第44話 【公文書】ミレットの調査報告

これは、ギルド調査員のミレットがギルド長に調査報告した際の文書である。



【ミレットの調査報告】

日付:王暦125年10月24日

担当:速記官アイル



ギルド長:

「アイル、記録を頼む。ミレット、調査報告があると聞いている。何かあったか?」




ミレット:

「はい。長のご指示で古井戸に向かったところ、奇妙なものを発見しました。これです。ワットさんのペンです」



ギルド長:

「ワットのペン……? それは、おかしい。速記用のペンはギルド公認のもの。自宅に持ち帰ることは許されない。つまり、外部で見つかったということは、ワットは、ギルド規則12条を破っていたことになる。『ギルド所有物を自宅に持ち帰ること及び私物化することを禁ず』。お前も知っているだろう、ミレット?」



ミレット:

「確かに、そうですけど……。でも、ペンが外部――古井戸で見つかったということは、ワットさんを連れ去った人物の足跡を追うのに役立つのでは?」



ギルド長:

「ミレット、酷だろうが事実を受け入れろ。ワットは死んだ。それが、事実だ」



ミレット:

「そ、そうかもしれません……。ギルド長、お名前はギルベルトですよね?」



ギルド長:

「急にどうした。まあ、間違いはないが」



ミレット:

「この前、調べごとをしていて気づきました。48年前――王歴77年に『安らぎの洞窟』へ行かれましたね? 親友のロアーさんと一緒に」



ギルド長:

「48年前……? そんなことも、あったかもしれん。遠き日のことだ、あまり覚えがないな」



ミレット:

「そうですか。そうですよね、アルバムの写真と違いすぎましたから、私の勘違いでしょう」



ギルド長:

「……。もしかしたら、何かを思い出すかもしれない。後日、そのアルバムを持ってくるように」



ミレット:

「かしこまりました」



【速記官の私記】

ミレットが去ると、ギルド長は深くため息をつかれた。「どういうことだ。私は洞窟に行ったのか……?」と、記憶に自信がないようだ。無理もない。ここ最近は業務に追われて休みがない。そばで見ているから、よく分かる。ワットさんは、ギルド長との思い出のために、家に持って帰っていたのかも……。



【研究員のメモ】

プレハブの外では、学生が泥だらけの顔で窓を叩いている。彼の手には、ミレットがこれからギルドに持っていくはずの「48年前のアルバム」が握られていた。なぜ、過去の遺物が、これから起きる出来事の証拠として、現代に現れるのか。

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