第7話 窓辺の日和

 日和は、外に出なかった。

 正確には、出られなかった。

 昼間は必ずカーテンを閉め、

 夜になってから、窓辺に座る。

「外、好きなんですか」

 ある夜、オサムがそう聞くと、

 日和は少しだけ笑った。

「見るのは、好きです」

 それだけだった。

 オサムは、昼間に街を歩いた。

 仕事を辞めてから、久しぶりの平日。

 人の流れ、車の音、太陽の眩しさ。

 それを、夜に帰って日和に話す。

「今日は、営業の人が雨に濡れて走ってて」

 日和は、黙って聞いている。

 時々、ほんの小さく頷くだけ。

 その視線は、まるで外の世界を借りるようだった。

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