第39話 【地誌】「拠点村」について
「拠点村」は、王都からみて南東にあり、非常に珍しい村なり。昔は「アラキの村」と呼ばれておった。すなわち、アラキという人物が村長であったが所以である。この地へ行くには、テラッソの丘を越え、オードルの川を渡る必要あり。いずれもモンスターの出現率は低く、体力作りに役立つものなり。
「拠点村」は、山に囲まれた平地に存在し、ナゴノ平地なる名称あり。「ナゴ」の語源である「安らかな」から取られたものなり。「ナゴ」は、昔から住民が安全に暮らせる土地であったことに由来す。いつからか、「拠点村」と呼ばれるようになった。この村にはギルドあり。近くに新米冒険者向けの「安らぎの洞窟」があるため、冒険者がいない日はなし。従って、村も経済的に潤い、豊かなり。
隣村は「安らぎの村」と呼ばれ、冒険者はここを通らずして洞窟に行けず。「安らぎの村」、昔からの伝統を守る村であり、「清めの儀式」なるものあり。この儀式、「清めの塩」を食べ、村人が躍るという賑やかなものなり。冒険者、ここで疲れを癒す。
この2つの村があることで、冒険者は安心して「安らぎの洞窟」へ行くことができ、スライム討伐により経験値を得られるという好循環発生す。そして、彼らは洞窟を去り、次なる冒険へと向かう。その姿は、村人たちに勇気を与えるものなり。こうして、ナゴノ平地の2つの村は栄えており、他の土地の者がうらやむ場所となる。
【研究員のメモ】
驚いた。この「ナゴノ平地」という名称、そして「ナゴ」が「安らかな」を意味するという記述。私が今いる長野県の「長野」の由来には諸説あるが、地元に残る古い伝承の一つに「亡骸の野」が転じて「ナガノ」になったという不吉な説がある。
記録の中の「安らかな」という言葉が、もし「死による永遠の安らぎ」を指しているのだとしたら……。
【研究員のメモ:追記】
頭痛が耐えがたい。だが、プレハブの窓の外、霧の向こうに、この記録にある「テラッソの丘」に似た不自然な盛り土が見える。長野の山中には存在しないはずの地形だ。
学生の一人が、さっきから「オードルの川の音が聞こえる」と言って、何もない床に耳を押し当てている。床からは、あの甘い花の香りが、まるで呼吸するように漏れ出してきている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます