第6話 高橋 バイバイ

「待てよ……鈴木が消えたのって、俺らの中に“黒”がいるからじゃねえか?」


「だとしたら、昨日の議論の時点で疑われたやつが怪しい。」


「……高橋、お前じゃないか?」


「は? なんで俺なんだよ!」


「昨日、一番発言が少なかったの、お前だよな?」


「それがどうしたってんだ!」


「いや、逆に言えば、一番慎重に動いてたってことじゃねえか?」


「それはただ……」


「お前、鈴木が消えた時のリアクションも薄かったよな。」


「おい、やめろよ……!」


高橋がじりじりと後ずさる。


「待て、少し冷静になれよ。」


中村が手を上げて議論を止める。


「高橋を疑うのはまだ早い。確かに昨日は発言が少なかったけど、それだけで黒とは言えない。」


「でも鈴木が消えた。誰かが動いたってことだろ?」


「そうだ。だからこそ、もう少し考えよう。」


中村が続ける。


「俺が占った結果、佐藤は“白”だった。つまり、佐藤は絶対に黒じゃない。」


「……だが、鈴木が消えたってことは、まだ誰かが黒なんだ。」


「高橋が黒なら、どうして鈴木を消した? もっと別のやつを狙うんじゃねえのか?」


「それこそ、疑われないためにだろ。」


俺は考え込む。


「でも、鈴木がいなくなったせいで高橋が一番疑われることになってる。これって、むしろ高橋をハメるための動きとも考えられねえか?」


「……確かに。」


「じゃあ、誰が動いたっていうんだ?」


沈黙が落ちる。


「考えられる可能性は二つある。」


「一つは、高橋が黒で鈴木を消した。」


「もう一つは、誰かが高橋を陥れるために鈴木を消した。」


「……じゃあ、山本か?」


山本の表情がピクリと動く。


「は? 俺は昨夜何もしてねえよ。」


「それを証明できるか?」


「……証明って、どうすりゃいいんだよ。」


「なら、お前も疑われる立場だろ。」


「ふざけんなよ!」


山本が声を荒げる。だが、この状況では誰もが疑われる。


「誰かが黒なのは間違いない。だから、ここで決めなきゃならねえ。」


「……でも、正直、情報が足りない。」


「今の段階で誰かを決めるのは危険だ。」


「だが、何もしなければまた誰かが消える。」


全員が緊張の中で息を呑む。


その時、山本が呟いた。


「……でもよ、もし高橋が白だったら、次に狙われるのは誰だ?」


「……中村か?」


「占いができる中村は邪魔だからな。」


「じゃあ……」


「ここで高橋を残すか、それとも処すか。」


高橋が怯えたように俺たちを見回す。


「俺は……白だ。」


「でも証明できねえんだろ?」


「お前ら、本当に俺を沈めるつもりかよ……?」


「……悪いな。」


沈黙の中、誰かが呟いた。


「処す。」


「お、おい! 待て!!」


「処す。」


「ふざけんな! 俺は……!」


ザッパーン!!


高橋は海へと沈められた。


俺たちは静かに浜辺に立ち尽くす。


「……次に消えるのは、誰だ?」

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