第34話 【個人手記】調査員ミレットの記録11

 何かがおかしい。最近、誰かからの視線を感じる。決して悪意のものではないけれども、気味が悪い。気のせいじゃなければ、きれいなお姉さんからの気がする。もし、私に用があるならば、近いうちに接触してくるだろう。もし、私の勘違いなら――スライムではなく、彼女によって消されるかもしれない。問題は、こちらから接触を試みるべきかということ。ワットさんがいれば、名案をくれたに違いないけれど……。そういえば、こう言ってたっけ。「僕は、君の活躍をそばで筆記し続ける」と。残念だけど、それは叶わなくなった。でも、天国から見ているはず。こんなところで躓いてはダメ! 明日こそ、こっちから謎のお姉さんに声をかけよう。



※追記:頭が痛いし、腹痛もひどい。「安らぎの村」でスープを飲んで以降、不調が続く。もしかして、アレ、腐ってたりしたのかな……?



【研究員のメモ】

この手記を書いているミレットなる少女は、ワットなる青年に頼ってばかりである。それも、死んだ人間だ。これでは、成長は見込めない。死者の亡霊を振り切ってこそ、真の独立なのだから。



【研究員のメモ:追記】

さっきから学生が「先生、ここが分からないです」と、うっとおしい。今はフィールドワーク中だ。勉強を教えるのではなく、肌身で体感するのが醍醐味だ。最近の若い者は、そこが理解できていない。やはり、映像の中の「安らぎの村」にあったものと同じ、巨大な青い花を分析すべきだろうか。だが、直感が「アレには触れるな」

と告げている。直感と学術への興味。どちらを取るか考えるまでもない。決めた。明日はあの花を徹底的に分析しよう。近づいた時の、何とも言えない甘い香りが気になるが……。

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