素人童貞人狼

你是谁

プロローグ  

「おい、マジで行くのか?」


成田空港の待合室で、俺たちは顔を見合わせた。七人の男(俺佐藤、鈴木さん、山本さん、高橋さん、中村さん、村上さん、加藤さん)――全員、未だに童貞。大学のサークル仲間であり、つるんでばかりいる俺たちは、ある意味、仲間意識が強すぎたのかもしれない。彼女ができたやつは、自然とグループから遠ざかる。そんな俺たちの間で「卒業」するやつは出てこなかった。だが、今回のタイ旅行は違う。童貞のまま大学を卒業するのは避けたい、そんな共通の思いが、この旅を計画させたのだ。


行き先はパタヤ。安くて楽しくて、そして……そういうお店がたくさんある場所。俺たちは「卒業」することを暗黙の目標としながらも、誰もがどこかで踏ん切りがつかないまま、半ば冗談めかして旅の準備を進めていた。


飛行機は無事バンコクに到着し、そこからタクシーでパタヤのコテージへ向かう。宿泊先はビーチから少し離れた場所にある、こぢんまりとしたヴィラだった。目の前には、夜になると賑わう歓楽街が広がっている。


チェックインを済ませると、俺たちは荷物を置き、すぐにビーチへ繰り出した。夜の遊びに備えて、昼間はのんびりするのがベストだという意見で一致していた。タイの太陽は強烈で、ビールを飲みながら海を眺めるだけで、もうすでに最高の気分だった。


「さて、夜はどうするか?」


リーダー格の村上さんが、ビールを飲み干しながら言った。村上さんは、俺たちの中で最も積極的なタイプで、今回の旅の発案者でもある。


「せっかくだから行くしかないっしょ!」


山本さんが勢いよく賛同する。こいつは普段はおとなしいくせに、こういう場面ではやたらと声が大きくなる。


「いや、でもさ……本当に行くのか?」


俺たちは顔を見合わせる。みんな興味はある。でも、怖い。結局、この夜はビールを飲みながらダラダラ過ごし、「明日から本番だ!」と気勢を上げたものの、誰一人行動には移さなかった。


そして翌朝――。


俺、佐藤は朝日を浴びながら、ゆっくりと目を覚ました。コテージの中には、まだ寝息を立てている奴もいるが、一人だけ姿が見えない。


「村上さん……?」


ベッドはもぬけの殻だった。何か嫌な予感がした。枕元に置かれた紙を手に取ると、そこにはこう書かれていた。


「昨夜、ついに卒業したやつがいる。もう童貞ではない。by 村上」


俺たちは一気に目を覚ました。


「おい、マジかよ……」


「え、誰だよ?」


「村上さん、帰ってこないのか?」


「いや、それよりも……本当に誰か卒業したのか?」


混乱する俺たち。全員、昨夜は特に何もしていないように見えた。少なくとも俺は行っていないし、他の奴らも同じように酔っ払ってコテージに戻ってきたはずだ。


「……とりあえず、整理しようぜ。」


俺たちはリビングに集まり、議論を始めた。


「一体、誰が卒業したのか?」

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