第11話 女子生徒に首輪を付けてトイレに連れ込む勇者

「⋯⋯⋯⋯動かない。硬い」


 コヨミがぐいぐいとドアノブを押すが動かないらしい。


(時間が経ち過ぎてて動かないんじゃ?)


「⋯先生、お願い」

「あ、ああ⋯」

(動くかなぁ⋯)


 ⋯ガチャリ⋯


 レイヴンの不安を他所に、手を掛けるとアッサリと動くドアノブ。


(この娘も非力なんだな⋯)


 レイヴンは如何にもインドアな雰囲気のコヨミが非力な事を疑わない。

 扉の先に有ったのは小さな部屋だった。


(地下へ続く階段とかじゃなくて良かった)


 レイヴンとコヨミが小部屋の中に入る。


「⋯隠し部屋に⋯隠しアイテム⋯」


 部屋の中央には台座が有り、金属の塊の様な物が有る。


「何だろう?⋯⋯⋯首輪?」


 首輪と、それに繋がった鎖だった。


「単なる首輪と鎖じゃないよね?」


 もしかしたら普通の物かも知れないが、こんな場所に隠してあるのだ。

 凡そ碌なものではないだろう。


「⋯えへへ⋯禁断の部屋に有った⋯秘密のアイテム〜⋯」


コヨミがハァハァしながら手を差し出している。


「え?今調べるの?もう閉館時間なんじゃ⋯。それにトイレも行きたいし⋯」


 コヨミが首輪を触った瞬間であった。


 ―――バタァァァン!―――

 

 背後の扉が自動で閉まる。


「えっ!」


 慌てて振り返るレイヴン。

 

 ガチャァンッ!


「きゃっ!?」

「今度は何っ!?」


 また前を向くと、例の首輪が⋯


「⋯せ、先生ぇ⋯」

「うはぁ、マジかぁ」


 コヨミの首に嵌っていた。

 どうやらトラップだったらしい。


「不用意に触るから⋯」

「⋯ご、ごめんなさい」


 レイヴンは首輪に繋がる鎖を持ってみる。

 巻き付いて来るかと警戒したがそうはならなかった。


「こっちは平気か?」

(⋯うへぇ、トイレ行きたいのに⋯)


 まさか閉じ込められてしまうとは。

 しかも今はもう図書館の閉館時間。

 下手をすれば明日までこのままかも知れない。


「どうしたものか⋯」


 レイヴンが扉を調べてみる。

 今度はドアノブを押しても引いても扉が動かない。

 

「⋯はぁっ⋯はぁっ⋯はぁっ⋯」

「大丈夫?」


 コヨミの息が荒い。

 もしや閉所恐怖症とか?

 レイヴンは首輪と鎖を調べてみる。


「首輪と鎖が繋がってるだけか」


 扉さえ開けば首輪をしたまま脱出出来る。


(絵面はヤバイけど)


 密室から首輪をした女子生徒と一緒に出て来る訳だ。

 助けに来て欲しいが誰にも来て欲しくない複雑な心境になる二代目勇者。


「⋯はぁっ!?はぁっ!?はぁっ!?」

「コヨミ?大丈夫っ!?くそっ!」


 コヨミが苦しげに声を荒げているので、首輪を外そうと試みる。


「駄目か⋯」


 力を込めても首輪は外せない。

 やはり魔道具の一種なのだろう。

 コヨミの首に嵌ったはずなのに継ぎ目が見当たらない。

 コヨミは首輪を抑えながら床にへたり込む。


「⋯な、なんですかぁ?この、気持ちぃ⋯」


 涙目になるコヨミ。

 顔を赤らめ息が荒い。

 レイヴンはコヨミの顎を持ち上げ首輪を調べ続ける。


「何か無いのか?⋯」


 鍵穴も無いので、何か細工が有って開閉してる可能性も考えてみる。


「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


 コヨミは荒い息のまま、レイヴンの股間部に顔を寄せる。

 かなり苦しそうである。

 

「今外すからっ!」


 レイヴンはコヨミの首の後ろ、鎖との繋ぎ目部分を何とか外せないが試してみる。

 ジャラジャラと鎖の音が響く。

 ⋯そんな時だ。


「⋯あむっ」


 コヨミがレイヴンの股間部で何かをしている。


 ⋯ジッ⋯ジジジッ⋯


 ―――と妙な音が股間からする。


「コヨミ?」


 レイヴンがコヨミの顔を覗う。


「コヨミッ!?いったい何を―――えっ!?」


 コヨミはなんと、ズボンのチャックのスライダー部分を咥え、チャックを下げていた。

 まだ最後の隔壁は破られていないが、布一枚隔てた距離に女子生徒の顔が有る事にレイヴンが青褪める。


「なっ!?何してんっ!だっ!」


 思わず腰を引くが、コヨミがガシリとレイヴンの腰に腕を回す。

 軽いドアノブすら動かせなかった筈のコヨミだが、何故か凄いパワーを発揮し身動き出来ない。


「⋯だ⋯だってぇ、先生ぇ⋯トイレ⋯行きたい⋯んでしょぉ?⋯こう、なったのぉ⋯コヨミの、所為、だしぃ⋯⋯⋯良い、よぉ⋯コヨミの、お口、おトイレに、してぇ⋯」

「何を言ってるのっ!?」


 レイヴンは慌てて鎖を引っ張る。

 鎖に引っ張られてコヨミの顔が股間から離れ⋯なかった。

 やはりこの首輪と鎖は不思議アイテム、呪いのアイテムなのだろう。 

 いくら引っ張っても鎖が伸び続けるだけだ。

 コヨミがレイヴンの腰をぐっと引き寄せる。


「まっ!待ちなさいっ!」

「⋯あぁ〜⋯ん⋯」


 まるで雛鳥が餌を強請る様に唇を広げ、舌を伸ばして来るコヨミ。


「どう云う事だっ!?此れはっ!?なんでこんな事をっ!」

「⋯多分⋯所持者の欲望を⋯被装着者に⋯強制する⋯呪いの⋯アイテム⋯はぁ、はぁ⋯だから⋯コヨミは⋯先生の、おトイレに、なるのぉ⋯」

「なんっ!だとっ!?」


 二重三重にショックを受けるレイヴン。

 トイレには行きたかった。

 しかしだからと云って、女子生徒の唇をトイレ代わりにする発想等無い。

 なので自分にそんな願望が有った事にも衝撃だ。

 コヨミはレイヴンの股間に鼻先を擦り付け、スンスンと匂いを嗅いでいる。

 そのオスの匂いにコヨミの脳が痺れ、下半身がビクビクと反応する。


「⋯気にしないでぇ⋯先生ぇ⋯此れは⋯コヨミが悪いのぉ⋯悪い子なのぉ⋯だから、ね?先生⋯悪い子なコヨミに⋯お仕置き⋯してぇ⋯あむっ」

「う」


 コヨミの唇が最後の砦を破ろうと突撃をして来た。

 此れを突破されたら終わってしまう。


「うおおおおおおおおおおおっ!」

「⋯ふぇぇ?」


 レイヴンはコヨミを抱えると、扉へと突撃する。


「ぬあああああっ!」


 蹴破るつもりで蹴りを叩き付けるとアッサリ開く。

 レイヴンとコヨミが隠し部屋から脱出すると、再びゴゴゴゴ⋯と本棚が轟音を立てて移動し、隠し扉を封鎖していく。

 しかしレイヴンにはそれを確認している余裕等無い。


「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 今までで生きてきて一番速度が出たのではないかと思う程の猛ダッシュ。

 残像を残しトイレへ直行。


「⋯あ⋯トイレで⋯されちゃう⋯の?」


 レイヴンに抱えられたコヨミが熱に浮かされた様に呟いている。

 女子校に突然転勤して来た若い男性教師。

 学園でも指折りの女子生徒達が取り合う程の男。

 実際にスマホで見た戦闘は正に規格外。

 そんな男に個室トイレに連れ込まれ、まるで便器の様に性欲処理に使われる。

 そんな妄想がコヨミの脳髄を占拠する。


「⋯コヨミは、先生⋯の専用肉便―――」

「違いますっ!」


 レイヴンが叫ぶ。

 鎖がいくらでも伸びる不思議アイテムな事を感謝するレイヴン。

 コヨミだけをトイレの外に置き直し、再び自分だけトイレへ駆け込み用を足す。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜⋯」


 事無きを得たレイヴンがトイレから出ると、元に戻ったコヨミの首から首輪が外れ⋯⋯⋯ていなかった。


「⋯せんせ⋯せんせぇぇ⋯からだが、熱い⋯熱いのぉ⋯」


 コヨミは手を胸とスカートに突き入れモジモジとしていた。

 むしろさっきより酷くなっていた。


「くっ⋯」

「だっこぉ⋯」

(そのくらいなら⋯)


 レイヴンはコヨミを抱き締める。


(これで、この後どうするんだっ!?)


 苦悩するレイヴンは思わず力いっぱいコヨミを抱き締めた。


「――――あっ⋯⋯⋯きゅぅ⋯」


 すると、コヨミの首がカクンと落ちる。

 どうやら興奮し過ぎた為に意識が飛んでしまったらしい。

 その時だ。


 ⋯ガチャァンッ⋯


「ハッ!?」

「⋯⋯はれぇ?」


 首輪が外れた。

 レイヴンは光の速さでコヨミから離れると、首輪と鎖を回収して図書館を脱出する。


「せんせぇ⋯もっと⋯コヨミに、ちょーだい⋯」


 とか何とか言ってる声が聴こえたが、無視してダッシュする。


「この鎖と首輪⋯危険だ⋯」


 ポプリ校長に渡して封印とかなんとかして貰おう。

 レイヴンはそう決意して校長室に駆け込んだ。


「此れはアレじゃな。所有者の願望を叶える呪いのアイテムじゃの」

「そ、そうですか⋯」


 コヨミと同じ見解にガチ凹みするレイヴン。

 自分は初対面の女子生徒をトイレ代わりに使いたいと思う鬼畜変態教師だったのだ。


「⋯うん?最初に触った者はどっちじゃ」

「⋯ええと、コヨミ、かな?」

「ふむ」

(すると、本来の所有者はコヨミ⋯あの女か⋯)


 呪いのアイテムはコヨミを核にして発動していた。

 所有者の隠された願望を叶える呪いのアイテム。

 だのに、レイヴンはそれを突破した。

 隠し部屋を突破した時に、◯◯をしなければ出られない系のトラップの前提⋯密室状態が解除された。

 それで術式がキャンセルされたのだろう。

 その説明を受けたレイヴンが複雑な思いを抱く。


(じゃぁ全部コヨミの妄想?⋯いや、尽くす系⋯て事か?)


 少々歪んでいたが、レイヴンの願望⋯あの時は早くトイレに行きたいと云う生理的欲求が強かった。

 それを叶えようとしてくれたのかも知れない。

 あんなのが、あんな大人しい女の子の欲望だなんて信じたくない。

 だからと云って、自分の隠された欲望だとも思いたくない。


「レイヴン」

「何です」

「その首輪と鎖、預かっておいておくれ」

「え?封印とかしてくれないんですか?」

「そんな大層な物でもないからの」

「恐ろしい体験をしたんですけど⋯」

「じゃからじゃ。お主ならその呪いのアイテムを力技でキャンセル出来る。お主に管理を任せるぞい」

「そんな無茶苦茶な⋯」

  

 自分は聖剣のレプリカを抜いただけの一般人、偽者の勇者なのに。


「⋯俺の願いは⋯平和な日常なんだよ?」


 レイヴンは首輪と鎖に話し掛けてみる。


「ん?」


 レイヴンがスマホを見る。

 勇者学園専用アプリをダウンロードしているので、学内ニュースが飛んで来たのだろう。


「な、なんだコレは⋯」


 その速報記事を見て思わずよろめく。


『二代目勇者の意外な性癖!?図書館から轟音を聴いて駆け付けた当記者が目撃したのは、女子生徒に首輪を付け鎖で縛ったままトイレへ連れ込む勇者レイヴン先生の姿だった!』


「おお、有名人は大変じゃのぉ」

「⋯どうして⋯」


 レイヴンはとぼとぼと男子寮に帰ると、ベッドに倒れ込む。


「⋯死にたい⋯」


 レイヴンは今日あった悪夢の様な出来事の数々を思い返しながら、深い眠りに堕ちて行った。

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ブレイバースタリオン うっかり抜いた聖剣をレプリカと信じる田舎の青年、勇者学園の教師となり女子生徒たちと修羅場ライフ 猫屋犬彦 @nennekoya777

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