第2話 トースト






「それでも、朝は来る。」


寒い、夜だった。

布団にいるのに、毛布を被っているのに。

胸が空いていて、手が冷たくて。


眠れない、夜だった。

そんな夜には、いつもペンを取る。


線を書き殴って、色を混ぜ合わせて。

寂しさを、夢で上書きしていく。

震える指先を、技術で動かしていく。


やがて、日が昇る。

窓から陽光が差し込み、冷え切った部屋に温度が戻る。


重い腰を上げて、立ち上がって、パンを取り出す。

焼き上がったトーストに、ジャムを塗る。


「………美味い。」


どれだけ、夜が寒くても。

どれだけ、独りが寂しくても。


このトーストは、美味い。

陽光は、暖かい。


「…仕事、行こ。」


それでも、朝は来るのだ。


短編

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それでも、朝は来る 〜短編集&技術向上のための練習場〜 いふる〜と @atWABD

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