第2話 童貞仲間の裏切り

「ちょっと待てよ。」


山本がポケットからスマホを取り出し、何かを確認し始めた。


「加藤、お前さ、昨日の夜、一瞬だけど姿が見えなくなったよな?」


「は? 何の話だよ。」


「これ、見ろよ。」


山本がスマホの写真を俺たちに見せた。それは昨夜のバーでの写真だった。時間は25:00。そこには、俺たち五人が写っている。


そう、加藤だけがいない。


「お前、どこ行ってたんだよ?」


「いや、トイレだろ。そんなのいちいち覚えてねえよ。」


「いや、違うな。」山本がニヤリと笑った。「俺、加藤がトイレに行ったの見てねえぞ?」


「そ、そんなの知らねえよ!」


加藤の顔に汗が滲む。明らかに動揺している。俺たちはじっと彼を見つめた。


「つまり、加藤、お前が……昨夜、こっそり抜け出して“卒業”したってことか?」


「……っ!」


加藤は何かを言いかけたが、口を閉じた。


「確定だな。」


「村上さんも、きっとそれを知って、俺たちに試練を与えたんだ。」


「加藤、お前、裏切ったな……。」


童貞仲間としての誓い。俺たちは“誰かが先に卒業したら、その場で正直に告白する”という暗黙のルールを作っていた。それを破った。こっそり抜け出し、嘘をついた。仲間を欺いた。


これは、裏切りだ。

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