第3話 キッチン楽々蝶殺人事件②

焼かれたホットケーキが次々と皿に乗るとと上に置かれたバターがトロリと溶けてメープルシロップでハートマークが描かれていく


何故かエプロンまでもがヒョウ柄なアンナに向けて蝶坂美遥/チョウザカミハルは拍手しながら褒める


「アンナさんはシロップやドレッシングをかけるのが上手ですね...皿の選び方も艶があり美しいなぁ...こればかりは美的センスが成せる技だと思います」


「えー?ホントか?おだてたって...休日にデートしてあげることぐらいしかできないぞ...?アタシは」


皆がホットケーキを作っている中で手探りでエプロンから取り出した探偵メモに赤星雲は机の裏側に隠れて座りNPC達の特徴や情報を書き出していく


「どうやら探偵役には探偵専用のアイテムが貰えるらしいな...メモ帳にボールペンに...一瞬で犯人が分かるサングラスとかは無いのか?」


赤星雲の横に着たカーキ色のエプロンをつけた丸眼鏡の漆日は自分の横で何処からか持ってきた卵液の入ったビールジョッキに醤油をかけて菜箸で混ぜると一気に飲み干している


飲み終わると気味悪い漆日楼/ウルシビロウは話す


「焼いた食べ物は生物に比べれば下位互換だ...新鮮さが料理や創作活動における最もな価値だと思わないか?浮かんだアイデアは直ぐに形にしたいね」


「何の話をしているんだ...頭にエラーでも発生してるのか?向こうでホットケーキは食べてろ...俺にはやることがある」


「そっくりそのまま返すね...此処に居る人形達の情報を書き出してキミは何をしているのかね?」


「犯人探しだ.....妹の事件の...言ってもNPCであるオマエには分からないだろうが...今回の事件も直ぐに解決して次に進まなきゃならない...」


車広が手を離すとガラスのコップが落ちて粉々に割れるとミハルは直ぐに皆を下がらせて落ち着いた口調で話す


「車広さん?大丈夫ですか?」


「あぁ...なんだか...俺ァの何時ものアルコールの禁断症状が出たのかも知れねぇな...おおお...」


「皆さんも破片に気をつけて下さいね...私は隣の倉庫からチリトリを持っていきますので...」


赤星雲と漆日は立ち上がると目元を押さえて気分を悪そうにしている車広凱と彼の落としたコップの破片を面倒そうにスリッパで纏めている国分寺を見る


「いやあああああああっ!!不潔!!不潔!!」

廊下の方から蝶坂美遥の叫び声が聞こえると建物の構造もロクに分からずに赤星雲/アカグモは走る


廊下にて尻もちをついて震えているミハルは壁際にもたれ掛かり開かれたドアの先の光景から目を逸らしているようだった


車広以外の赤星雲や漆日や二見から炎藤と名達までの4人が何事かと彼の元に近づくと鼻に漂うような腐食から思わず部屋の中を見る


何者かは分からないが誰かが縦に長い棚に潰されて全身に粉をかけられた状態で倒れている


奥の窓側にまで乾いた血溜まりも広がっていた


【キッチン楽々蝶殺人事件〜禁断のレシピ〜】D


《警察が来る前に事件を解決してください》と事件のタイトルや要求されるMISSIONが赤星雲の視界に次々と表示された


犯行現場に立ち入ると目に入るのは撒き散らかされた大量の小麦粉であり棚に潰されて腕や足だけ見える死体の周囲に満遍なく巻かれており人の足跡などの痕跡は残っていない


その奥には割れたガラスと共に血が流れており死体の正確な状況を確認するには棚を退けなければならないようだ


フタミは自分にとって邪魔な赤星雲を退けると狭い犯行現場をズカズカと踏み荒らして馬鹿力で棚を持ち上げると中の皿が次々と落ちた


棚が退かされることで死体の全貌が見える


死体は仰向けに倒れたウルフカットに髭面の男であり大量の血は何かに切りつけられた首の周りから出ていることが分かる


ギャルのアンナは困惑しながらもミハルを立たせて調理場の方へと彼を抱ええ遅く歩いていく炎藤や漆日は彼女を手伝う素振りも見せず犯行現場に注目しているのだ


フタミは男の周りを確認しながら推理する


「この男は何者なのか...この料理教室に僕を含めた今のメンバーが通ってから少なくとも1週間は経っていますが...こんな人間は見たことが無いです!!」


「オマエが1週間前から通ってる事は分かったが情報が必要だな...この服装...随分と変わってるな」


被害者の男性が着ているのは見たこともない白い生地に黄緑色の四葉のクローバーのデザインが描かれたコスプレのような雰囲気の服だった


「ひよひよひよひよ...1度と見た物を絶対に忘れない僕でも見たことがない物は分からないです!!!年齢こそ分かりますが職種の判別は難しいですね」


「単純に考えたら...あそこの高い位置にある窓から何者かが侵入してきて中に居た...被害者を殺した?窓は施錠されてないみたいだから入れるだろ」


「じゃあ蝶坂先生にも聞いてみないと...こんな物置きの役割となっている部屋に居た男なら先生とも個人的な面識があるはずです!!」


チュートリアルの時よりも比較的には穏やかに赤星雲と二見は共に事件解決のための推理をしていたのである


漆日はスマホを弄り始めた炎藤の方を見ると彼を確認してからポケットに手を突っ込んで2人の後ろから狭い事件現場に入って近くの棚を確認している


赤星雲アカグモは聞く

「漆日...何か手がかりでも見つけたのか?」


漆日は電子レンジを開けながら何かを考え出したのか目を瞑って少し言葉を溜めてから2人に教える


「なんだろうねぇ...手がかりって程じゃないけど下を見てくれるかな...血が妙に乾きすぎてないかい?


それに最近に殺された死体なのなら血は赤いはず...現場の死体は黒く変色していて腐敗も進んでる......死後1週間は経っているはずだと考察できるねぇ」


「だが...虫なんかが湧いてないのも不思議だな」


「その点は心配しなくて良いんじゃね?この調理場というか家って何処までも料理に特化していてさ?


家全体の温度調節とかは廊下の操作パネルから動かせるらしいし...食事への混入を防ぐため虫が入って来れないような構造になっているらしいねぇ」


「死体の状態も...妙なのも家全体の温度が料理によって変えられていたことで分かりにくくなっているのか...そんな状態で殺人を起こせる人間は...」


「いやあああああああっ!!また!!またっ!!」

女口調で蝶坂美遥/チョウザカミハルの叫び声が先程と同じように調理場の方から聞こえてきたのだ


「また出てる!!また出てる!!誰かーーっ!!」


止まないミハルの叫び声から推理に燃える赤星雲と二見が駆けつけると口から泡を吹いて苦しんだのか車広凱/シャヒロガイが殺されていた


「殺人事件が2つも...どういうことなんだ...難易度は低めに設定したが...チュートリアルの事件が最低難易度で...今回の事件はチュートリアルよりも難易度が凄く上がっている気がする...」


「毒殺にしか見えませんです!!皆さん!!名探偵フタミが命じます!!近くの料理には一切の手をつけないでくださいねっ!!」


蝶坂美遥は事件の連続のショックから体調が優れないのか太ましいアンナの太腿にて眠りについていた

彼女に注目する赤星雲と二見にアンナは告白する


「蝶坂先生とは去年の一前肉ひとまえにくフェアで初めて会ったんだ...実は...先生とアタシって付き合ってんだよ...別に何も悪かねぇよな?そういうの...」


「そのフェアってのは何だ?事件と関係あるか?」


「ただの肉関係の料理を取り扱い人間が集まるだけのイベントだけどよ...さっきの死体のヤツには見覚えがあるぜ...イベントで絡んできたヤツかも...」


フタミはツラツラと語り出す

「どうやら名探偵にはアンナちゃんが言いたいことが分かってきましたよ?先程の男の服装を画像検索にかけてみた所...付近にあるカルト宗教の信者達が着ている服とデザインまで完全に一致です!!」


「なるほど...宗教の中じゃ肉を食うことを制限する所もあれば肉食と断然する所もある...そういう一部の連中が講義に来たってワケか...」


「はい...大自然的遺伝教会の信者達は深い自然は地球の血脈に当たると考えていて山や海岸近くを根城にしてるなんて噂もあります!!自然を傷つける人間を許さないらしくて...ここまで過激化した理由は


教祖の...風宮為伏/カザミヤキブシによる洗脳が原因だとネットには書いてあります...」


「なんだその......カミキリムシみたいな名前は」


漆日のように虫で例えてみた赤星雲統は二見鏡狐が相棒なのは当然といった感覚で彼女の取り出して見せたスマートフォンの画面に注目する


スマホの画面には先程のウルフカットの男が何人もの頭巾を被った集団に囲まれて映っており堂々と神々しさを演出しながら手を広げていた


幾つもの怪しげなカルト宗教活動の画像がフタミの細い指のスワイプで流れるように見せられていく


「これで終わりです!!犯人は2人に絞り込まれましたね!!えーっと...レッド...レッド...ガリ勉?」


「赤星雲/アカグモだ、名前を忘れてただろ?」


「被害者と会って間に動機が生まれた可能性があるのはアンナさんのミハル先生の2人だけです!!つまり犯人は2人のウチの誰か...ソイツが車広も殺したんです!!」


戻ってきた炎藤と漆日が歩いてくると赤星雲は彼らの背後の壁にあるポスターは四隅がシッカリと画鋲で止められていることに気づいた


炎藤の方もフタミのようにスマホを見せて皆の方に画面を向ける


「あー...とりあえず警察を呼んだから...これでマルっと解決でしょ?は〜ダルいっすわ...ホント」


「まずい...警察を呼ばれたか...時間が無いな...」


車広の死体には前回の事件と同じようにズケズケと死んだ車広に失礼なくらいには強引に服や装飾品の類を調べているフタミは彼の身体を隈なく触り


彼の口の中をも開けてみる

「泡が凄いし...苦しみ初めてから死ぬまでに若干の時間経過があったよね?僕は毒物での犯行が確定だと思うんです!!」


「まぁ殺人事件なんてタイトルを振ってるから病気による死亡では無いんだろうなと思ったよ」


「問題は!!車広さんが何を食べて毒を体内に摂取したかを調べることです!!やはり各々が混ぜていた卵液に毒物を混入させるのが自然なのか!!


だが車広さんも自分の食べる物に毒を入れられるような不審な動きがあったら...さすがに気づきますよね?」


「鑑識なんて受けさせられないな...警察が介入する前の事件解決がMISSIONだったからな...警察が来てしまったら...がめおべあ(GAME OVER)になる」


時間制限のある赤星雲の目には此処にいる全ての人間が事件について怪しく企んでいるように見える

フタミは疑心暗鬼に陥る彼の方に伝える


「そういえば卵液を混ぜている時に漆日さんと車広さんが言い争っている?というよりも漆日さんが怒られているような場面が有りました!!そこから移動して炎藤さんの方にも絡んでいます!!」


「そんなシーンが会ったのか?寝ぼけてて見てないし聞いてなかったぞ?」


「車広さんは此処...楽々蝶キッチンにも多額の投資もしている不動産オーナーらしくて上から目線で随分と色々な人に因縁をつけていました!!」


「仮に炎藤と漆日が車広と仲が悪かったとして風宮を何で殺す必要性があるんだ?2人が彼と面識があるようには見えないしな」


赤星雲と二見は困惑しながらも車広の死体に近づいは風宮の死体の方にも動いて2つの死体の間を競歩で行き来しながら考える


「毒を注入された時に車広を何を食べたんだ?」


「何を食べた?机には酒も無かったし煙草も...あるとしたら自分で作ったホットケーキの元なのか??

そもそも何の毒で死んだんだろ...」


「んぎゅるるるるるるるるら」


二見は奇声を上げながら近くに居た赤星雲の身体を触り一瞬にして毒物の有無を確認すると次々と料理教室に居る客達の私物を漁ってしまう


「毒を持ち込む以上は絶対に容器があるはずです!!即効性の毒なら尚更!!危険な毒物を容器も無しに持ち込むのは危険なんです!!」


「でも...容器は何処にも無さそうだな...犯行後に何処かに隠されたのか...ヤバいぞ...警察が来る前に事件を解決しなければいけないのに...


絶対に解決できるはずなんだ...完全犯罪は無いはずだ...完全犯罪になるとゲームとしての成立なんかできなくなるからな...完全犯罪は無い!!」





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