第一話 素人童貞人狼 初日 

「まず確認しよう。昨日の夜、何してた?」


リーダー不在のまま、俺たちは昨晩の行動を洗い出すことにした。だが、すぐに問題が発生する。


「いや、みんな結構酔ってたし、記憶が曖昧じゃね?」


「確かに……。でも、俺は行ってないぞ!」


「俺も行ってない!」


「じゃあ、誰が行ったんだよ!」


全員が否定し合う、カオスな状態。しかし、一つ確かなことがあった。


「この中の誰かは確実に嘘をついている。」


誰かが密かに童貞を卒業し、それを隠している。そして、それを面白がった村上さんが、ゲームのように仕立てたのだ。


「よし、じゃあ昨夜の行動を細かく振り返るぞ。」


俺たちは昨晩の流れをもう一度思い出してみた。


20:00:コテージでビールを飲みながら雑談

 22:00:みんなで夜の街を散策

 23:00:屋台で飯を食う

 24:00:バーで飲み直し

 25:30:コテージに戻る(全員いた?)

 26:00:就寝


「あれ? 25:30に戻ったって言うけど、本当に全員揃ってたか?」


俺たちは顔を見合わせる。記憶を辿るが、正直、誰がいつ寝たのか、はっきりとは覚えていない。


「……一人だけ、戻ってきたタイミングが曖昧なやつがいる。」


俺たちは、次第に疑念の目を向け始めた。


「おい、佐藤、お前怪しくね?」


議論が始まって30分。最初は「誰が卒業したのか?」という話だったはずなのに、いつの間にか「誰が一番怪しいか?」という尋問になっていた。そして、その矛先は俺――佐藤に向いていた。


「いや、俺はマジで行ってねえよ!」


「そう言うけどさ、お前昨日の夜、コテージに戻るのちょっと遅かったよな?」


「それは……単に道を間違えただけで!」


「道を間違えた? パタヤのメインストリートで?」


「そうだよ! 酔ってたし……!」


俺の言い訳は全く信用されなかった。確かに俺は一度、コテージを見失い、10分ほど遅れて戻った。でも、それは本当にただの迷子だったのだ。にもかかわらず、こいつらの視線はどんどん俺に突き刺さる。


「佐藤、正直に言えよ。」


「言ってねえって!」


「じゃあ、村上さんが言ってた“卒業者”って誰だと思う?」


「そんなの俺が知るわけないだろ!」


「……それが怪しいんだよ。」


誰かが呟いた。もう完全に疑われている。


「じゃあ逆に聞くけど、お前らは本当に行ってないのかよ!?」


俺も反撃を試みる。しかし、こいつらは口を揃えて「行ってない」と言い張る。誰かが嘘をついてるはずなのに、なぜか全員が自分の無実を主張する。ここにいるのは俺を含めて六人。昨夜の“卒業者”は一人だけ。つまり、残りの五人のうちの誰かが“嘘”をついていることになる。


「……こうなったら、証拠を探すしかないな。」


俺たちは再び昨夜の記憶を掘り起こし、慎重に検証し始めた。

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