邂逅

緋舒万燈剣

邂逅

僕が君と出会ったのは、必然で、差して感動的でなかったのにも関わらず、僕は、まだ、それを忘れられないでいる。


あの日は、早朝にも関わらず、人がわんさかと溢れかえっていて、正直、帰りたいと思っていた。


でも、大事な合格発表の日だから、と言いくるめられて、結論、それで出てきたのは、僕で。だから帰るわけにはいかなかった。


お話しなくていいから、黙って合格発表を見ればいいだけだから、と母さんに連れられて来たのは高校で、人だかりで、うるさくて、寒くて、でも。でも、大事な日で、僕の番号が書いてあった。僕は嬉しかったかどうかよく覚えていない。


人とろくに話せないし、話したくないし、ガッコウなんかに行っても、母さんをまた悲しませるだけだと、なんとなく、そう思っていたから。


‘’お前、そんな顔すんなよ。番号なかったのか?‘’

そう聞こえて、顔を上げたのが、喜劇との邂逅だった。優しい声だった。ハッとして、勢い任せに首をふった。


‘’じゃあ、そんな顔すんなよ。‘’

そう返ってきたから、僕の未来は、昨日より明るくなったし、僕の未来に名前がついた。


‘’これから、よろしくな。‘’


‘’――うん。‘’

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邂逅 緋舒万燈剣 @sakuraba_seugen

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