殺人ステップ その二 機動隊虐殺録(少女視点)


…いつからだろうか。

人殺しに快感を覚える様になったのは。

最初に殺したのは、両親と弟、姉だった気がする。

そのころの記憶は、かなり曖昧で覚えていない。

でも、あの時の快感だけは未だに頭に強く鮮明に、克明に残っている。

例えば。

何かがピッタリハマりそうな穴に、ピンポン玉か何かがピッタリと入った時の様な。

自分の考えていたことが有無を言わさないくらい当たった時の様な。

精通した後に初めて射精した様な。

そんな快感だった。

その殺しで、僕は人を殺すことが気持ちいいことに気づいた。

それからは、もう坂を転げ落ちるボールの如しで、次から次へと人を死へと誘った。

じいちゃんばあちゃん、いとこ。親戚。血縁関係者は恐らく全員殺したと思う。

あいつらの顔と叫び声はこの世のどんな果実よりも、甘美だった。

僕のことを恐ろしいと思うなかれ。

僕からしたら、殺しは性行為と同義であり、断末魔とは喘ぎ声なのだ。ナイフとは陰茎であり、ナイフを突き立てた穴は膣口に等しい。

僕にとって殺しとは生に必要不可欠な、いわば三代欲求の一つであり、既になくてはならない存在なのだ。


さて。どうして今こんな話をしているかと言えば…と言う程でもないのだが、僕は今、絶体絶命の身にある。だから、こんな話をしてみた。


「はっは、許してくれませんかね。機動隊の皆々様方?」

「許すわけないだろう! この殺人鬼風情が!」


今現在、僕は機動隊に囲まれている。

どうやら、人を殺しすぎたらしい。まあ、一人でも殺したらもう殺人犯扱いなんだけど。

今となっては、僕は指名手配されていて、ただの快楽殺人鬼だと思われているらしい。

別に何も間違ってはいないが。

何人だったかな…覚えてないな。興味もないけど。


「ねえってば。機動隊さあん。僕なんかに構ってる暇があったらさ、新しい地形とかの探索に行けよ。そっちの方が大事なんじゃないの?」

「喋るな!」

「ええ…話通じないじゃん…」


思うんだけどさ。僕相手にこんな大人数使う必要ないと思うんだよね。

だって僕、ナイフとか包丁数本持ってるだけだもん。銃持った大人に抵抗できるわけないよ。


「最後に聞くぞ。殺人鬼。今すぐ投降しろ。そうすれば、楽に殺してやる」

「何だよそれ。異世界の魔王気取りかよ」


僕は鼻で、はっは、と笑いながら言った。

うわ、隊長っぽい人? すっごい顔してるね。真っ赤だよ。真っ赤っか。

今あの人刺したら血が一人でに溢れてきそうだなあ。噴水みたいに。

そう思うと堪んないなあ。涎が止まらない。

僕がそんなことを思いながら涎を啜ると、機動隊の人たちが僕から一歩距離を取った。


「な、なんだあの顔は…ば、バケモノだ…!」

「あいつは…あ、アレは…人間じゃないのか…?!」


耳をすませばそんな声が聞こえてきた。

おうおう、言ってくれるなあ。まだまだ十代の女の子に。けしからんね。

少しイラッときた僕は、腰のホルスターに刺さっていたナイフを抜いて、ごく僅かな手首のスナップだけでナイフを一直線に射出した。

そのナイフは、先程僕の悪口を言った男の眉間に深々と突き刺さる。男の目が一瞬で色を失い、そのまま膝をついて崩れ落ち、地面にうつ伏せにひれ伏した。


「あーあ。油断してるから。バカだなあ」


僕が笑いながら言うと、機動隊の人たちはすぐさま盾を構えて、僕に銃を向けながら言った。


「貴様…! よくも!」


…え、いやいや、殺人鬼相手に君らが盾も銃も下ろして油断してる君たちが悪いんでしょ。

せめて盾くらいは構えといた方がよかったんじゃないの?

それに、僕のことバカにしたそいつの自業自得だよ。


「いやだなあ。油断してるところを突くのは当然じゃないですかあ。殺人鬼相手に人道を語らないでくださいよ」


ケラケラと笑いながら言うと、隊長らしい人が真っ赤だった顔をさらに赤くさせた。血管切れてそう。

隊長は、体をプルプルと振るわせてから、言った。


「総員! 撃て撃て撃てええええ!」


さっきまで楽に殺してやるとか言ってたくせにいきなし放棄してくんなよな。魔王気取りかよとは言ったけど、はい、か、いいえ、かなんてまだ言ってなかっただろ。

そんな悠長なことを考えている間に身、銃弾は僕の眼前にまで迫っていた。


「面倒だなあ…僕はラブアンドピースで生きたいんだよ…壊す側だけどね」


言いながら、すっとナイフを抜く。

そして、迫っていた弾丸をナイフで横一文字に切り裂いた。

一個。二個。三個。

流れる様に空中にナイフを滑らせ、僕の体に迫っている弾丸を切り捨てる。


「なっ…?!」


お、驚いてる驚ろいてる。

初対面の人は反応が新鮮でいいね。本当に。

なぜ、僕が今弾丸を目で追って、その癖真っ二つにする。なんてことができたのかは、また今度話すとして、今はこいつらの掃討でもしようか。


僕は予備動作なしで一瞬にして駆け出すと、正面から遅いくる弾丸をナイフで弾きながら機動隊の群れの中に突撃した。

一人、首を刈る。

一人、腹を貫通させる。

一人、眉間にナイフを撃ち込む。

一挙に三人の命を狩り取ってから、僕は言う。


「っは、真正面から殺るのは向いてないんだよなあ。ホンット。せめて夜だったらよかったのに」


僕はぼやきつつ、横にいた機動隊員の弾丸を弾き、近づいてナイフで首を薙ぐ。

よく見れば、機動隊の人間達が僕に銃を向けながらジリジリと後退していた。


「ちょうどさっき、今度話そうとか言ってたけど丁度いいや」


僕は血に濡れたナイフを下げながら機動隊に声をかけた。


「ねえ。機動隊さん達。なんで僕がここまで桁外れのバケモノなのか、分かったりする?」


ちょうど、画面の前の皆様方も疑問に思っているだろうからね。ここらで自己紹介とでも行こうか。


「返答なし…分からないってことでいいね」


さあて。能力の開示でもしとこうかな。


「僕は、この世界と異世界との融合の瞬間ピッタリに生まれた特別変異の人間らしくてね。向こうの世界の人間の能力が8割くらい混ざってるらしいんだ。本当なら差別とかされるんだろうけど、人殺しに使えるんだから本当にいい能力だよ」


言い終えてから機動隊達を見ると、どうやら戦意喪失したらしく、絶望した様な目で僕を見ていた。

そりゃあそうだ。僕以外にも魔法だったり能力を扱える人は少なくともいるけど、僕の様な動きをできる奴はいないだろからね。

そもそも、能力持ちで政府側に付いてる人間だなんて片手で数えられるくらいなんじゃないかな。大体能力持ちの人間って、殺人犯とかだからね。


僕は言っている間にも、猟奇的な目で機動隊を見ていた。






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次回はこの回の三人称視点です。分かりづらかったと思うので。

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