第三章 はじめはなんとも情けない形だとしても④
その日は一日気が気ではなかった。一年生の復習ぐらいの簡単な問題を間違えるし、休み時間はずっと頭を抱えていた。そんな賢人の様子に、光輝が何度も「何かあった? 絶対何かあったでしょ?」と嬉しそうに訊いてきたけれど、賢人はただひたすらに首を横に振ることしかできなかった。
だって、なんと説明すればいい。落ちてた本を自分のだと思って拾ったらそれは自分のではなくて、興味本位で中を見たらそれは五十嵐さんがご友人から預かった物で、謝ったら何故か放課後呼び出されたとでも言えば良いのか。正直最後の部分がなければここまで悩むことはなかった。
本を受け取った時の五十嵐さんは明らかに動揺していたし、よっぽど見られたくないものだったのかもしれない。だとしたら悪いことをした。
「どうしたらいいんだよマジで……」
「何? けんけん悪の組織か何かと戦ってんの?」
「……そっちの方がまだマシ」
きょとんとした顔でこちらを見る光輝の呑気さに、賢人はまた大きくため息を吐き出した。
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