絶望

「さて、と……自殺?」


目の前がうざっだるいくらい眩しい。

女が何か話している。


「うーん……次の転生先に希望ってあるの?あなた?」


何も聞こえないし、何も聞きたくない。


「おーい……?なにか話してよ!」


うるさい。


「作業進まないじゃない…」


女が何か納得したような顔になる。


「こっちにも考えがあるから!いいわよもう!適当な異世界に転生するからね!」


どうでもいい。


「魔王倒してきたら考えたげる……と、面倒くさいから記憶は消すからね、」


……!

「まて、それはやめろ!!僕から全てを奪う気かお前はっ!」


「あ、やっと話してくれた、ま、いっか。じゃね!」


女の発言の後。

記憶がだんだん消えていく。

あいつとの思い出も。

嫌な記憶も。

住所も、電話番号も……名前も…

……あれ?

僕って………………

















なんだ?





―――シュヴァルツ家―――

「ウラン!お洗濯もって来てちょうだい!干しちゃうから!」

「わかった!お母さん!」


今日は快晴。

絶好の洗濯日和だ。

この頃雨が続いたからしばらく洗濯物が干せなかった。


「はい!どうぞ!お母さん!村まで買い物に行ってきていい?」


洗濯物を干しながらお母さんが答える。

「大丈夫よ、お金はあるの?」


「うん!お小遣い貯めてたから!」


家は結構お金持ちで、商売人をやってる。お父さんは冒険者で妹の、アイリスが生まれてからすぐに旅に出ていってしまったらしく、僕の記憶にお父さんの姿はない。


「そう、なら好きな物を買ってきなさいあと、お使いを頼める?」


「いいよ!何買ってくればいいの?」


「牧を割るようの斧が壊れちゃってね、買ってきてくれる?」


「まかせて!」


母に銀貨を2枚もらって早速僕は村に出かける。僕の全財産は銀貨7枚!

簡単な魔導書が1冊くらいは買える。

銅貨5枚で銀貨1枚、銀貨5枚で金貨1枚。

僕はこの辺計算が難しくてあんまりできない。


「あれ?ウランじゃないか!お使いかい?」


村に着いて、すぐ。

八百屋のおっちゃんが話掛けてくる。


「そうだよ!斧買いに来たんだ!」


「そうか、場所はわかるか?」


「だいじょぶ!」


この村の人達はみんな親切で、最高!

ずっとこの幸せが続いて欲しい。


「よう、ガキンチョ何買いに来たんだ?」


「ガキじゃないよ!斧がちょうだい!」


「ほら、銀貨2枚だぞ!……いや、やっぱ1枚でいい!特別だからな」


武器屋のグラッチェさんは口調は乱暴だけど優しい。いい人!


「ガキンチョ、帰り道に気をつけるんだな!最近オークがこの辺うろついてるらしいからな!」


「そうなんだ……気をつけます!」


村をしばらく物色して、欲しいものも買えた。アイリスの誕生日が近かったので、一つ、カチューシャを買った。


家に帰ってあげたらどんなに喜ぶだろう。アイリスの反応が楽しみだ。


そんなこんなで歩いていたが、帰り道偶然アイリスにあった。


「あれ?お兄ちゃんだ!」


「アイリス!」


アイリスに気付くのと同時に、僕はあるものに気付く。


「アイリス、静かに!」


「どうしたの?」


「そこに1匹オークがいる……!」


グラッチェさんの言う通りだ!

オーク…確か、ギルドが懸賞金を出てた…今ならもしかしたら行けるかもしれない。後ろから、斧で。


「アイリス、ちょっとまってて!」


「何するの?」


しーっとジェスチャーだけして、進む。

ゆっくり、ゆっくり。

オークの後ろに近づいて……。

ここだ!


「おりゃあ!」


斧は醜いオークの背中の肉を抉りとって、オークに深い傷を負わせた。

すかさず、もう一度!


と、その時。

最悪の声が聞こえる。


「ギャアッッッーー!!!お兄ちゃん!!!」


アイリスがオークに抱き上げられていた。しまった、もう1匹いたみたいだ!


1匹目にトドメをさして、すぐにアイリスの方に向かう。アイリス……!!


「イダイッ…オニイチャ…」

鈍い音が辺りに響く。

オークがアイリスの体をボコボコに殴りつけていた。


「やめろ!このっ!クソオークッ!!」


無情にも、オークはアイリスを殴り続ける。体はもう痣だらけで、顔は血みどろ。その、幼く、か弱い体はもう耐えられないところまで来ていた。


「タスケテ……オニイチャ…ン……アガッ…」


ぐちゃっと音が鳴り響いて、アイリスの体はぐちゃぐちゃになる。


何か……この感じ……前にも……。


そこで僕は全てを思い出す。

また、また守れなかった……。


「ころす…殺す、殺す殺す殺すっ!!!」


僕の体は勝手に動いて、斧は、オークを真っ二つに切り裂いていた。


鈍くて、汚い肉の音が声をあげる。


意識が……だんだん落ちていく、


そして……


【経験値を25獲得しました】

【人 Lv1が人 Lv2になりました】

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