第7話 保健室のベッドで襲われる勇者
無人の保健室に連れ込まれるプリム。
ベッドに座らされされるがままだ。
レイヴンはプリムの膝や肘等、激しい運動で擦り剥いた箇所をチェックしている。
そんなレイヴンをぼんやりと見つめるプリム。
(僕、敗けたんだ)
敗けた事は理解しているが、未だに実感が湧かない。
「これで良し」
保健室の先生が見当たらなかったので、勝手にだが消毒液や絆創膏を拝借した。
レイヴンの田舎の学校には保健医等居ないので、ヤンチャな子供達が怪我をしたらお世話をしてやるのもレイヴンの仕事だったからだ。
「着替えは無いの?ジャージとか」
レイヴンは今度はプリムの服を心配する。
こんなボロボロの姿では出歩けまい。
「どうしたの?まだ痛い?」
心配そうに覗き込んで来るレイヴンを見て、漸く敗けた実感が出て来た。
彼はずっとこんな調子だった。
プリムが全力で挑んでも、困った様な顔で受け流され続けた。
今も心配しかされていない。
「う」
敵ではない。
「うううっ」
全く相手にされていなかったのだ。
「うわぁぁああああああああああああんっ!」
泣いた。
泣き顔を見られたくなくて、目の前のレイヴンの襟を掴んで顔を埋める。
自分を負かした憎い相手の胸で泣いた。
それも悔しかった。
(⋯⋯⋯レイヴン⋯だったっけ?)
チラリと見上げると、レイヴンは困った様な顔をしながらも、プリムの背中を優しく撫でてくれている。
プリムの頭を優しく撫でてくれる。
「ううう⋯ぐずっ」
ひとしきり泣いたらスッキリした。
悔しさは残るが、恨み辛みは無い。
元々只の逆恨みだった事も理解している。
「ねぇ」
「何かな?」
話し掛けると優し気に応えてくれる。
「レイヴン⋯だっけ?」
「レイヴン先生な」
「レイヴン先生⋯」
勇者に成る夢は頓挫した。
だがまだ他にも夢は有った。
実家の再興である。
聖剣を抜けない子孫達は、迫害まではいかなくとも失笑の対象にはなって来た。
一族皆、そう云った空気に慣れてしまっていた。
それも嫌だった。
なんとかしたかった。
自分が勇者に成ればなんとかなると思っていた。
しかしもう、自分は勇者に成れない。
ならば―――
「結婚して」
そうだ、それが良い。
それしかない。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?」
二代目勇者をわざわざ否定する必要等無いのだ。
彼は男で、自分は女。
ならば出来る事は一つ。
「子供作ろ?」
プリムは直情径行だった。
幸いにも今はほぼ裸の様なものだ。
プリムはボロボロの衣服を更に自分で破り捨てる。
勿論夢の為、家の為に自暴自棄になっている訳ではない。
圧倒的強者に屈服させられる被征服感。
トドメを刺さずにプリムの肌を隠した紳士さ。
泣きじゃくる自分を抱き締めてくれた包容力。
牙を剥き出して吠えるしかなかったメスは、自分よりも大人なオスと出会い、完全に脳を焼かれていた。
「僕の夢をへし折った責任、取ってよね。先生」
プリムの奇行に驚いたレイヴンは大した抵抗も出来ず、保健室のベッドに押し倒される。
「こらっ!待ちなさいっ!」
レイヴンは困惑する。
(そんなに⋯そんなにレプリカが欲しかったのか?いや、この娘にとっては本物なのか?)
テレビや観客も入る変な空間に連れて行かれ、非力な女の子と戦う事になってしまった。
プリムは素早かったが力が弱く、身体強化等を使えないレイヴンに、傷一つ負わせる事が出来なかった。
あんなレプリカ等欲しくもないし、さっさと解放されたかった。
しかし、わざと敗けて何も知らない女の子に押し付けるのは違う。
戦う中でレイヴンは理解した。
(そうか、俺に求められている役割は、これか)
勇者学園校長がひた隠しにする聖剣のレプリカ。
きっと勇者学園の生徒達にとって、あのレプリカを引き抜く事が憧れの一つなのだろう。
確かに昔、勇者学園の生徒達が記念に聖剣を引き抜くチャレンジをしてる姿をテレビで見た事が有った気もする。
もしかしたら何か仕掛けが有って、偶にあのレプリカが抜けるのかも知れない。
きっと自分はたまたまその仕掛けを動かしてしまい、簡単に抜けてしまったのだろう。
(つまりこう云う事ですね?校長⋯)
生徒達の目標である聖剣を抜いてしまった二代目勇者として、彼女達の挑戦を受け続けると云う事。
それが自分に与えられた使命なのだ。
それは兎も角⋯
「こらっ!ズボンを引っ張るのを止めなさいっ!」
「大丈夫っ!初めは痛いだけって云うよっ!痛くてもごめんねっ?」
「痛い事は止めようっ!?」
何か変なスイッチが入ってしまったのか、プリムが別人の様になってしまった。
さっきまでは野良の仔猫ちゃんの様にプシャーッ!と威嚇して来る印象だった。
しかし今はメスだ。
発情したメス猫である。
自ら服を引き裂き全裸になり、レイヴンを押し倒して離さない。
「先生⋯良く見るとカッコいいよね」
「それは有り難うっ!さぁ離れようかっ!」
シャツを捲くられ、素肌が触れ合う。
柔らかい二つの弾力と、その中心に有る二つの突起の様な物が腹をくすぐって来る。
(いかんいかんっ!)
年下幼馴染が不法侵入して布団に潜り込んで来た時の事がフラッシュバックする。
髪の色も同じだし、自分を押し倒す姿が重なる。
「―――先生今、違う女の事考えた?」
首に齧り付いて来たプリムが赤い瞳でジッとレイヴンを見つめて来る。
「先生は僕のだから。あぐっ」
「痛くすぐったい!だから止めなさーいっ!」
本当に言葉通りにレイヴンの首筋に齧り付いて来るプリム。
「僕のだってマーキングしなきゃ。あぐあぐ」
戦闘中じゃないからか、レイヴンの素肌は鋼の様な硬さは無い。
皮膚は柔らかく、簡単に歯型が付けられる。
「えへへ、先生可愛い」
妖艶な瞳で笑う僕っ娘。
先程まで圧倒的だった男を見下ろし欲望の火が燃え盛る。
ゾクゾクする。
この男は、自分の物だ。
「だから服を脱がさないでっ!」
絡み付いて来るプリムが振り解けない。
先程の決闘よりもパワーが出ている気がする。
「観念してよー?女の子に恥かかせないでよねー。ちゅっ!」
「ひゅわっ!?やめてってばっ!」
ベッドから脱出しようとしても、恐ろしいまでの力で逃げられない。
(この娘っ!?こんなに力強かったのかっ!)
戦闘中は圧倒的膂力を誇った二代目勇者レイヴン。
しかし、ベッドの上では年下の女子生徒に良い様に弄ばれる。
果たしてそれは何故なのか?
しかしその答えが見つかる前に⋯⋯⋯
「おーい、レイヴン先生。大丈夫かの⋯⋯⋯おやおや?」
保健室の扉を開いて入って来たポプリがニヤニヤと笑う。
「こっ!校長先生っ!?これは違くてですねっ!?」
「いかんのぉ、いかんのぉ⋯教育者が生徒に手を出す等⋯」
「出すとゆーか出されてますがっ!?」
「大丈夫じゃ、安心せい。初代勇者時代にやらかした連中の校則が今も残っとる。妊娠出産結婚しても学校には居続けられるぞ?」
「違うそうじゃない」
「女子生徒が無理矢理男子生徒や男性教師に手を出しても、男性側には責任は発生せんからの。大いに孕め⋯違った。大いに励め」
「励めまてんっ!」
「教師同士だった場合も同様じゃ。其処も心配するな」
「してませんがっ!?」
「確かに妙案じゃの。初代勇者の血に二代目の血を混ぜるか。プリム、産まれた子は我が校へ入学させよ。小等部までは託児所を活用せい」
「有り難う!校長先生っ!」
「ちょっ!止めて下さいよっ!プリムもそんなキラキラした瞳をしないっ!」
「だいじょーぶ!優しくするからっ!ねっ!先生っ!」
「は、話を聞けぇぇぇぇぇぇっ!」
キラキラどころかギラギラした目でレイヴンを押し倒し服をひん剥いていくプリム。
何故か今はレイヴンの力が下がっている。
魔力をほぼ使い果たし、大した身体強化も出来ない自分が組み伏せても逃げられていない。
「ちなみに貴族社会の名残りも有る。世間体は悪いが一夫多妻も認められとるぞ?」
「駄目だよっ!先生は僕のなんだからっ!」
ポプリの一言でプリムが更に燃え上がる。
プリムの中の一番がすげ替わっていた。
ついさっきまでは聖剣を奪われた事に怒っていた。
聖剣を奪われまいと躍起になっていた。
しかし今はレイヴンがその位置に居る。
自分との決闘で、レイヴンは注目された筈。
有象無象には理解出来ないだろうが、解る奴は解る。
ギリギリ勝ち越しているが、あの初代賢者や初代聖女、初代剣聖の子孫達がレイヴンを捨て置く筈が無い。
必ず接触して来る筈だ。
どいつもこいつも貴族令嬢の癖に婚約者は居ない。
プリムもそうだが、自分よりも強い男じゃないと嫌だと駄々をこねているのだ。
先生の貞操の危機である。
守らねばならぬ。
奪われるくらいなら奪ってしまえば良い。
「嫌だっ!先生は僕のだもんっ!誰にもやらないからねっ!」
「先生は誰の物でもありませんっ!」
とうとうズボンも奪われた。
残る最後の砦だけは死守せねばならない。
「そうじゃそうじゃ。王侯貴族はの、本当にその子種が正当かどうか記録を録っていたと聞く。初代勇者と二代目勇者の血、本当に混じったのか後世に遺さねば」
いそいそとスマホを取り出すポプリ。
よりにもよってそれはレイヴンのスマホである。
「あ、アンタそれでも聖職者かぁああああっ!」
「どれ、勇者の生殖行為を記録するかのぉ」
「先生っ!子供は十人は欲しいよねっ!五対五のチーム戦出来るもんっ!」
ニヤニヤ笑うポプリ校長。
無茶苦茶な家族計画を語るプリム。
そして⋯
「先生⋯いくよ?」
舌舐めずりするプリム。
目は血走り鼻息が荒い。
「いやいやいやマジで洒落にならんからぁぁっ!やっ!やめれぇぇぇぇぇぇぇっ!」
そうしてレイヴンの絶叫が保健室に木霊するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます