第4話
「聞いたか? あの雑魚が帰ってきたらしいぜ」
「聞いたよ。まさかとは思ってたけど、本当だったとはね」
蘇芳一族当主、
片や悪どい商売に手を出してそうなホスト風の男で、片や胡散臭い細目の男。
彼らは蘇芳一族でもトップクラスの術者であり、菖蒲に次ぐ実力者だ。
「正直、興味はあるんだよなー。あの雑魚が何処まで力をつけたのか」
「おや、珍しいね。君みたいな自我が肥大化した人間がそこまで他人に興味を示すなんて」
狐目の男がそう揶揄うと、ホストのような容姿の男はガラの悪い笑みを深めた。
「強くなってるんなら、あの時よりも壊れにくい玩具になってくれてるかもだろ? 遊び甲斐が少しはあるじゃん」
「……相変わらず性格が悪いね、君は」
「人のことを言えねえだろお前も」
否定の言葉は返ってこない。口角を吊り上げ、細目の男は肩を竦めた。
「おそらく私達に彼奴を連れてくるように連絡が来るだろう。他の者達だとやり過ぎてしまうだろうからね」
「俺でも手加減し損ねるとは思わないのか?」
「君に限ってそれはないだろう。火力調整が出来ない術者がこの家で上から数えたほうが早い実力者になれるわけがない」
「お前もな」
二人の視線が交わり、吹き出すように笑う。彼らは互いの実力を最も信頼しており、彼らが共に並び立てば勝る者なしとさえ言われている。
火力の
「まー多少は本気を出させてくれるといいんだけどな……期待しすぎると落差やばそうだし、多少くらいにしとくか」
「その場合は適当にボコして、御当主様の下へ連れて行くことにしよう。少しの怪我なら多めに見てくださることだろう」
穏やかな笑みを浮かべている割に一桀の暴力肯定な意見に対し、一吾の表情は芳しくない。
「でもなー、菖蒲オジョーサマに見つかったら面倒だぜ? あの雑魚が敬愛するお兄様なのは今も昔も変わらねえんだし」
「大丈夫だよ。その時は私が説得しよう。これでも日頃から好感度稼ぎに従事しているからね」
「うわ、クズー」
「そんなことはないよ。これくらい普通さ」
しれっと言ってのける一桀に悪びれる様子はない。本気で自らの行いの歪さを自覚していないようだ。
一吾は非難しつつも、意見を否定することなく、彼の肩を叩く。
視線の先にあったのは一羽の烏。屋敷内で連絡を飛ばす際に使われるものだ。
二人は意味をすぐに察し、笑みを交わし合った。
「どうやら来たみたいだぜ」
「そのようだね」
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