第33話 【日誌】ルキアの記録

王歴125年10月22日



 王都から村にやってきて5日目。悪い意味で、この村は変わっていない。閉塞感と対照的に新米冒険者は明るい。童話『安らぎの王国』を書くために訪れた4年前よりも、このギャップは広がっている。



 気になったのは老婆ロゼーヌから語られた『安らぎの王国』の異伝。なぜ4年前には語らなかったのか。たまたま今回思い出したのか、それともあえて言わなかったのか。可能税性としては前者の方が高い。やはり、聞き込みは何度もすべきだ。これは、師匠から教わった。その師匠も今は亡き人。



 靴屋のヘイゴンにも2日かけて聞き取りを行ったが、成果なし。この2人なら、何かの情報を持っていると踏んでいたが……。この村で信用できるのは彼らくらいだ。さて、次にどういう手を打つか。



 気になるのは、若い女とは別に仮面をつけた人物も動いているらしいこと。噂によれば。この人物の身元は不明。よって、先に接触すべきは若い女だろう。ギルドの調査員と聞いている。ギルドは信用ならないが、個人の判断で調査しているようだ。現状を打破する可能性を秘めている。明日に備えて、就寝する。



文責:王都 歴史編纂部 ルキア



【研究員のメモ】

この人物は村の歴史に詳しいらしい。それだけでなく、「文責」という文字を使うのには、好感が持てる。やはり、研究者はこうでなくてはならない。学生で使う者は1人もいない。責任から逃れるようになったのは、いつからだろうか。



【研究員のメモ:追記】

なんだか、腹痛がひどい。変なものは食べていないはずだが……。明日には治っているだろう。フィールドワーク中に病院に行くような事態があってはならない。これは、研究者としての意地だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る