第2話 雪|女ペンション殺人事件③

「なんかよく分かりませんでしたけど...事件は終わったんですよね?アカグモ...さん...やっぱりアンナちゃんが犯人だった...」


「証拠のネイルだが暖炉を消すと寒いし外にまで出て探す気は無いから見つけられてないだけからな」


「もう良いですよね...犯人は決まったんだし...」


「ヒロインもな...今後の事件でヒロイン?が役に立つかは分からないんだがな...決めさせられたよ」


すっかり炎藤を飲み込んだ外の雪景色を見ていると心まで寒くなってしまいそうになりソファに座る赤星雲と二見は肩を寄せあって毛布を膝にかけている


「作り物でも温かいな...湯たんぽみたいで」


「そんなのが僕に対する例えですか!?なんでか嬉しいけど...」


「意識や感覚の問題かも知れないが心的に...きっと俺はオマエみたいに気軽に会えるヤツの方が合う」


「へっへーん...そうですそうです...フタミこそ関わると周りが幸せになるヤツなんです!!ふふふ...」


顎を少しクイッと上げてフタミ キョウコの閉じた太股がモッチリと合わさると2つの白い大福が合わさるような映像がアカグモの目の前に再生される


(ゲームを作った人間の問題なのか...女キャラ以外の描写が手抜きというかテキトーすぎるだろ...)


ソファに座る赤星雲統の頭の中に奇妙な疑問が浮かび上がってくるのだ今回は呆気ない事件だったからこそ何か不完全燃焼の部分を感じる


二見鏡狐が付けている手袋を見て赤星雲統は眉を上げながらペンションの事件についての推理をする


「犯人が手袋を着けてから屋根の氷柱を取ってバックの中に氷柱を入れて...ベランダから落とした...氷柱は外で捨てるとバックの中身の氷柱を捨てて...


素手で氷を運ぶなんてNPCでもやらないのか...」


Tシャツの中の小ぶりな膨らみを揺らしながらフタミは彼の推理を妨げるように毛布を自分の方に持っていき微笑む


近くて見るフタミの顔から彼女はマツ毛が長く柔らかい顔立ちをしていることが分かるようにアカグモにはゲームの仕組みが分かりかけていた


だがフタミ キヨウコは興味が無い様子


「事件は終わりましたよ...アカグモさん...解決した事件を直ぐに掘り起こすなんてことは厳禁です」


暖炉の焔がバチバチとフタミが頭の中に浮かんだ二見鏡狐が犯人の可能性という推理に刺激されたかのように動いていた


「そうなのか?なら言ってやる...シュレディンガーの猫という話を聞いたことがあるか?量子学の重ね合わせを説明するための思考実験なんだが...


箱の中に猫と毒の瓶を入れる...しばらく経って箱を開けてみなければ猫が死んでいるかは分からない...箱を開けるまで生きてる可能性と死んでる可能性の2つが同時に存在する...って話だったかな?」


赤星雲は指を鳴らして語り出す


「この事件も同じだ...俺が動かなければ...箱を開く動きさえしなければ...犯人はフタミなのかアンナなのか何方とも言えず...可能性が2つある状態のまま


包むのがカーテンでもシーツでも氷柱を入れたのがバックでも犯人がフタミでもアンナでも良いんだ...


要は...フタミかアンナの何方が犯人でも成立する内容なんだ...あくまでも今回の目的はヒロインの中から犯人を選ぶだけ...好みの女を決めさせるチュートリアルがあるなんて下品で不愉快なゲームだ...


今後のミステリーゲームの為にゲームが俺の好みを知ろうとしてきた...[どっちの方がタイプですか?]という質問の遠回しな推理ゲーム版ってワケだ...」


二見鏡狐は推理を否定する訳でもなく肯定する訳でもなく黙っている彼の言葉がNPCの機能の範疇では理解することができないのだろう


それどころか彼の膝の上でゴロゴロと不服そうに不機嫌そうに喉を鳴らしてしまう始末であり名探偵の癖に核心に迫る推理について考えることはできない


複雑な女心など事件の真相ほど簡単に分からないであろう赤星雲は冴え渡る推理に額から指を擦れさせて前髪をかき分けながらカッコつけていく


「事件は証拠を集めて解決することを目標にしているんじゃない...事件の犯人は探偵である俺の好みや尺度で決まるんだろ?


答えや真相なんて最初から存在しなかった...


箱を開けるまで猫が生きてるか死んでるか分からないように...犯人を俺が決めただけだった...」


あんなに事件が大好きなフタミもアカグモとの距離が縮まったせいか毛布を自分の方に寄せて彼の膝に頭を乗せて寝ようとする


「しばらく頭を置かせて下さい...安心するので」


不思議と退かすこともなく作り物の彼女の何処かに人間らしさを見出しそうになった赤星雲は腕を組むようにしてフタミと自分の間に心理的な壁を作る


勝手に心が揺れている赤星雲のことなど気にしないフタミは頭を乗せながら何処からか取り出した虫眼鏡で彼の胸をチョイと軽く叩く


「あっ.....アカグモさん...まだ僕の下着を勝手に漁った罰を与えてませんよ?とりあえず覚悟して目をつぶっていてくださいね?」


「ちっ...事件のついでに忘れたと思ってたよ」


膝からフタミが離れる感覚がある


目を閉じられた状態のアカグモにフタミは近づくと一応は周囲を見回してから頬に短いキスをする


かと思われたが鞭のようなビンタが行われるとゲーム世界でも確かに感じる驚きと激しい偽物の痛みにアカグモは頬を押さえる


《チュートリアル終了》部屋の中の紙吹雪は更に動いて2人の周囲を舞いながら推理ゲームの外の現実世界へとプレイヤーを押し出していく


気づくとホテルから全く別のGAME CLEARとだけ書かれた空間で赤星雲統は自分の目の前の視界という名の画面に浮かび上がっていく文字を見ていた


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PLAYER No.00 赤星雲統/アカグモ スベル

職業=AIプログラマー/エンジニア

雪|女ペンション殺人事件 難易度E級 【解決】

CP4000 DP3000 EP2000 トータル[9000P]


【評価★★★☆☆】アナタのキャラクターの良さも探偵の鋭さも遺憾無く発揮されていたも思いますが物語を盛り上げるためのミステリーっぽい立ち振る舞いが少しだけ欠けているように見えました


"今回でチュートリアルステージは終了です!!"

次回からは本格的な推理ゲームが待ち受けています


頼れるヒロインの二見鏡狐と幸せに!!

これこらの成長の祈願を込めて星3評価です

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⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜

⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜FAKE・PAIN〜作られた真実〜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜

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《また皆さんと会いましょう》








頭からサンバイザー型のVRヘッドセットが取り外されるとFAKE PAINの怪しげなロゴが表示されては海面に落ちた一粒の角砂糖のように消えていく


パソコンだらけのオフィスの現実に戻るとゲームの世界には無かった目の下のクマや剃り残した髭や毛穴なんかを見ることになる


醜い物が見やすくなる


先行き不明瞭なゲームの中で吸う空気よりも定まった現実の空気の方が気分が落ち着く


机の上の透明なバイザーにはネオンピンク色に諸悪の根源であるXanVisorの文字が描かれておりオフィスの外に振る雪を映し出している


赤星雲/糸澤しか居ないオフィスのドアが開かれると大きなリュックサックから弁当を取り出している布マスクに筋骨隆々な角刈りの男が居る


「押忍!!今日も料理を持ってきました!!」


「あぁ...ありがとう...そこに置いといて」


「押忍!!えーっと...ちなみに自分の名前は!!」


「あぁ、名乗らなくて良いよ...俺は糸澤いとざわ...人もAIにもできるだけ干渉しないで生きて行きたい人間だ」


糸澤は目元を親指と人差し指で押さえながら現実では異性2人からモテモテになるなどという都合の良いことは起こらないんだと改めて実感してしまう


「あんなにモテたのに...戻ってきてしまえば...現実には誰も居ないんだからな...空虚...だな」


「押忍?急に何の話ですか...3900円です」


「あぁ、はい払います払います...って...もうネットで支払いは済ませてあるだろ...」


突如として耳鳴りのようなモスキート音のような不快な音が頭の中に響き渡ると現実の褪せた色を表すかのような糸澤の黒髪が揺れる


鼻の奥がジンとしてドロドロと血が漏れ出すと糸澤はティッシュを取る暇もなく袖で拭きながら角刈りの男に叫ぶ


「もういい!!帰ってくれ!!」「え??」


オフィスから角刈りの男が締め出されると糸澤充はティッシュを何枚か取って自分の鼻にあててドロリと漏れだした血液を染み込ませる


糸澤は真っ赤なネクタイを緩めると指を鳴らす


「FAKE...PAINの...いやXan Visorの副作用か...意識を仮想世界に飛ばすなんて事をし続けたら身体に負荷が掛かったり副作用が出たりする...


現象は...世間一般的には"仮想酔い"なんて危機感を与えないような軽い言葉で片付けられている」


すっかりゲームに慣れてきているのか何か違和感や気になることがあれば探偵気取りで語りだす癖がつき始めている糸澤だった─

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