第3話 キッチン楽々蝶殺人事件①

玄関の磨りガラスの外には雨が降っている

玄関に立つ警官2人には背後の湿り気が見えてない


黒のビジネススーツに身を包んだ男の表情は曇っており家の前の石段で2人の警官に囲まれた様は黒いネクタイも相まって喪主のような印象を受ける


警官の1人がメモで書き留めながら話す


「部屋の中は内側から施錠されていて...アナタは鍵を使わずに部屋の外から扉を開けて中の妹さんの死体を確認した...なるほど...死亡理由に何か調べがついたら此方から追って知らせます」


「部屋の中に...機械が落ちていた...あれは...」


「非正規で取引されてるXan Visorの模造品だが意識を転送するプログラムも何も無い詐欺商品です...人体に影響が出ることはありません...事件性は限りなく低いです...糸澤充/イトザワミツルさん...」


「部屋の中の機械が動いてたとしたら...何のゲームをしていて誰と話していたんだ...妹が死んだ原因があるのなら...俺は...」


外の雨音が強くなった気がして磨りガラスの外を見ると見知らぬ何者かの影が立っているのが分かる








2023年→2026年









『新たな流行病によって外出すら制限される今が過去の人間が想像した未来だとして...空飛ぶ車や空間に映像を映し出す技術や念じるだけで仕事が終わる装置などが使えるか?正解は複雑です...


技術自体は完成していても過去で願ったように一般市民が容易く使えるほどに技術は実用化には至っていない...だが私の技術は多くの人間に寄り添うことができるのです...全ての難題に答えることだって...


XanVisor/ザンバイザーは意識を仮想世界へと飛ばすことで食べたこともない食べ物の味や触れたことのない物の感触を味わうことができるのです...


XanVisor/ザンバイザーにより出会えなかった者と出会うことが可能となりサブ・プライム社と協力する幾つものゲーム会社の看板商品であるゲームを世界観に没入して肌身で感じながら味わえるのです』


軽快なキーボードの入力によりモニター画面に映る黒いスーツに赤いネクタイを着こなした白人男性の姿が止められる


動画のタブは消されて電源が消され暗くなったモニター画面には糸澤充/イトザワミツルの姿が映る


「なんか...吹き替えで随分と色男に変えらてるなケビンの声...一緒に仕事したことあるけどハンバーガーにマヨネーズを追加で注ぎ出す奴だぞ?」


赤星雲統は自分に随分と似せて作られたのか髪色以外の殆どの容姿が変わらない冷淡そうで真面目そうで仏頂面で若くして成功したエリートの顔


若くして成功して、チヤホヤされて


そこから若さの出涸らしのような空虚な30代 男性としての人生を生きている


机の上の透明なバイザーにはネオンピンク色に諸悪の根源であるXanVisorの文字が描かれておりオフィスの照明に反射して輝いている


糸澤/イトザワしか居ないオフィスのドアが開かれると大きなリュックサックから弁当を取り出している布マスクを付けた筋骨隆々な角刈りの男が居る


「押忍!!今日も料理を持ってきました!!相変わらずガラガラですなぁ...IT企業ってカラフルな人達がゲームとかしながら騒いで仕事してるかと!!」


「社長として俺から言ってやろう...ウチは仕事中のゲームもネットサーフィンも禁止だし給料を高く払う代わりに残業もさせるからな...なんせ此処にはキッチンもシャワーもあるからな」


「押忍...糸澤さんってIT企業[Red Ocean]の社長なの?エーッ...人って見かけ通りなんですねぇ」


「そこは人は見かけに寄らないとかいう所だろ?オムレツ入ってるか?また仕事に取り掛からないといけないからな」


金を渡すと角刈りの男は礼をして走り去りネクタイを緩めたビジネススーツのジャケットを机にかけると糸澤は仮想世界への入口であるヘッドセットをかける


午前[12:42] と仮想世界に入る準備を済ませた糸澤はパソコンの画面に映るデジタル時計の数字を見た


バイザーの横に付いたボタンを押すとヘッドホンがゲーミングPCのように桃色の光を出して糸澤の視界が現実世界から仮想世界へと変わっていく


糸澤充/イトザワミツルから

赤星雲統/アカグモスベルへと

変化のプロセスが始まっていく



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⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜FAKE・PAIN〜作られた真実〜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜⸝ဗီူ⸜

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演技 アクション 推理の様々な難易度を3つの選択肢▶︎かんたん ふつう むずかしい の中から済ませる


いきなり[むずかしい]を選ぼうとする糸澤だったが選択肢のボタンが反応せず[ふつう]を選んでも反応しないため消去法で[かんたん]を選択した


機械により作られしミステリーワールドへと向かう









ゲーム世界にて、最初の感覚は耳から聞こえる厳かで緩やかな音色のクラシック音楽だった。


目の前には自分の右手に持たれた泡立て器によってかき混ぜられていた卵液があり先程まで仮想世界の自分により念入りに空気を含む形で混ぜられていた


小綺麗な食器棚に蛇口が複数とついたテーブルが4つほど並んでおり机の上には料理包丁やボウルの他に砂糖やホットケーキミックスが並べられている


「どうやらスイーツを作るのは確定みたいだな...何で俺が料理しているのか設定が気になるが前の事件と同様にゲームが始まると細かな説明も無しに進んでいくようだな...初心者に優しくない仕様だな」


顔を上げると


[一前市にて開催!!一前肉フェア202▓!!]と何らかの祭りか食肉に関するイベントなのだろうか壁に画鋲にて付けられたポスターが目に留まる


ポスターの右下は少し剥がれて捲れカールしており裏側の綺麗な真っ白が見えてしまっている


そして机に向かって料理教室に居る各々は自慢の料理を作っているようだが赤星雲にとって見た事のある連中の顔と見た事のない者が混ざっている


エプロンをかけているがタイトスカートから生足を意図的に出しているギャルが歩いてきて赤星雲の机の上に置いてあったメープルシロップを取り上げる


「悪いな...アタシも作るなら最高に美味いホットケーキを作りたいからよ?へっへ!!借りとくぜ?」


前回の事件でも犯人として推理されていた名達杏奈 めいだつあんなを見て思わず赤星雲は彼女を指さして呟く


「犯人はオマエだ...名達杏奈」


急に犯人と呼ばれたことにアンナはエプロンの中の2つ並んだ爆発物のような巨乳をブルンと揺らすと中腰になりながら馬鹿にしたような口調で話す


「あぁ?へっ...犯人はアタシだぞ...メープルシロップ泥棒の罪で逮捕でもしてくれるのかよ?」


アンナは自分の机に戻ると赤星雲の言うことなど完全に気にしていない様子でメープルシロップを完成した少し焦げたホットケーキにかけている


鼻下に人差し指を当てながら赤星雲/糸澤は頭の中にプログラムの数式やらを通過させて考えて呟く


「やはりゲームによってランダムに事件の内容も犯人も変わっている可能性が高いだろうな...


チュートリアルから外れるのは自転車の補助輪を外すようで少し不安だが[かんたん]の難易度を選択したからな...というよりソレ以外の難易度が選べなかったのだが...確実に今回も解決できるはず...」


ブツブツと早速の推理モードに向かうと赤星雲の方に見覚えのある丸眼鏡にカーキ色のコートを着た男が姿を現した 思わず記憶した名前を投げてみる


「確か...このNPCは...苦しむ脳?」


「漆日楼/ウルシビロウだよ...どちらかと言うとウスバカゲロウとか間違われるけど...見ない顔だね..?

もしかして新入りさんかな?」


「俺は赤星雲統だ...料理初心者...宜しく」


「ほう...セアカゴケグモみたいな名前してるね」


漆日楼は突然だが体の隅々が疼いたのか鞭のように揺らめいて不自然に広がるように動くと話を続ける


「それよりも...なんでまた...こんな退屈な料理教室なんかに俺や君が来ちゃったのか分からないね?」


「俺は来た理由を説明できる...このゲームの中に家族の死の真相があるかも知れない...人生最後の賭けに出ることにした...事件を...犯人を見つけるため」


「ゲーム?事件?またまた...キミは読めてこないことをツラツラと喋るのが得意な様子だね...」


探偵柄のエプロンで割れた卵の模様を確認しては机の上に丁寧に殻を並べる名探偵の二見鏡狐は驚異的な集中力のせいなのか表情も変えず手軸もブレない


二見鏡狐/フタミキョウコは何処の世界でも名探偵なのだと彼女の探偵帽や服のスタイルを含めて見れば一目瞭然なのである


「ふっふっふっ...この卵は腐っている...なぜなら僅かな亀裂によって内部に細菌が入ったことにより内側からジワジワと腐食を始めているからです!!」


「名探偵はドイツモコイツモこんなハイテンションになるものなのか?流石に職業病の類だと疑うぞ」


「アカグモだ」「え?あっ...フタミです!!」


赤星雲は思わず彼女の方に自己紹介してしまうとフタミは卵を並べながら自分の狂った推理をツラツラと話し始める


「犯人が証拠隠滅のために腐った卵を他の卵に紛れ込ませることで見分けがつかなくなるかも!!いっそのこと跡形もなく破壊するしか無いです!!」


「蛇口から冷水でも出して頭を冷やすべきだな」


机は4個もあるが奥の机には2人の人物が啀み合いながらも並んで菜箸で卵液を混ぜている


右側の黄色いストライプ柄のエプロンを着た青年は炎藤巡/エンドウ メグルでありチュートリアルの方でも会話をした何処か冷めた様子の若者だ


問題は左側に立つ白髪に白いエプロンをつけた権力者であり富裕層側の人相をした男、前回の殺人事件の被害者である車広凱/シャヒロ ガイである


キノコ森のマッシュヘアの炎藤と薄禿げの車広は自分達の作業にも気を使いながら卵液を混ぜるだけの手間から来る暇を解消するために喋っている


「白いオッサン...なんで俺ん所で料理すんの?.....邪魔...肘も当たるし...だりぃーっす...ウザイよ」


「稼ぎの少ないガキは黙ってろ!!」


「あー...めんどくさいタイプの人?」


車広は炎藤巡/エンドウ メグルに詰め寄ると怒鳴る


「おいッ!!もしアレを仕掛けたのがオマエだったなら絶対に許さねェからな?分かったか?」


「は?なに?白いオッサン...頭だけじゃなくて考えも禿げ上がってオカシクなったの?」


すると歳のせいか不摂生のせいか痛む自分の尻を優しく撫でる車広凱/シャヒロガイを見て国分寺は鼻で笑う


料理教室に集まった人々を見ていると濡れた腕をハンカチで拭いている絶対に顔馴染みの無い者に話しかけられた


彼は和柄のエプロンをつけた美しい長い紫髪に華やかな雰囲気を纏っている中性的な青年だった


体格や身の振り方などを注意深く観察しないと女性と間違えてしまうような美麗さと危うさすらある


「赤さん?せっかす誰でも料理が上手くなる最先端料理教室...キッチン楽々蝶/ラクラクチョウに来たというのに転寝や余所見は調理場で厳禁ですよ?」


「このキャラクターは...なんだ?」


「私は蝶坂美遥/チョウザカミハルという者ですよ...蝶のように舞い...遥かなる美食の世界へと飛び立つ者です...」


「本当に...なんなんだ?」


唇には薄く紅を塗っている蝶坂美遥ちょうざかみはるは赤星雲の後ろに回り込むと彼の手を優しく掴んで卵液を混ぜるのを手伝ってくれる


「作った料理は最後に皆で分け合って誰の作ったパンケーキが1番に美味いのか比べ合いますからね?赤星雲さんも美味しいのを作らないと...ふふふ...」


机の上に置かれていた牛乳パックを取るとボウルの中に入れて普段から自分で料理などしない赤星雲/糸澤の代わりに手際よく混ぜてくれるのだ


ミハルは料理教室に通う5人の生徒に向かって妙に仰々しく話し始めた


「それでは皆様方...私と遥かなる旅路の果てである焼きの作業に張り切りましょう!!」

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