキなんて久しぶりだ!
「コンビニのケーキだけど 美味いな!」
「ああ 美味いな!」
古き友人のケーキは手つかずだ。
「食わないの?」
「食ってるじゃん!」
俺の目には手つかずに見えるが 古き友人はシッカリと食っているのだろう。
「お前やっぱり気ぃ使いだよな!お茶が飲みやすい」
「熱々だと飲めないだろ?湯気が出るぐらいで 飲みやすい温度にしてんだよ!」
見ると お茶も減っていないが。
古き友人はお茶も美味いと言っている。
「あっ」と小声で発した。
「どうした?」
「そろそろ時間かも……」
古き友人は切符を俺に見せた。
日付が印刷されていたであろう感じ。
薄くなっている。
「そうか……」
話す事が無くても良い。
ただこの空間をもっと味わいたいと思った。
俺は古き友人に聞いた。
「線香あげに行くか?あと墓参り」
「やめてくれよ!そんな所に俺はいないぜ!」
「えっ?そうなのか?」
「新しい器に入る為に 色々やる事あるんだよ!仏壇とか墓とかにいる場合じゃないよ……」
「そうなんだ……絶対居るもんだと思ってたよ………お盆とか命日とかもいないのか?」
「切符を使用すれば来れるんじゃないかな……多分」
「そのメガネさんに教えてもらったのか?」
「イヤ なんか不思議だけど分かるんだよ」
「じゃあ切符使用しろよ!……俺 会いに行くぜ」
「いいよ!それに切符を使用すると なんか次の器に入るのに時間かかるんだよな」
「へぇ……せっかくポイント貯まったのに 現世に戻るのに使用しちゃった!みたいな事か?」
「そうそう!そんな感じ!多分な」
「淋しくないのか?家族とかに会わなくて……」
「全然 ! 言ったろ それどころじゃない!」
「家族とか悲しまないかな?」
「あっ!やめろよ 俺を悲しむとか会いたいとか……」
「なんで?」
「それ凄く迷惑!悲しむ会いたいって感情や想いって 俺達にしたら魔になって 新しい器に入るのを阻止してくるんだよ!足を引っ張るというかサ」
「そうなんだ」
「そうサ!だから これからお前の身内なりが亡くなったら悲しむな!笑って送り出せ!じゃないと行く場所に行けなくて ずっとウロウロ彷徨っちゃうからな!」
「おぉ分かった……」
古き友人は立ち上り。
「じゃ!行くわ」
「ああ じゃあな!」
古き友人は俺の前から姿を消した。
会社の事務所。
向かい会いに配置された事務机。
事務室には私と同僚の2人のみ。
同僚は普段は無口。
何故か雑談が盛り上がり 彼が話し始めた体験談。
2か月後に会社を辞めた同僚。
私と それ程親しくない同僚が話してくれた。
怖くない怖い話し。
切 符 N @thx1138thx1138
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